沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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159)平和の申し子

本年7月1日。
ついにと言うか、想定どおりと言うか、集団的自衛権行使容認の閣議決定が強行されてしまった。

まさに憲法9条の「終わりの始まり」だ。

現在の国際社会で、合法とされる武力行使は、
(1) 個別的自衛権
(2) 集団的自衛権
(3) 集団安全保障
の3つしかない。

3年1組というクラスの中で、A君がB君をいじめていたとする。
その時、B君がA君に「反撃」をしても、B君を責めてはいけない。
これがB君の個別的自衛権。

また、B君と親友のC君が、B君を助けるためにA君を「攻撃」しても、C君を責めてはいけない。
これがC君の集団的自衛権。

その後、3年1組のクラス会が開催されて、B君をいじめたA君に「制裁」を課すという「決議」がなされ、A君に「リンチ」を与えることとなり、リンチが決行された。D君は、B君は嫌いだったが、仕方なくリンチに参加した。
結果、A君は二度とB君をいじめることは無くなった。
これが3年1組の集団安全保障。

日本は、今まで、B君の立場の時だけ「反撃」する気だった。
だが、今後は、C君の立場でも「攻撃」すると宣言し、そのうち、D君のようにリンチという「制裁」にも参加すると言い出しかねないのだ。

今回の閣議決定においては、公明党の強い抵抗もあって、容認された集団的自衛権は、ほぼ「個別的自衛権」と同視してよい限定的なものとなったが、それでも「集団的自衛権」という用語を使用したことの影響はあまりに大きい。

集団的自衛権の行使容認という重い重い扉を開いてしまった以上、最後の扉である集団安全保障への参加容認に踏み切るのは極めて容易なことだ。

そして、その時こそが、憲法9条の「最期」となる。

この問題は、憲法というものが国家権力を縛るものであるという「立憲主義」の根幹を転覆させるほどの重大事件であるため、弁護士会としても、最優先課題として反対運動を展開してきた。

全国には52の弁護士会がある。
各府県に1つずつあり、北海道には4つ、東京には3つある。
この52の弁護士会すべてが、集団的自衛権行使容認については、反対声明や反対決議を出している。
全国の弁護士会が、ここまで足並みを揃えたのも珍しいことだ。
それほどまでに、この問題は重大かつ深刻だということ。

毎月まるまる2~3日間を費やして、日本弁護士連合会の理事会というものが開催されている。
全国52の弁護士会の会長=日弁連理事という仕組みなので、毎月の日弁連理事会には全国から52名の会長が集結するのだ。
日弁連としても、こういう機会を有効活用しない手はないということで、重大な政治問題が発生した場合には、理事全員に対して一斉行動を要請している。
集団的自衛権行使容認の問題についても、先月は、理事全員が地元選出の国会議員に対して閣議決定阻止への協力を呼びかけ、今月は、市民団体とともに、閣議決定撤回を求めるデモ行進を実施した。

今回の問題については、「集団的自衛権を認めたいなら、正々堂々と憲法改正をすべきだ!」という市民の声も多く、まだまだ反対運動は継続していかねばならない。

そして、この閣議決定を受けた具体的な立法措置(自衛隊法その他の法令改正)が講じられるに至れば、そこで初めて、本格的な「司法論争」が展開される契機となる。
日本には、いわゆる「憲法裁判所」が存在しないので、具体的な事件を離れて、裁判所が、法令そのものの違憲性だけを審査することは出来ないが、今後、何らかの集団的自衛権に関する訴訟が提起された場合、最高裁には「憲法の番人」としての良識ある力強い判断を下してもらいものだ。

さて、最後に、作詞家の「なかにし礼」氏が毎日新聞の要請によって書き下ろしたという詩を御紹介する。
これは、本年7月10日の毎日新聞夕刊の「特集ワイド」というコーナーに掲載された記事だ。

そう、我々自身が「平和の申し子」であることを再認識すべきだね!

(以下、毎日新聞より引用)

平和の申し子たちへ!
泣きながら抵抗を始めよう

2014年7月1日火曜日
集団的自衛権が閣議決定された
この日 日本の誇るべき
たった一つの宝物
平和憲法は粉砕された
つまり君たち若者もまた
圧殺されたのである
こんな憲法違反にたいして
最高裁はなんの文句も言わない
かくして君たちの日本は
その長い歴史の中の
どんな時代よりも禍々しい
暗黒時代へともどっていく
そしてまたあの
醜悪と愚劣 残酷と恐怖の
戦争が始まるだろう
ああ、若き友たちよ!
巨大な歯車がひとたびぐらっと
回りはじめたら最後
君もその中に巻き込まれる
いやがおうでも巻き込まれる
しかし君に戦う理由などあるのか
国のため? 大義のため?
そんなもののために
君は銃で人を狙えるのか
君は銃剣で人を刺せるのか
君は人々の上に爆弾を落とせるのか
若き友たちよ!
君は戦場に行ってはならない
なぜなら君は戦争にむいてないからだ
世界史上類例のない
69年間も平和がつづいた
理想の国に生まれたんだもの
平和しか知らないんだ
平和の申し子なんだ
平和こそが君の故郷であり
生活であり存在理由なんだ
平和ぼけ? なんとでも言わしておけ
戦争なんか真っ平ごめんだ
人殺しどころか喧嘩もしたくない
たとえ国家といえども
俺の人生にかまわないでくれ
俺は臆病なんだ
俺は弱虫なんだ
卑怯者? そうかもしれない
しかし俺は平和が好きなんだ
それのどこが悪い?
弱くあることも
勇気のいることなんだぜ
そう言って胸をはれば
なにか清々しい風が吹くじゃないか
怖れるものはなにもない
愛する平和の申し子たちよ
この世に生まれ出た時
君は命の歓喜の産声をあげた
君の命よりも大切なものはない
生き抜かなければならない
死んではならない
が 殺してもいけない
だから今こそ!
もっともか弱きものとして
産声をあげる赤児のように
泣きながら抵抗を始めよう
泣きながら抵抗をしつづけるのだ
泣くことを一生やめてはならない
平和のために!