158)先輩から後輩へ
- 2014年7月12日
- 弁護士・資格
7月8日。
この日は、三重弁護士会(=当会)にとっての「運命の日」となった。
当会の会員数は、現在172名。
ところが、今の弁護士会館は、会員数が100名に達することはないだろうと想定されていた頃(平成4年)に建てられたもの。
昨今の司法改革(法曹人口急増)が無かったならば、おそらくは、今の会館でも十分だったのかも知れないが、さすがに、間もなく200名に達しようかという会員数を抱えるまでに成長した当会にとっては、残念ながら、ちょいと使い勝手が悪くなってしまった。
そこで、当会では、近い将来に新会館を建設すべく「会館建設委員会」を立ち上げ、ここ数年来、新会館建設のための用地探しをしてきたというワケ。
そして、本年度スタートの日となる4月1日、当会の新執行部として津市長に新任挨拶に赴いた際、津市長より、突然、津市が所有する旧公民館跡地を競争入札で売却する旨の情報が発せられたのであった。
実を言えば、津市所有の旧公民館跡地というのは、当会が新会館建設用地として、ずっと「最適」と考えてきた地なのである。
ここに弁護士会館が建てば、裁判所・検察庁・弁護士会が道路に面して一列に並ぶ格好になるからだ。
無論、当会とすれば、津市との随意契約でその地を確実に入手したかった。
だが、入札ともなれば、当会が落札できる保証はどこにもない。
そして、当会は、会員の貴重な「会費」によって成り立っている非営利団体である。
入札に参加して、当会が落札した場合には不動産を取得することとなるが、当然ながら、その対価として、会費を原資とする多額の資金が当会から流出してしまう。
となると、総会でキチンと承認決議をしてもらわないと入札に参加することすら出来ないというワケ。
しかも、この決議は、会員の2分の1以上が出席し、かつ、出席者の3分の2以上の賛成がないとダメという特別決議だ。
従って、当会がこの新会館建設用地を取得するためには、総会の「特別決議」をクリアーした上で、競争相手にも勝って、キッチリと「落札」しなければならない。
あまりにも大きな2つのハードルが我々執行部の眼前に立ちはだかったのであった。
当会では、どこぞの独立行政法人のごとく、金がジャブジャブあり余っているワケではない。
新会館建設のためには、多額の資金が必要となるし、ランニングコストだって増大する。
当然、慎重な立場からの反対意見も多いし、反対意見にも一理ある。
5月の定期総会では、議題とはせずに協議事項として上程し、活発な議論が展開された。
そして、6月の臨時総会にて、いよいよ入札参加の是非を問う投票を実施した。
結果は、投票総数168票で、賛成114票、反対52票、白票2票。
ホントにホントに僅差での可決であった。
しかも、欠席は、わずか4名。
まさに、当会の総力が注入された重い重い意思決定となった。
さて、こうなると、入札額を決定する会長(=私)の責任は極めて重大である。
これほどの重い意思決定をして頂いたのに、僅差で落札できなかったとなれば、全く以て、会員に申し訳が立たないというもの。
当会の性質上、総会決議では、当会から流出する資金の上限額が設定された。
つまり、会長として決断できる入札金額には限界があり、しかも、その情報は簡単に漏れてしまうという大きなハンディを抱えた上での入札参加だったのだ。
そして、入札日が近づいてくると、いろいろな情報が漏れ聞こえてきた。
まず、競争相手が少なくとも2者はいるだろうということ。
そして、1者は、とんでもない高額を入札するかも知れず、当会の手持ちカードでは全く歯が立たないであろうということ。
ハッキリ言って、これにて「万事休す!」かと覚悟した。
私としては、できる限りのことはしました!と言い切るしかないなあ、と。
ところが、ところが、である。
なんと、幾名かの先輩弁護士から、多額の「寄付申出」があったのだ。
名前も金額も明らかには出来ないが、これで、「何とか戦える!」との確信を得るほどの大きな大きな金額であった。
そして、その寄付金額も踏まえた上で、7月7日の夜に入札金額を決定し、7月8日の午前中に事務局に指示を出して、いざ入札!
で、ついに、7月8日午後1時に「落札!」の吉報を得ることができたのだ!
ホントにホントに有り難~い限りであった。
もちろん、先輩弁護士というのは、私よりも先輩ということだから、いずれも「大ベテラン」ばかりだ。
つまり、先輩弁護士にとっては、新会館を活用できる年数というのはホントに限られている。
にも関わらず、新会館の恩恵を存分に受けるであろう後輩弁護士たちのために、自らの汗の結晶である浄財をポ~ンと寄付しようと仰るのだ。
しかも、会館建設には反対したものの、弁護士会には世話になったから寄付だけはすると仰る先輩弁護士までいらっしゃるそうだ。
最近感じたことのなかった「感動・感激」がドッと押し寄せて来た。
そして、その先輩弁護士たちに、何とも言えない「格好良さ」を感じたねえ。
私も、会長だからというワケではないが、私なりに出来る範囲での寄付をさせて頂いた。
今回は、心の底から「感謝」の気持ちが芽生え、気持ちよくスッキリと寄付ができた。
そして、不思議なことに、私としては、弁護士の羽振りが良い時代に弁護士になれた「恵まれた世代」の一人として、後輩弁護士たちの為に少しでも出来ることはしてあげたいなあ、という思いも自然に湧いてきた。
何しろ、一昔前の弁護士の羽振りの良さというのは、完全に「時代の賜物」なのであって、一昔前の弁護士が今の弁護士と比較して、ズバ抜けて有能であったり、尋常ならざる努力をしてきたというワケでもないからね。
逆に、今の若手弁護士たちの経済的苦境は、彼らの責任でも何でもなく、結局は「時代」のせいに過ぎないんだよね。
まあ、これぐらいのことはしてあげないと「不公平」に過ぎるというものだろう。
とにもかくにも、多くの弁護士たちの寄付が、本当の意味で「活き金」となるよう、新会館建設に至るまで、ガンガン突っ走っていきたいっすね。