沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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162)どんぶり勘定のススメ

今月13~16日まで、家族4人で北海道に行ってきた。

今回は、中部空港から函館空港に向かい、函館の湯の川温泉 → 洞爺湖温泉 → 層雲峡温泉の3ヶ所をレンタカーで巡り、旭川空港から中部空港へ戻って来るという旅程。

初日は目の前に「海」を眺めながらの露天風呂、
2日目は目の前に「湖」を眺めながらの露天風呂、
最終日は目の前に「山」を眺めながらの露天風呂、
とまあ、実に贅沢な温泉旅行だった。

ホ~~ントに、心の底から満喫できた感じだねえ。

子供たちもドンドン大きくなってくるんで、こうやって家族全員で旅行できるなんて、あと何回くらいあるんだろうか……。

そう考えると、今回の旅行は、とっても貴重な機会だったねえ。

さて、こうやって楽しく贅沢な家族旅行が出来るのも、今のところ、差し迫った経済的不安がなく、「余裕資金」で遊興費が賄えているからこそ。
その点、ホントに有り難~~い話なのだ。

自営業の場合、その家計管理は容易ではない。
通帳に100万円あったとしても、「お金に色は付いていない」の言葉どおり、チャンと計算しないと、この100万円のうち、はたしていくらまで使ってよいのか?がサッパリ分からないからだ。

サラリーマンの場合であれば、会社から振り込まれる給料は、極端な話、すべて「家計費」として使ってもよいお金だ。
つまり、通帳に100万円あるならば、最悪、来月の給料日まで持ちこたえるだけのお金さえ残しておけば、その余のお金で、パーッと家族旅行に出かけちゃってもOKということ。

ところが、自営業の場合だと、通帳の100万円から事業のための必要経費を支出し、税金や社会保険料を全て払い切らないと、ホントに使ってよいお金は算出できない。

そして、やっかいなことに、税金の支払時期は、稼いだ時期よりも「ずっとずっと後」なので、稼いだお金を全て使い切ってしまい、後から徴収される税金の支払いに困り果て、税金を支払うために借金をするハメに……なんていう話は珍しくないんだよねえ。

自営業者が陥る家計失敗の原因は主に3つ。

(1)公私混同
事業費と家計費の区別が出来ていない。

(2)収入の「ムラ」に対する無策
不安定な収入への備えが出来ていない。

(3)支出の「ズレ」に対する無策
遅れて徴収される支出への備えが出来ていない。

まあ、自営業の場合、事業上の会計帳簿を付けるのは必須だとしても、1円単位の細かい「家計簿」まで付けるのはナンセンスだと思う。
実際、我が家でも、一度も家計簿は付けたことないし(笑)。

何しろ、自営業の収入なんて、年単位でも月単位でも大きく変動するんだものね。
言ってしまえば、生活費を1000円切り詰める努力より、収入を1万円増やす努力の方が大事だということだね。

とは言え、自営業者が陥る3つの失敗原因をカバーできる仕組みだけは絶対に作っておくべし。
ということで、私がおススメするのは、ズバリ「どんぶり勘定」。

辞書によれば、「どんぶり勘定」とは、細かく収支を計算したり、帳面に記入せず、あるにまかせて金を使うこと、とある。
ちなみに、この「どんぶり」とは、職人などの腹掛けの前部につけた「大きな物入れ」のことで、カツ丼などの器のことではないそうだ。

何だか「どんぶり勘定」というと、いい加減で杜撰なイメージがあろうが、たった1つの「どんぶり」だけを使うから杜撰になるのであって、複数の「どんぶり」を的確に使い分ければ、大雑把ながら、キッチリとした個人事業の資金管理が出来るのだ。

では、私が実践している「どんぶり勘定」で使っている5つの「どんぶり」を御紹介しよう。

各どんぶりには常に確保すべき最低金額が設定され、資金管理としては、毎月決まった日に残高をチェックするだけで足りるというワケ。
つまり、残高が危機的状態でない限り、普段は、大雑把に消費生活が送れるということ。

(1)事業どんぶり

まずは、「公私混同」をしないために事業費と生活費を分けるのが肝要。
事業どんぶりとして事業専用口座を作り、事業費は全てここから支出する。
また、全ての収入をこのどんぶりに1本化する。
そして、「収入のムラ」に対応すべく、常に「事業費の2ヶ月分」を確保するよう努め、余剰金は次のどんぶりに回す。

(2)生活どんぶり

事業どんぶりの余剰金は、真っ先に生活どんぶりに入れる。
ここには、「収入のムラ」に対応すべく、常に「家計費の2ヶ月分」を確保するよう努める。

(3)決済どんぶり

事業どんぶり・生活どんぶりの余剰金は、第3のどんぶりである決済どんぶりに入れる。
このどんぶりを作る目的は、「支出のズレ」に対応するため。
ここには、常に「翌月と翌々月に徴収される納税額」と「クレジットカードの限度額」を確保するよう努める。
こうしておくことで、クレジットカードを使う際には、必ず預金残高の裏付けがあることになるので、クレジット=借金という図式にならないで済む。

(4)積立どんぶり

将来における何らかの目的のために貯蓄することは必要。
住宅ローンの頭金・教育資金・セカンドライフ資金、いずれにしても、毎月一定額を積み立てることなしには資金確保は達成し得ない。
各自の目的によって積立額も異なろうが、大切なことは、このどんぶりには入金するだけに徹底し、目標達成時までは絶対に出金しないという固い決意だ。

(5)予備どんぶり

以上の4つのどんぶり全ての最低額が確保できて、初めて、この予備どんぶりへの入金が実現する。
とは言え、個人事業の場合、不意の出費もあるから、この予備どんぶりには、常に「目標売上高の1ヶ月分」を確保するよう努める。

で、それを確保した上での余剰金が、ようやく「余裕資金」ということ。
つまり、この予備どんぶりに十分な資金が無い限り、家族旅行は「将来の楽しみ」として、仕事のモチベーションにするしかないんだよね。

まあ、弁護士でも、独立したばかりの頃は、生活するのも大変だろう。
従って、各どんぶりに最低額を確保するのも難しかろう。

だが、独立後3年間、シッカリと的確に「種まき」をし続ければ、きっと、各どんぶりの最低額を常に確保し続けながら、いい具合にキャッシュ・フローが回り続けるという理想的な状態に至ることができるはず。

さあ、十分な充電も出来たことだし、残り少ない家族旅行を満喫できるよう、明日からまた、公務と弁護士業務にガンガン邁進するとしましょうかね。