120)時間を売る人・買う人
- 2013年4月14日
- 経済・ビジネス
お陰様で、とっても忙しい!
ホントに有難~~~いことなのだ。
でも、こうやって、毎日を仕事だけに追われ続けていると、弁護士の仕事というのは、
<自分の時間を切り売りするビジネス>
なんだなあと、つくづく実感するねえ~。
世の中のほとんどの仕事は、他人のために自分の時間を費やす営みなワケで、その時間を費やした対価としてお金を貰っている。
時給○○円のバイトなんか、まさに、そのまんまだ。
年間に費やせる仕事時間が2000時間だと仮定すると、年間2000万円を稼ぐ弁護士なら、その弁護士は「自分の1時間を1万円で売っている」という計算になる。つまりは、時給1万円だ。
逆に、依頼する側から言えば、その弁護士が30時間を費やすことが想定されるような仕事を依頼したければ、30万円の対価を用意しないと引き受けてもらえないということを意味する。
給与を貰っている側からすれば、時給1万円というと「高い!」と思うかも知れないが、弁護士というのは自営業だから、弁護士=企業として考えると、実はごく平凡な金額である。
企業の財務分析指標の1つに「労働生産性」というものがある。
要は、「従業員1人あたり、いくら稼いでいるのか?」という指標だ。
ざっくり言うと、「年間の粗利÷従業員数」となる。
時給1万円の弁護士の場合、事務員1名を雇用しているとすると、2人で年間2000万円を稼いでいることになる。
弁護士の場合、仕入などの原価は存在しないから、2000万円そのものが粗利だ。
つまり、この法律事務所の労働生産性は「1000万円」となる。
日本の企業の労働生産性は、全体平均で800万円ほどだから、平均よりもチョッピリ良い程度だ。
上場企業だけで見れば、平均で1700万円くらいあるので、そのレベルには遠く及びない。
法律事務所が上場企業なみの労働生産性を上げようと思えば、弁護士1人・事務員2人の合計3人で5000万円を稼ぐ必要があるのだ。
この場合、その弁護士が年間2000時間働くとすれば、その時給は2万5000円に達する。
タイム・チャージ制(弁護士の作業時間・拘束時間に応じて依頼者に課金される制度)を採用している法律事務所では、弁護士の時給は2~10万円程度らしいが、簡単に言えば、こういう計算をしているだけだ。
まあ、時給1万円だろうが、2万5000円だろうが、その中から、人件費や事務所家賃、その他の諸経費を支払って、残った中から、さらに税金を支払って、最後の最後に残ったものが、弁護士家族の生活費ということ。
だから、必要な生活費から逆算していけば、その弁護士ごとに、絶対に確保したい「時給○○円!」というのが存在するワケ。
私見だが、資本主義経済というのは、究極的には「時間の売買」ということ。
資本主義経済が成り立つには、価値の「格差」が存在しないとダメで、あらゆるモノが、誰にとっても「同価値」だと、モノを交換するという経済取引は成立しようがない。
要は、「安く仕入れて、高く売る。」ということが商売なんだよね。当たり前だけど。
つまり、人によって「時間の価値」が異なるからこそ、資本主義経済が成り立つというワケ。
例えば、時給1万円の弁護士が新人弁護士を雇用したとしよう。
雇用するということは、新人弁護士の「時間を買う」ことだ。
その新人弁護士に年間500万円の給与を支払い、年間1000万円分の仕事を任せるとする。
自分なら1000時間でやり切れる分量なんだが、新人弁護士にとっては、2000時間あってもやり切れない分量かも知れない。
そこで、自分も300時間だけ手伝ってあげるとする。
すると、自分に残された仕事時間は、あと700時間。
ここで、700万円分の仕事を新たに取れば、年収は2700万円になる。
新人弁護士の給与500万円を差し引いても、残り200万円の「儲け」が出た計算になる。
結果、新人弁護士を雇用したことは、投資としては「成功」だったことになる。単純計算だけど。
この経済的成功が実現したのは、自分と新人弁護士との時給に「格差」があったからに他ならない。
何しろ、新人弁護士の時給は2500円(500万円÷2000時間)だからね。
資本主義の基本が「安く仕入れて、高く売る。」ことにあるのなら、まさに他人の1時間を2500円で仕入れて、自分の1時間を1万円で売るということは、資本主義の理に適っているということだ。
数年後、この新人弁護士が、スキルを向上させ、自力で年間2000万円以上稼げるように成長すると、ボスとの「時間価値の格差」が解消される。
格差が解消されてしまうと、資本主義経済は成り立たなくなる。
そうなると、雇われていることがバカバカしくなり、彼は「独立」という選択をすることになるワケだ。
まあ、とにもかくにも、資本主義の世の中では、
「自分の時間を売ってお金を稼ぐ人」(労働者)と
「他人の時間を買ってお金を殖やす人」(資本家)
の2種類に大きく分断されてしまうという話。
自分の時間を売ってお金を稼ぐという選択には、自ずと限界がある。
どんなに頑張っても年間2000時間しか働けないんだとすると、時間単価を上げる以外に収入を増やす方法はない。
そして、時間単価を上げる方法は、次の2つしかない。
1)作業効率を上げて、仕事量を増やす。
2)スキルを上げて付加価値を高める。
1)は、2000時間で50件こなしていたのを、60件に増やすというやり方で、2)は、同じ50件でも、1件あたりの単価を40万円から50万円に上げるというやり方。
まあ、どちらも、ある程度までは可能だが、いずれ限界は訪れる。
と言うか、私自身は、これ以上に弁護士としての収入を増やそうという気もサラサラないので、時間単価を上げようというモチベーションも特にないんだけどね。
ただ、自分の時間だけは、やっぱり「増やしたい!」のである。
前に述べたとおり、今後は、中小企業診断士としての仕事にも相応の時間を費やしていきたいところなので、その点では、私の弁護士業務の「一部をシェア」してくれる有能な後輩弁護士がいれば、非常に有難いなあ~~、なんて思う今日この頃だ。
私も、そろそろ、自分の時間をガンガン売りつつも、他人の時間をチョッピリ買っていきたいということなんだね。
ひょっとすると、新人弁護士はホントに就職難だけど、こういう「弁護士の転籍市場」は、今後、意外に伸びていくのかも。
イソ弁(勤務弁護士)はいらないけど、パートナー(共同経営者)ならウェルカム!なんていう弁護士は、結構たくさんいますから。