沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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133)2つの「川越」

 顧問先7社で構成する同業者グループに「K会」というものがある。
 K会では、毎月1回、勉強会を開催しており、メンバーが持ち回りで講師役となって、毎回、バリエーション豊かなネタで楽しく活発に勉強している。
 もちろん、私も、毎回欠かさず出席させて頂いている。

 さて、そんなK会で、続けざまに、2つの「川越」がネタとして登場し、ちょいと感銘を受けたので、このブログのネタとしても御紹介したい。

 ちなみに、その2つの「川越」ネタを御提供頂いたのは、T社のO社長である。
 O社長は、毎回、熱く感動的なネタを御提供頂く方なのである。
 この場を借りて、厚く御礼を申し上げたい。

 で、まずは、三重県の「川越町」に纏わるネタ。
 先月24日(土)、K会のレクリエーションとして、川越火力発電所見学と四日市コンビナートの夜景クルーズに参加させて頂く機会を得た。
 毎年8月だけはスケジュール調整が厳しいので、K会の勉強会は無しなのだが、その代わり、何某かの家族同伴レクリエーションを例年企画して頂いているのだ。
 本当に、幹事役の方々(今回はT社のO社長)には、毎回、頭が下がる思いだ。

 我が家も、家族4人で参加させて頂いた。
 上の子(中3)は、なかば強引に連れ出し、下の子(小5)は、夏休みの「自由研究」のネタとして使えるよ!という甘言で誘い出したのであった(笑)。

 私も四日市に住んでいながら、火力発電所やコンビナートなんて、国道を車で走っている際に「横目で見ながら素通り」するだけだから、今回の企画は、とっても新鮮で、大いに勉強にもなった。

 川越火力発電所は、480万kwもの発電量を誇る世界最大級の火力発電所である。
 2007年までは、長い間、火力発電所としては世界一の発電量を誇っていたそうだが、現在では世界第4位とのこと。

 今回は、発電所の敷地内にも入ることができたのだが、間近で見る施設の迫力は大したものであった。
 何よりも、わが町の近くに、世界に誇れる施設があったという事実自体に驚かされた。

 そして、四日市コンビナートは、日本で最初の石油化学コンビナートであり、その規模もさることながら、いわゆる「工場萌えの聖地」としても全国的に有名なんだそうだ。

 夜景クルーズでは、この「工場萌え」を存分に堪能させてもらったが、やはり、昼間に見るコンビナートとはガラリと表情を一変させ、この「工場萌え」とやらに「はまる」人達の心境がチョット分かった気がした。

 今回のレクリエーションは、ホントに楽しいものだったが、我が家には一つ「おまけ」が付いた。
 
 なんと、今回の見学をネタとした下の子の「自由研究」が学校代表として展示されることになったのだ。
 展示されたのは、地区の「三泗小中学校・第33回社会科作品展」というもの。

 早速、今日の午前中、パパ・ママと本人で展示を見て来たという次第。

 それにしても、例年のごとく、夏休みの終わりが迫って、2日くらいで慌ててダーッと仕上げた感じだったので、まさか、こんなことになるとは…という感じで、本人は、ずっと「キョトン」としていた(笑)。

 まあ、でも、今回は、パパもママも全くアドバイスすらしていないので、ちょいと自信になったかもね。

 で、次の「川越」は、埼玉県の川越市にある「川越胃腸病院」の話。
 これは、昨日の勉強会にて、T社のO社長が披露して下さったネタ。

 この病院、受診する人の93%超が満足感を得ており、「ここの病院しか行かない」「どうしてもここで診てもらいたい」「ここに入院したい」という患者が、口コミで年々増加しているのだそうだ。

 院長の望月智行医師は、「医療は究極のサービス業でなければならない」という理念を掲げ、「関わる全ての人の満足、人間の幸福を追求する経営」を目指してきたという。

 そして、その最優先課題としたのが「職員の満足」だ。

 病院から大切にされていると感じる職員が、患者に心からのサービスを提供し、それが患者の満足・感動を生み、患者の増加、ひいては、病院の繁栄につながり、結果的に、地域をも幸福にする。
 
 これが、川越胃腸病院の目指す「ひと満足の好循環スパイラル」なんだそうだ。

 だが、院長の掲げた理念が末端の職員にまで十分に浸透していくには20年もの歳月を要したのだという。

 この話を聞くにおよび、経営コンサルティングの教科書に載せるべき、実にセオリーどおりの素晴らしい経営だなあと感心した。

 企業経営の根幹は、何と言っても「人」である。
 最近、巷で「人材」を「人財」と表現することが多くなったのも、人の大切さを強調したいが為であろう。

 望月院長は、日本医療バランスト・スコアカード研究学会理事・評議員という肩書を持つ。

 バランスト・スコアカードというのは、4つの視点から企業の経営戦略・ビジョンを分類・評価する戦略的経営システムであるが、4つの視点というのは、次の4つ。

1)財務の視点
2)顧客の視点
3)業務プロセスの視点
4)学習と成長の視点

 あらゆる経営コンサルティングの全ての要素が、この4つの視点に集約されると言っても過言ではない。

1)財務の視点というのは、利益であり、企業活動の結果である。

 財務分析をした結果、何らかの「異常値」が検出されれば、2)以下に何らかの異常があるであろうことが推定される。

2)顧客の視点というのは、マーケティングであり、利益を生み出す直接的原因となる。

 利益が出ていないということは、自社の商品が顧客に届いていないか、自社の商品が顧客ニーズと合致していないことを意味する。

3)業務プロセスの視点というのは、商品を生み出す方法論である。

 顧客ニーズに合致した商品を生み出すにしても、コストを度外視したのでは、企業経営が破綻する。如何に効率よく業務遂行するかという科学的アプローチが必要不可欠である。

4)学習と成長の視点というのは、人財の能力開発とモチベーション向上である。

 企業は人なり。顧客ニーズに合致した商品を生み出し続けるには、能力とやる気に満ちた人財の働きが必要不可欠である。

 結局、4)の「人財」こそが企業経営の根幹であり、その上に、3)の「方法論」と2)の「顧客満足」が加わることで、ようやく1)の「利益」が生まれるという構造だ。

 つまり、業績の
    因果の流れとしては、4)→3)→2)→1)ということであり、
 経営コンサルの
    分析の流れとしては、1)→2)→3)→4)ということだ。

 中小企業の場合、小手先のマーケティングや方法論ではなく、根本的な「人財教育」が必要だというケースが多い。
 逆に言えば、人財教育にさえ力点を入れていけば、中小企業経営の未来は明るいはず。

 我々のような超零細企業だってそうだ。

 最後の最後に効いてくるのは、やはり「人間力」ということ。

 川越胃腸病院は、「ここで診てもらいたい」という患者が殺到する。

 私の持論に「3C」というものがある。
 世の中の「顧客」というのは、3つのタイプに分類できるというものだ。

 1つ目は、コンシューマー(消費者)。
 飲食店であれば、とにかく「何でもいいから食べたい」という顧客。
 質よりも「安さ」が最大の関心事だ。

 2つ目は、カスタマー(得意先)。
 飲食店であれば、とにかく「美味いものを食べたい」という顧客。
 価格よりも「質」が最大の関心事だ。

 3つ目は、クライアント(依頼人)。
 飲食店であれば、とにかく「あなたの店で食べたい」という顧客だ。
 価格や質よりも「信頼感」が最大の関心事だ。

 川越胃腸病院は、患者すべてを「クライアント」にすることに成功した典型例である。

 当事務所も、常日頃、できる限り「クライアント」を増やし続けたいと切望しているところだ。
 今回の勉強会は、そういう点で、大いに刺激を受けることができた。
 ホントにありがたい機会だった。

 アッ、そう言えば、患者のことをドイツ語で「クランケ」って言うよなあ。
 ひょっとすると、ドイツ語のクランケと英語のクライアント、発音も似てるし、同じ語源かもね?