沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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77)司法試験の成績

 9月8日付けの法務省発表によると、今年の新司法試験の合格者は、目標としていた3000人には遠く及ばず、2063人にとどまった。
 6回目の新司法試験となる今年は過去最多の8765人が受験し、合格率は、前年の25.4%を下回る23.5%で、過去最低を更新したそうだ。

 新司法試験は「5年以内に3回まで」しか受験できないという「実に恐ろしい試験」なのだが、1回目で合格した人は1140人、2回目が591人、3回目が332人だったらしい。

 この「滑り込みセーフ」を果たした332人には、「本当によく頑張った!」と声をかけてあげたいところだ。
 もちろん、3回目もダメで受験資格を失った方々に対しては、かけてあげられる言葉も見つからないが……。

 さて、この新司法試験の「低迷」する合格率と「少数」にとどまる合格者数を受けて、各マスコミの対応は、「目標とする毎年3000人の合格者輩出に向けた改革が急務だ。」という趣旨の論調で一致しているようだ。

 だが、内実はよく分からないが、本当に、法曹としての最低レベルに届いていないのであれば、「多少出来が悪くても、ムリヤリ3000人を合格させる!」という対応だけは絶対にしてはならない。それは、国民の利益にも大いに反するからだ。

 専門家の能力というのは、国民から見れば、完全に「ブラックボックス」である。人生のうちで1度や2度しか会うことがない専門家の能力を国民が自己判断し、万が一「はずれくじ」を引いたとしても、すべて「自己責任だ」の一言で片付けられたのでは、人生を左右する大問題に直面している当事者としては、たまったものではない。

 その意味で、国家資格というのは、国家による「品質保証」なのであって、やはり、本当に「最低レベル」の専門能力だけはキチンと測定して頂きたいものだ、と切に願う。

 そもそも、司法制度改革というのは、公務員を減らした上で、「行政による事前規制型社会」から「司法による事後救済型社会」に変えていくという狙いのもと、行政改革と並行して進められてきたはずである。

 どうも、マスコミというのは、「とにかく弁護士の数を増やせ!」という論調ばかりだが、司法制度改革は行政改革とセットでなければ意味がないということを改めて強調したい。

 日本という国は、世界に類を見ないほど完成された「官僚国家」であり、肥大しきった「行政国家」である。この国家システムをアメリカ型の「司法国家」へと転換しようという挑戦は、想像を絶するほどの革命的大作業である。

 事前規制型社会を脱するためには、まずは、公務員の数を減らさねばならないのだが、多くの政治家が行政改革に失敗してきた歴史を見ても、この出発点さえクリアーできない可能性が極めて高い。

 公務員の数を減らしてから弁護士の数を増やす、という順番をキッチリ守らないから、司法制度改革の本質が見失われてしまうのである。

 日本が、本当にアメリカ型の「司法国家」に転換するのであれば、今の弁護士の数では足りないに決まっている。
 だが、官僚の掌の上で踊らされている政治家の姿を見るにつけ、私が現役で弁護士をやっている間に日本が革命的転換を実現する可能性は乏しいと思えてならない。

 と、段々と愚痴っぽくなってきたので、どうでもいい話題を一つ。

 先日、私自身が受験した司法試験の「成績」とやらを法務省に開示請求してみた。
 新司法試験の受験生は、全員に対して成績が通知され、法律事務所への就職の際にも成績通知書を提示する慣例のようだが、我々世代にとっては、自分の成績は完全に「闇の中」で、これを知る術すらなかった。

 だが、最近になって、国が方針を転換し、法務省に対して開示請求ができるようになったという次第。

 もちろん、今さら、成績を知ったところで何も変わらないのだが、自分の人生を賭けてやってきた「歴史」を知っておきたいという軽い気持ちで請求してみた。

 そして、今日、その回答が自宅に届いたので、ザッと記すと下記のとおり。ちなみに、短答式というのはマークシート方式で、論文式試験を受けるための「足切り」試験である。

【平成3年】

 短答式:2万0609人中、6122位(合格者数4576人)で、不合格

【平成4年】

 短答式:2万1431人中、459位で、合格
 論文式:4603人中、942位(合格者数634人)で、不合格

【平成5年】

 短答式:1万7714人中、191位で、合格
 論文式:4557人中、787位(合格者数759人)で、不合格

【平成6年】

 短答式:1万9408人中、23位で、合格
 論文式:4941人中、273位で、合格
 口述式:229位(最終合格者数740人)で、合格

 まあ、年々、着実に成績は上昇していたようなので、努力の成果はあったようだ。

 ただ、ビックリしたのは、平成5年の成績だ。759人が合格している論文式試験で、なんと、私の成績は787位ではないか!!

 そうかあ、そうだったのかあ……。あと28人かあ………。

 そうすると、ちょっと一言でも「気の利いたこと」を論文で書き足していれば、あるいは、余計な一言を書きさえしなければ、平成5年に合格していたのかも知れないが、キッチリと1年勉強し直したお蔭で、多少なりとも自信がついたような気もするので、結果的には良かったのであろう。

 そして、何よりも、平成5年に合格してしまっていたら、妻と出会うこともなかったろうしね。つくづく、人生というのは、うまい「巡り合わせ」になっているものだ。