沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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152)言葉の重み

新年度がスタートして約2週間。
いやはや、想像以上に、公務に忙殺される日々だ。

今日は日曜日なので、やることはいくらでもあるんだけど、ムリヤリ休んでいる状態。
週一回、心身ともに休養を取らないと、本当に壊れてしまうんで。

実は、昨日も、土曜日だというのに「中部弁護士会連合会」という組織の本年度第1回理事会が名古屋で開催され、完全に1日つぶれた。

この組織は、「名古屋高裁」管内である東海3県(愛知・岐阜・三重)と北陸3県(石川・富山・福井)の6つの弁護士会によって構成されるもの。

弁護士会の会長は、「日本弁護士連合会」(日弁連)という全国組織の理事と全国8つの高裁管轄ごとで組織される「○○弁護士会連合会」という組織の常務理事を兼ねているのだが、この理事会が毎月開催されるので、否応なく、相応の時間が割かれてしまうんだよねえ。

特に、日弁連の理事会は、平日の2~3日をつぶして東京で開催されるので、当然ながら、仕事がドンドンたまってしまうというワケ。

平日の昼間は公務にトコトン追われ、夜間と土曜日を利用して、たまった弁護士業務を何とか片付け、日曜日だけはシッカリ休む。

どうも、この1年間、こんな生活になりそうだなあ。

で、このブログも、家族イベントがなくて、疲れがたまっていない日曜日にのみ更新する、ということになりそうだね、どうも。

さて、先ほど、三重弁護士会は、「中部弁護士会連合会」の一員であるという話をしたが、「三重県」は、ホントに「中部地方」なんだろうか?

結構、三重県というのは、ビミョーな県なのだ。

三重県に住んでいると、完全に「中部地方」という意識が強いんだけど、一般的な行政区画としては、どうも「近畿地方」らしいんだよねえ。

関西地方というのは、大阪・京都・兵庫・滋賀・奈良・和歌山の2府4県を指すらしいんだけど、近畿地方となると、これに三重県を加えた2府5県を指すんだそうな。

う~ん、それでも、やっぱり、我々三重県民は、「中部」の一員っていう意識なんだけどねえ。

で、本来、中部地方に属する山梨・長野・新潟・静岡の4県は、裁判所の管轄では「東京高裁」管内とされており、関東地方(東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬の1都6県)に上記4県を加えたものを「広域関東圏」と呼ぶんだそうだ。
ちなみに、関東地方に山梨県を加えたものを「首都圏」と表現するらしい。

と、前置きが長くなってしまったが、そろそろ本題に。

最近マスコミを賑わしているSTAP細胞騒動の件。

まずは、何よりも、STAP細胞が「実在」することだけは切に願うばかりだよね。

それにしても、小保方氏、科学的視点からの批判は多かったけど、とっても立派な会見だった。
おそらく、心臓が口から飛び出んばかりの心境だったろうに、ホントに大したものだ。

小保方氏のキャラクターも手伝って、小保方氏を応援する国民も多いことと思うが、その内容の真偽はともかく、理研の「言葉の使い方」は乱暴の一言に尽きる。

理研は、小保方氏が別の実験画像を論文に使用したことを「捏造(ねつぞう)」だと表現し、画像を切り貼りしたことを「改竄(かいざん)」だと表現した。

でも、辞書によれば、「捏造」っていうのは、「事実でないことを事実のようにこしらえること。でっちあげること。」だし、「改竄」っていうのは、「文書の字句などを書き直してしまうこと(内容の改変)。普通、悪用する場合にいう。」とのこと。

すごく大雑把に言えば、どちらも相手を「不正に騙す」行為だよね。
ごく一般的な日本人が受ける「語感」でも、そのとおりだろう。

要するに、理研が「捏造」だと決めつけるからには、

(1)真正な画像が存在しないのに、
(2)真正でない画像を真正な画像として論文に使用したこと

に加えて、

(3)(1)と(2)の各事実を小保方氏が知っていたこと

を理研が「証明」しなければならない。

また、理研が「改竄」だと決めつけるからには、

(1)切り貼り前と後とで「内容」が変わるのに、
(2)画像を切り貼りしたこと

に加えて、

(3)(1)と(2)の各事実を小保方氏が知っていたこと

を理研が「証明」しなければならない。

ところが、小保方氏は、別の実験画像を使用した点は「悪意のない取り違え」だと反論し、真正な画像が存在するとまで主張している。
また、画像の切り貼りは「見やすくするためのもので、結論に差異はない」と反論している。

小保方氏の言うように、真正な画像が存在するならば、「捏造」との表現は誤りだし、切り貼りしても結論に差異がないならば、「改竄」との表現も誤りということになる。

もちろん、画像を「取り違え」たり、画像を「切り貼り」したというだけで、論文の科学的価値がゼロに近づくのは当然だし、研究者としての資質に疑問符が付くこと自体もやむを得まい。

だが、理研の調査委員会は、論文の科学的価値を検証しているワケではなく、研究に「不正」があったか否かを調査していたはずだ。

それなのに、真正な画像が存在したか否かについては何ら調査していないし、切り貼りが及ぼした影響についても何ら調査していない。

つまり、理研が、「捏造」とか「改竄」などという断定的表現を使用すること自体、何ら合理的根拠のないものであり、緻密な証明が要求される科学者集団にしては、いかにも杜撰な調査だったと言わざるを得ない。

研究が「不正」だと断罪されれば、小保方氏に「懲戒処分」が下される可能性が生じる。
その意味で、理研の調査はまさに「法的判断」であるはずなのに、理研は「グレーなんだから黒に違いないでしょ」と言っているだけで、これでは「疑わしきは罰せよ」というトンデモナイ話になってしまう。

テレビでどこかの学者が、「科学の世界では正しくないものは全て不正。故意や悪意なんて関係ない。科学の世界に法律用語を持ち込むのは間違い。」なんていう発言をしていたが、これこそが「大きなカン違い」だ。

むしろ話は真逆で、懲戒するかしないかという「法的判断」に直結する「法律問題」を論じる中で、科学界の尺度だけで判断すること自体が大間違いなのだ。

理研は、国から「特定国立研究開発法人」に指定されたいがために、今回の華々しいSTAP細胞の研究発表を演出し、そこに問題点が指摘されるや、小保方氏一人だけに全責任を押しつけて「トカゲの尻尾切り」をしている、などとも噂されている。

まあ、当たらずとも遠からずという感じなんだろう。

理研は、短期間の単純な聴き取り調査のみで、小保方氏の「主観面」にまで踏み込んで、いとも簡単に「捏造」「改竄」などと認定してしまい、小保方氏の研究者生命を完全に絶つほどの強烈なメッセージを世界中に発信したことになるのだ。

司法機関でもない理研が、ここまで踏み込んだ認定をすること自体、とてつもない違和感を感じる。

まあ、小保方氏について言えば、これほどインパクトのある研究成果に向き合う科学者の姿勢としては大いに疑問を感じるところだが、個人的な感想としては、小保方氏が、研究者生命を投げ捨ててまで、世紀の発見を「でっちあげた」とは到底思えないし、何らかの「悪用する意図」を以て切り貼りしたとも思えない。

そんなことをするメリットが小保方氏には一切ないからだ。

結局、小保方氏も、理研の「捏造」とか「改竄」という表現に「不服」を申し立てているのであって、理研の「言葉の使い方」は、本当に罪深いよねえ。

言葉はコミュニケーション・ツールである。
ツールである以上、言葉の意味が相手方と「共有」できているか否かを慎重に考察する必要がある。

理研は、今一度、「言葉の重み」について熟考し、今回の軽率な言葉づかいを猛省すべきだ。
とまあ、長くなってきたんで、ここらへんで。

ところで、弁護士会の会長を務めると、ある人は年収が半減したと言い、ある人は2000万円の収入ダウンだったと言い、ある人は8割強の時間が公務に割かれたと言う。

どれもこれも、この2週間を振り返っただけで、「なるほど、そうなんだろうなあ……」と首肯するばかり。

収入ダウン自体は、もうとっくに覚悟していることだが、とにもかくにも、心身の健康だけには留意しないとね。

で、1年後には、思いっきり、はじけたいっすね!!