沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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41)今度はバクチ…

 相撲界の不祥事が、とどまるところを知らない。
 記憶に新しいものだけでも、「かわいがり」と称するシゴキ問題に始まり(死亡事件に発展)、大麻使用などのクスリ問題、チケット横流しなどの暴力団との交際問題などがあり、そして、今度は野球賭博などのバクチ問題だ。
 今回のバクチ問題については、何と65名が、野球賭博を含めて何らかの賭博に関与したと自己申告しており、その中には、現役の大関や親方まで含まれていたというのだから、その蔓延ぶりが窺える。

 そう言えば、財団法人日本相撲協会というのは「公益法人」のはず…。
 これだけ、違法行為が蔓延しているとなると、もはや「公害法人」だと皮肉る声も出てきそうだ。
 本気で意識改革をしないと、大相撲自体の存続問題にも発展しかねない。

 野球賭博と聞けば、ウラに暴力団がいることくらい、常識ある人間ならすぐに分かりそうなものだが、相撲界という特殊な世界にいると、その程度の常識も身につかないのだろうか。あるいは、そんなの「百も承知で」ということなのか。

 琴光喜いわく、野球賭博の「勝ち金」を胴元に請求したら、逆に口止め料として300万円を脅し取られ、さらに、1億円の口止め料を要求されたとのこと。
 暴力団側も調子に乗りすぎたということなのだろうが、暴力団が関与している世界で、堅気の人間が本当に「おいしい思い」など出来るはずがない。
 琴光喜が、もしも、野球賭博で本気で儲けようなどと考えていたのだとしたら、世間知らずも甚だしいということだ。

 暴力団が手を出す商売というのは、要するに「カモ」にしやすい「おいしい」商売ということだ。
 取引でトラブったら、最終的には、暴力を背景に「脅す」のがお決まりのパターンであり、脅される側も何らかの「弱み」を握られているから、脅しに屈してしまう。

 昔から、「飲む、打つ、買う」の世界には、必ず暴力団が関与してきた。
 どれも、人間の欲望に直結しており、参加者が「中毒」に陥りやすいため、冷静沈着な判断ができなくなるので、どんどん「おいしいカモ」に育てられていくということなのかも知れない。

 現在、「飲む」だけは合法であるが、そこから違法に発展したのがクスリということであり、いずれにせよ、その行為自体が違法である以上、世間に名の知れた人物としては、その世界に自分が関与しているということ自体、どうしても秘匿しておきたいはずだ。
 その意味で「金のある有名人」というのが、暴力団にとっては、最も「おいしいカモ」なのであり、芸能人や有名スポーツ選手は、格好の標的とされる。

 今回の賭博も、それ自体が違法である以上、賭博への関与が「バレる」こと自体が相当なダメージであり、暴力団に対する決定的な「弱み」となる。
 つまり、負け金を払わなければ「バラすぞ」と脅され、勝ち金を要求しても「バラすぞ」と脅されるのだから、最初から「勝っても負けても損」という理不尽な必敗ゲームに参加しているのだ。

 ところで、クスリ・バクチ・売春(助長行為)、いずれも、我が国では違法であるが、これらは、「被害者なき犯罪」と言われる。
 即ち、参加者が自由意思で円満に取引している限り、誰一人として損をしている者がいないということだ。
 だからこそ、参加者にも「違法なことをしている」という認識が欠如しやすいのであろう。

 特にバクチは、刑法に「賭博罪」や「富くじ罪」(宝くじのこと)が規定されているのに、競馬・競艇・競輪・オートレース・スポーツ振興くじ・宝くじ等々の合法の公営ギャンブルが数多く存在することから、ますます「ギャンブル=違法」という認識が欠如しやすい。

 ギャンブルは違法なのに、合法の公営ギャンブルは数多く存在する。
 何だか、矛盾したような話だが、人間の欲望に直結するギャンブルは、いくら禁止しても決して無くならず、かえってヤミ営業が跋扈するだけなので、敢えて、公営ギャンブルを多数設立することで、国民の「ガス抜き」を図り、ヤミ営業のカモにされるのを防止する、というのが表向きの理由だ。

 もちろん、実質的な理由は、暴力団への金の流れを断つのと同時に、税収アップにつなげたいという分かり易いものだ。

 私はギャンブルは全くやらないが、弁護士の中にもギャンブル好きはいる。
 純粋に、ギャンブルをしている最中の「高揚感を楽しむ」という感覚なら問題はないが、ギャンブルで儲けようなどという発想に至るようなら、絶対に手を出してはいけない。

 ギャンブルで儲かることはない。
 ギャンブルは確率論が支配する世界であり、回数を重ねるほど、参加者はどんどん損をしていくことが予め決まっている。
 ギャンブルで儲かるのは「胴元」だけである。

 公営ギャンブルにしても、主催者側である胴元が必ず儲かるので、安定した税収が期待できるからこそ、国が積極的に関与しているのだ。
 例えば、宝くじの「テラ銭」(胴元の取り分)は、なんと「52%(!)」である。要するに、みんなから集めたお金のうち52%を胴元が取って、残りの48%を賞金として還元するという仕組みだ。
 つまり、数学的には、300円出して144円の商品を購入している、という訳の分からない買い物が宝くじである。
 
 宝くじは、言ってみれば「ボロ儲け」の商売である。
 宝くじの当選金が「非課税」であることは皆さんご承知だろうが、なぜ非課税かと言えば、最初から52%も胴元が吸い上げているので、税金が「天引き」されているのと同視できるから、という呆れた理由からである。

 他の公営ギャンブルも宝くじほどではないが、胴元にとっては「おいしい商売」であることに違いはない。
 おいしい商売であるが故に、当然、各省庁の縄張り争いが生じ、各ギャンブルの監督官庁は、次のとおり、見事なまでに「縦割り」となっている。
     競馬 = 農林水産省
     競艇 = 国土交通省
     競輪 = 経済産業省
     オートレース = 経済産業省
     スポーツ振興くじ = 文部科学省
     宝くじ = 総務省

 こんなところまで「縦割り行政」かよと逆に悲しくなるが、まあ、それはともかく、くどいようだが、ギャンブルで儲けることは出来ない。
 純粋に「場の雰囲気を楽しむ」程度の趣味にとどめておかないと、必ず、経済的に破綻することになるのだ。

 人間の頭は数学的計算にはメッキリ弱い。
 1万分の1の確率と100万分の1の確率の違いを「実感」できる人は、ほとんどいないはずだ。
 私なんぞは、100分の1だろうが、1000分の1だろうが、「可能性が低い」という大雑把な感覚しか持ち得ない。

 さて、最後に問題を1つ。
 これが瞬時に正解できない人は、ギャンブルに手を出すべきではない。

 コインが3枚ある。
 1枚は、両面ともに「A」という文字が記載されている。
 もう1枚は、両面ともに「B」という文字が記載されている。
 最後の1枚は、表に「A」、ウラに「B」という文字が記載されている。

 3枚のコインを袋に入れ、1枚だけ取り出し、机の上に置いたところ、コインの表面には「A」という文字が示されていた。
 さて、このコインのウラが「B」である確率は?

 多くの人が「2分の1」と答えるはず。

 だが、正解は「3分の1」である。
 こういうちょっとした人間の頭の錯覚をギャンブルは利用している。
 
 ギャンブルは、胴元への「寄付行為」だと肝に銘じるべきである。