沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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188)健康経営

先週は、前半3日間が東京出張で、その後、溜まった仕事を一気に片付けて…という感じで、久々にやや過密だったせいもあろうか、ちょいと体調に異変が生じ、「あっ、これはヤバい!」と自覚したところだ。

で、この土日は、ゆっくりと「休養」させて頂いている。
お陰様で、何とか、週明けからはバリバリと仕事に打ち込めそうだ。

よく「企業は人なり」と言われるが、我々のような超零細企業の場合は、「人が全て」であり、弁護士であれ事務員であれ、誰か一人でも健康を害してしまえば、事務所全体のパフォーマンスは、アッという間にガタ落ちとなる。

最近、巷では、「健康経営」という言葉が流行り始めている。
この言葉自体は、NPO法人の「健康経営研究会」の登録商標だそうだが、同法人のHPによれば、「健康経営」とは「経営者が従業員とコミュニケーションを密に図り、従業員の健康に配慮した企業を戦略的に創造することによって、組織の健康と健全な経営を維持していくこと」だそうだ。

企業の競争力の源泉は「人」であり、人が心身ともに健康でない限り、競争力が維持できないのは至極当然のことだよね。

アメリカ商工会議所の調査結果によれば、従業員が健康を害した場合、医療費等の直接コストの実に3倍もの間接コスト(=パフォーマンスの低下による残業代等の増加コスト)が発生するのだそうだ。
結果、健康経営と企業実績との間には、明白な「相関関係」があるものとされている。

経済産業省においても、昨年度から、「健康経営銘柄」(=東京証券取引所の上場会社の中から、従業員等の健康管理を経営的な視点で考えて戦略的に実践している企業を、業種区分毎に選定して紹介するもの)を公表して、投資家向けの指標としている。
また、日本政策投資銀行においても、「健康経営格付」なるものを定め、格付けによって、金利の優遇措置まで講じているようだ。

さて、人が健康を維持するためには、ワーク・ライフ・バランスが重要であることは論を待たない。
脳(心)も筋肉と一緒で、健康維持のためには、次の3つのローテーションが大切だ。
1)負荷(思考・作業)
2)栄養(趣味・交流)
3)休養(休息・睡眠)

日本の企業社会では、相変わらず、残業は常態化している。
もちろん、我々の弁護士業界も同様だ。

弁護士の中には、仕事が「大好き」で残業している人もいるし、家よりも事務所の方が「居心地が良い」との理由で遅くまで帰宅しないという人もいるに違いない。
まあ、このように、残業を「したくてしている」人は、健康を害することもなかろう。

だが、残業を「したくもないのにしている」人達は、相当に深刻だ。
この人達が、早晩、健康を害するであろうことは、火を見るよりも明らかだよね。

では、何故、イヤイヤの残業になってしまうのか?
一般的に、想定される理由は、次の4つほどだろうか。
1)仕事が終わらない
2)顧客側の都合(=夜しか打ち合わせができない)
3)先に帰れる雰囲気じゃない(=上司がいつも残業している)
4)残業代が無いと生活できない

まあ、1)は残業の本質的問題で、クリアーすべき最大の難問だね。
これを解決するための私見は、後述したい。

次に、2)は工夫すれば足りる問題だ。
どんな顧客であれ、ある程度はこちらの都合も聞いてもらえるはずだから、顧客との夜の打ち合わせは、週に2~3日程度(隔日)とキッチリ決めてしまえばよいし、どうしても夜の打ち合わせが続いてしまったならば、翌日の午前中は、潔く「オフ」にしてしまうべきだ。

そして、3)は気持ちの問題としか言いようがない。
仕事をキッチリこなしてさえいれば、何ら文句を言われる筋合いはないんだからね。

最後に、4)は、残業代自体がない弁護士には考えにくい理由だが、一般企業では、1)と並んで多数派を占める理由のはず。

この点、経済産業省の「健康経営銘柄」にも選出された「SCSK」という会社では、それまでは月50時間もあった平均残業時間を、月18時間にまで減少させることに成功したそうだ。
その画期的な手法というのが、「残業しなくても残業代を払う」というもの。
つまり、50時間の残業時間を20時間に減らすことができたら、減らした30時間分の残業代は、ボーナスに上乗せすると公約したのだ(!)。

残業してもしなくても給料は同じ!ということになれば、人間、少しでも早く仕事から解放されたいもの。
結果、ありとあらゆる所に従業員の創意工夫が生まれて、業務が一気に効率化し、残業代というコストが変わらないにも関わらず、会社全体としては、なんと「増収・増益」に転じたのだそうだ。

まさに、健康経営が企業実績に直結していることの「証明」とも言えよう。

では、「イヤイヤ残業」を解消するために、如何にして「仕事を定時に終わらせるか」ということについて、私見を述べてみたい。

私なりに考察した結果、仕事が定時に終わらない人の特徴は、次の4つだ。
1)ムダな時間が多い
2)時間の見積りが甘い
3)仕事の手順が間違っている
4)完璧主義である

1)は、そんなことは無い!と反論を受けそうなものだが、人間、10時間も15時間も集中力が持続するワケがなく、職場に15時間もいたところで、ホントに生産性の高い時間なんて半分程度に過ぎないはず。

2)は、自分の力量を見誤っているということ。
この程度の仕事量であれば、3時間程度で片付くだろうと思って引き受けたら、予想外に6時間も掛かってしまったというパターンだ。
見積りの精度は、仕事の経験値に比例して高くなってくるものなので、新人の頃は、まあ致し方ない面もあろう。新人時代は、誰しも要領が悪いものだしね。

3)は、多くの人が陥っているミスだ。
1日の仕事の手順ということ自体、あまり気にしていない人が多い。
人間の脳は、機械と違って、とにかく「すぐに疲れる」シロモノだ。
疲れたら、一気にパフォーマンスは低下し、ミスも乱発する。
従って、1日の仕事の手順は、「重たい順」というのが鉄則なのである。
つまり、より「思考力を必要とする順」に着手していくべきなのだ。
私の場合、思考を深めて起案すべき重要な仕事が入っていれば、電話もシャットアウトして、午前中に一気に書き上げるということをよくやる。
そして、そんな日は、午後から夕方にかけての時間を、事務的な仕事や調べもの、依頼者との協議や相手方との交渉などに割り当てることにしている。
朝は、とかくエンジンがかかりにくい。
そこで、1日の仕事の段取りを「軽い順」にやるという人が多い。
だんだんと脳の回転をアップさせていこうという作戦なんだろうが、脳は軽い仕事であっても、確実に疲労を蓄積してしまうので、この手順だと、間違いなく「残業コース」まっしぐらである。

4)は、言わずもがなであろう。
だが、この「深み」にはまってしまう人は多い。
弁護士の場合、普通の企業取引と異なり、顧客から「品質基準」が何ら提示されない。
あるとすれば、「とにかく勝訴してくれ。」という一点のみだ。
勿論、裁判官から、「こういう内容なら勝てますよ。」とも言われるはずがない。
つまり、「どこまでやれば勝てるのか?」ということが分からない以上、完璧主義の人は、提出期限ギリギリまで、起案の手直しに没頭することになってしまうのだ。
これでは、残業が常態化するのは当たり前。
意図的に手抜きをするのは論外だが、健康を害してまで完璧主義を貫くのも非常に愚かなことである。
まあ、仕事の経験を積んでいけば、どの程度の品質をクリアーすれば、専門家の仕事として恥じないレベルかということ自体は、自ずと分かってくるんだろうけどね。

私は、弁護士になって19年目となるが、一貫して、残業は「しない主義」だ。
勿論、やむなく残業に至ることは稀にあるが、弁護士7名の共同事務所時代も、弁護士だけでなく事務員も含めて、私が一番先に帰宅することが圧倒的に多かったし、今の事務所でもそうだ。
それでも、それなりの仕事量と品質は維持してきたと自負している。

早く帰宅して、たっぷりと心に「栄養」を取って、ゆっくりと脳を「休養」させる。
そして、朝イチからロケット・スタートを切って、また早く帰宅する。
この好循環こそがベスト・パフォーマンスを生み、絶妙なワーク・ライフ・バランスにつながるのだと信念しているところだ。

明日は、いよいよ「なでしこ」のW杯決勝戦。
彼女達のプレーが、日本中の「栄養補給」となりますように!!