294)ご飯論法
- 2020年6月20日
- 法律・政治
ネタとしては、
やや古くなってしまったが、
今回は、次々と登場する
安倍政権の「ご飯論法」について。
芸能人も巻き込んで、
さんざん話題となった
「検察庁法改正問題」。
つい数日前、政府・与党は、
公務員法改正案を今国会で廃案にする、
との方針を固めたそうだ。
検察幹部の定年延長特例を撤回した上で、
次期国会以降に再提出するらしい。
まあ、妥当な方針だろう。
そして、
検察庁法改正の契機となった
当の黒川元検事長の
「賭け麻雀問題」。
この不祥事への処分が、
あまりにも軽い「訓告」となり、
これまた国民から非難されるに至り、
安倍首相は、
「法務省から検察庁に訓告が相当と伝え、
検事総長も訓告が相当と判断して処分した」
などと述べたものである。
これが「ご飯論法」だ。
ご飯論法というのは、
2018年、法政大学教授の上西充子氏の
ツイッターへの投稿が契機となって
ネーミングされたもので、
要するに、
「朝ご飯は食べましたか?」
との問いに対し、
朝食としてパンを食べたのに、
「ご飯は食べていません。」
と答える論法のこと。
基本的には、
「質問者が勘違いすること」
を狙った姑息な答弁方法だ。
質問者は、
「朝に何らかの食事をしたか?」
と訪ねているのに、敢えて、
「ご飯=米」
と言葉を意図的に限定して、
「嘘はついていないけど、
本当のことも言っていない」
という状態を作り出しているワケ。
もっと巧みな答弁としては、
「朝、コーヒーは飲みましたけど、
ご飯(=米)は食べていません。」
というものであり、
これだと、質問者は、
「朝、飲料は飲んだけど、
固形物は食べていないのだな。」
と完全に誤解してしまうであろう。
元検事長の処分に話を戻すと、
検事長の任命権者は内閣であり、
当然ながら、
その懲戒権者も内閣である。
つまり、検事長を懲戒できるのは、
内閣だけであり、
そのトップは、言うまでもなく、
安倍首相自身である。
安倍首相は、
「訓告」という処分を下したのは、
法務省・検事総長なのであり、
自分ではないのだから、
自分が非難される言われはない、
と言いたいようである。
しかしながら、
安倍首相が、検事長の懲戒を
「しない」と決めたもんだから、
法務省は、仕方なく、
省内の内規に基づき、
「訓告」という措置をしたのである。
ちなみに、
国家公務員法に基づく懲戒処分には、
免職、停職、減給、戒告の4つがあり、
法務省の内規に基づく監督上の措置には、
訓告、厳重注意、注意の3つがある。
つまり、
確かに、訓告という措置は、
法務省・検事総長がするものであり、
その意味で、
安倍首相は、嘘はついていない。
ただし、法務省・検事総長が、
訓告という措置をした理由は、
内閣が懲戒処分をしなかったから、
ということに尽きる。
つまり、
「○○は、してしません。」
というときの「○○」について、
意図的に、
「極めて限定的に絞り込んで」
答えるという姑息な答弁なのだ。
安倍首相に問われているのは、
「なぜ、懲戒しなかったのか?」
ということなのに、
「訓告にしたのは私じゃない。」
と答えているワケで、
「その原因は私にあるけどね。」
ということは隠しているワケだ。
検察庁法改正問題の契機となった
黒川元検事長の
「定年延長問題」。
黒川元検事長は、
安倍政権の「お気に入り」であり、
何が何でも、黒川元検事長を
「検事総長」にしたかったらしい。
検事長の定年は63歳。
黒川元検事長は、
本年2月に63歳に達してしまうが、
それまでに検事総長が退官しないと、
黒川元検事長を検事総長にはできない。
そこで、安倍政権は、
法務省を通じて、検事総長に対し、
本年1月での退官を迫った。
ところが、検事総長はこれを拒否。
どうにも困ってしまった法務省は、
国家公務員法の定年延長規定を、
検察官にも適用して、
閣議決定で定年延長することを提案。
もちろん、これは違法であり、
従来の政府答弁とも違う。
だが、安倍政権は、これを強行。
当然、野党・国民から非難の嵐。
これに対し、安倍首相は、
「定年延長を提案したのは法務省」
と答弁したのである。
これも嘘ではないのだろうが、
「手法を提案したのは法務省だが、
検事長の定年延長を希望したのは私。」
ということを意図的に隠しているワケ。
権力は腐敗するというが、
長すぎる安倍政権は、不祥事も多い。
そして、そのたびに、
登場するのが「ご飯論法」である。
森友学園問題での佐川氏の答弁。
「交渉・面会記録は残っているか」
「確認したところ、交渉記録は廃棄した」
その後、記録の存在が明らかとなり、
「廃棄した、は虚偽答弁だったのか」
「文書規則で廃棄という取扱いを確認した」
加計学園問題での柳瀬氏の答弁。
「今治市職員と会ったか」
「職員と会った記憶はない」
その後、学園関係者との面会が明らかとなり、
「会ったと言わなかったのは不誠実だ」
「今治市職員に会ったかと聞かれた」
桜を見る会問題での安倍首相の答弁。
「自民党の中で割り振っているのではないか」
「招待者の取りまとめ等には関与していない」
この安倍首相の答弁は、要するに、
「招待者の取りまとめはしていないが、
推薦しているのは私なんだけどね。」
ということを意図的に隠しているワケ。
とにもかくにも、ふざけた話だ。
政治は「数=力」なので、
与党が強大である限り、まあ、
何をどうやっても、政権は転覆しない!
との自信があったのだろう。
だが、安倍政権の支持率は急降下中だ。
日本の優秀な官僚たちも、
好き勝手に幼稚なことをやりたい放題の
政権に付き合わされるのも疲れてきたはず。
つい最近では、またまた、
電通と経産省の癒着、そして、
前田中小企業庁長官の「虚偽答弁」
なんかが話題となっているが、
お得意の「ご飯論法」が展開されるはず。
そろそろ、
本当に国民のことを考えて、
誠実に政治をしてくれるリーダーを!!
と強く期待したいところだね。
まあ、無駄な期待かも知れないけど。