130)半沢直樹…やるねえ!
- 2013年7月21日
- 社会・雑学
TBS系列の「日曜劇場」(日曜夜9時)で放映中の「半沢直樹」というドラマ。
久々に、メチャメチャ面白いっす!!
既に第2話まで終了しているが、何だか、日曜夜の「お楽しみ」になってきた感じ。
もちろん、今夜もメチャ楽しみにしていたのだが、選挙関連の特番で、今夜はお休みとのこと。残念…。
さて、ドラマの内容は?と言えば、ざっとこんな感じ。
堺雅人が演じる「半沢直樹」は、バブル期に大手銀行に入行した型破りのバンカー(融資課長)。
ある日、出世のために融資目標額達成を最優先する支店長の強引な指示で、5億円もの無担保融資を実行するも、融資からわずか3ヶ月後に融資先が倒産してしまう。
それは、粉飾決算を利用した「計画倒産」だったのだが、支店長は、全ての責任を半沢に押しつけようと裏工作をする。
半沢は、支店長や銀行を見返すため、倒産会社の元社長から、何としてでも金を取り返そう!!と奔走するという話。
先週放送された第2話では、元社長が、隠し財産としてハワイに別荘を所有している事実が発覚。
そこで、半沢は、この別荘を差し押さえようとするが、元社長を脱税で追っていた国税庁もその別荘に狙いをつけ、結局、裏の力が働いて、国税庁に負けてしまうという展開。
まあ、ドラマの展開としては、とっても面白いのだが、この話、ちょっと「???」と思ってしまった。
要するに、「えっ、そんなこと出来んの?」ということだ。
国際法務なんていうのは私の専門外だが、私の知る限りの狭い知識では、そんなの「ムリだろう!?」というのが率直な感想だったのだ。
ということで、ちょいと調べてみたら、あらあら?という感じに……。
一般論として、国外財産を差し押さえるなんて、そうそう簡単なことじゃない。
まず、私人(民間)が国外財産を差し押さえようと思えば、まずは、日本の裁判所からキチンと勝訴判決を貰って、その判決を外国裁判所に「承認」してもらう必要がある。
難しい話は置いといて、アメリカの場合、カリフォルニア・ニューヨーク・ネバダ・ハワイの各州では承認されることになっているので、この点は問題ない。
だが、日本で判決を貰う必要がある以上、そこに辿り着くまでには数カ月を要するはず。
ここまでは、私の古い頭にあった知識。
ところが、今回の話では、一刻を争う攻防なので、そんな悠長な手法ではなく、まずは、ハワイの別荘を「仮差押え」する必要がある。
仮差押えというのは、将来の強制執行を保全するために、債務者の財産の処分に一定の制約を加える裁判所の決定のことで、これを得ておくと、後から勝訴判決さえ貰えば、仮差押えをした後に財産を取得した第三者に対しても勝てるという仕組みだ。
これなら、早ければ数日で、文字通りの「保全」が実現できる。
これまで、国際裁判管轄については、日本には明文規定が存在しなかったので、そもそも、日本の裁判所が国外財産の仮差押え命令を出せるのか?という点では大いに議論があり、消極的な見解も多かった。
……のだが、平成24年の民事保全法改正により、次のような規定が新設され、この点は、立法的に解決されたのだ。
(保全命令事件の管轄)
第11条 保全命令の申立ては、日本の裁判所に本案の訴えを提起することができるとき、又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物が日本国内にあるときに限り、することができる。
簡単に言えば、日本の裁判所で民事訴訟(本案=被告に対する金銭請求)が提起できるならば、国外財産の仮差押えもOK!ということが明文で規定されたというワケ。
なるほど!
この規定を使って、日本の裁判所に、ハワイの別荘の仮差押え命令を申し立てて、それをハワイ州に承認してもらうっていう手順か。
まあ、ドラマでは、別荘の所在地が分かった途端に、半沢の同僚から「ハワイの別荘、押さえたぞ!」なんて連絡が入るが、このスピード感は、さすがにドラマならではのフィクションということだけどね。
でも、そんなこと出来たら、さぞかし痛快だよなあ。ホントに。
で、次の問題として、国税庁(政府)が国外財産を差し押さえることなんて、ホントにできるんだろうか?
国税徴収法には施行地に関する規定はないが、同法は、日本国の行政権の及ぶ地域にのみ効力が及ぶのが当然だから、国外財産は差押えの対象にならないはずだ。
こっちは、さすがに「ムリだろう!?やっぱり、ドラマだねえ~(笑)」なんて思っていたら、これまた、おやおや??なのだ……。
調べてみると、平成23年11月に、日本は「税務行政執行共助条約」という条約を批准したらしい。
この条約の主な内容は、次の3点。
(1)情報交換 : 締約国間において、租税に関する情報を相互に交換することができる。
(2)徴収共助 : 租税の滞納者の資産が他の締約国にある場合、他の締約国にその租税の徴収を依頼することができる。
(3)送達共助 : 租税に関する文書の名宛人が他の締約国にいる場合、他の締約国にその文書の送達を依頼することができる。
なるほど!
この「徴収共助」という規定を使えば、国税庁が国外財産を差し押さえることも可能というワケか。
う~む!
半沢直樹…やるねえ!
でも、この条約、今年(平成25年)の10月1日に発効するらしいので、ちょいと先走っちゃった感じだけどね(笑)。
さて、このドラマ、池井戸潤氏の「オレたちバブル入行組」と「オレたち花のバブル組」という小説が原作らしい。
バブル入社組といえば、私らの世代がドンピシャだ。
そう言えば、私の大学の同期たちは、7つも8つも超有名企業の「内定」をもらって、ホントにウハウハだったねえ。
いやはや、実に「浮かれた時代」だったなあ。
でも、その後すぐに訪れてしまった「バブル崩壊」で、私ら世代は、特異な「人余り世代」と化してしまい、今では、なかなか「ポスト」の空きすらなくて、出世がつかえてしまっているという話も伝え聞く……。
私は、結局、就職活動を一度もすることなく、そのまま司法試験浪人へと突入していったワケだけど、まあ、今思えば、受験という挑戦的選択をして良かったということなんだろうね。結果論だけど。
とは言え、わが弁護士業界も、ドンドン競争激化していく厳しい時代。
この半沢直樹の、どこまでも諦めずに、巨悪に立ち向かっていく「執念」!
我々弁護士にも、参考になる点が多々あるに違いない。
今夜は残念だけど、また来週から、日曜9時がホントに楽しみだねえ。