266)ゴーイングコンサーン
- 2018年4月7日
- 経済・ビジネス
日本語では、「継続企業の前提」と訳される。
企業が、未来永劫、「永久」に、
事業を継続していくことを前提とする考え方だ。
今回の、「オフィス北野騒動」に触れて、
この「ゴーイングコンサーン」が頭に浮かんだ。
どちらに非があるのかは分からないし、
コメントするだけの情報にも接していないが、
ただ一つ、私が感じたことは、
森社長の「経営理念」に対する疑問だ。
森社長は、週刊誌の取材に対し、
役員報酬や従業員給与が高いとの批判について、
「94年のたけしさんのバイク事故で得た大きな教訓は、
この業界はいつ何が起こるか分からないというもの。
払える時に払っておかないと。」
という趣旨のコメントをしている。
しかしながら、これは、要するに、
「たけし」という唯一のカリスマに、
会社の全てを依存するという体質そのもの。
たけしが稼いでいるうちに、
その稼ぎを「山分け」しようという発想だからね。
本ブログでも繰り返し強調しているとおり、
社長の最大の使命は、「会社を潰さない」こと。
つまり、「ゴーイングコンサーン」の理念だ。
オフィス北野の収入の8割以上が、
たけしのギャラであったという。
一方で、たけし軍団の露出は、あまりに少ない。
石原裕次郎亡き後も、石原プロが存続したように、
たけし引退後も、オフィス北野が存続すべく、
森社長は、一体、どんな「投資」を遂行したのか。
企業は、人材の新陳代謝を繰り返しながら、
未来永劫、ずっと生き続けねばならない。
そのためには、事業分野の新規開拓と、
人材育成への投資が必要不可欠だ。
一生懸命に働いてくれている従業員に対し、
企業利益を還元するのは、とても大事なこと。
でも、それは、明確なビジョンに基づいた、
必要十分な投資を遂行した上でのことだ。
稼いだら、稼いだ分を役員と従業員で山分け、
なんていう企業に、残念ながら、未来はない。
経営のイロハが分かっていない経営者は、
「税金でこんなに払うくらいなら」
なんて思って、ついついボーナスを奮発したり、
どうでもいい無駄な経費を積み上げたりする。
いやいや、税金は払えば払うほど、
企業に「お金が残る」ということなんだよね。
そして、その残ったお金を投資に回すのだ。
この事実を十分に理解していないと、
社長の最大の使命を果たせぬまま、
企業が「ジ・エンド」を迎えることになるワケ。
森社長が、将来のビジョンを明確に描いて、
たけし引退後の事業分野への投資を遂行し、
たけしの後継者を育成し続けていたのなら、
誰も、何ら文句は言えまい。
だが、たけし軍団の露出の少なさを見る限り、
たけし軍団を「売り込もう」という、
企業としてのプロモーション意欲は見えない。
もちろん、たけし軍団以外のタレントも多い。
……のだろうけど、私が知っているタレントは、
「マキタスポーツ」くらいかね。
結果、どんどん、たけしの存在が大きくなる一方。
これでは、企業の命運は、たけし次第ということ。
案の定、たけしの脱退で、
オフィス北野の経営は、「風前の灯火」だ。
ゴーイングコンサーンの理念は、
全ての中小企業経営者が、肝に銘じるべきこと。
中小企業の経営者(創業者)というのは、
ほとんどの場合、極めて「できる人」である。
当然、社長自身がやるのが最も効率的。
そうなると、中小企業経営者というのは、
「人に任せられない」
という昔ながらの職人気質の人が多くなる。
でも、それは、人材育成の観点からは最悪。
結果、いつまでたっても後継者が育たず、
ある日突然、社長が倒れて、
会社はパニックになり、打つ手がないまま、
結局、会社をたたむことに……、
なんていうパターンは、ゴロゴロ存在する。
このことは、我々の業界でも同じ。
有能で偉大な「ボス」が、
いつまでも現役バリバリでいると、
事務所後継者が育たないという事態に陥る。
法律事務所というのは、
芸能事務所と本質的には同じ構造だ。
弁護士という「人的商品」を、
スタッフがマネージメントする構造だからね。
オフィス北野の場合、
スタッフが金銭的に潤う一方で、
歩合制のタレントの中には、
日々の生活にも困るような者がいたようだ。
だが、タレントあっての芸能事務所。
タレントが食うにも困っているならば、
どうにかしてタレントの売り込みをすべきで、
そのための投資戦略を遂行するのが筋だよね。
当事務所も、
まずは、弁護士が潤う仕組みを構築し、
その上で、スタッフも潤う仕組みを構築した、
と自分では思っている。
そして、私が引退しても、
当事務所が十分に皆様の期待に応えられるよう、
今後、私の露出を徐々に減らしながら(笑)、
万全の後継体制を築いていきたいと思っている。
まあ、あと10年くらいは、
私もバリバリ頑張りますけどね(笑)!!