沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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147)確定申告終了!

今年は、来年度の準備などで今月下旬からは本格的に忙しくなりそうなので、この時期の恒例行事である確定申告をサッサと済ませた。
こんなに早く済ませたのは、初めてかも?

平成24年は新事務開設のため経費が多くなり、思ってもいなかった所得税の還付を受けることができたが、平成25年はそうもいきそうにない。
まあ、シッカリと納税しつつ、平成26年は公務と業務を何とか両立させて、ちゃんと家族を支えていきたいもんだねえ。

ところで、我々弁護士の仕事というのは、基本的にはスポット収入に支えられている。
まあ、ハッキリ言えば「水商売」ということだ。

ごくごく稀に、顧問料などの定期収入だけで事務所経営が維持できるという実に羨ましい事務所もあるにはあるが、大半の弁護士は、仕事がプッツリと無くなれば「廃業」の2文字が脳裏に浮かぶというもの。

弁護士が急増中の昨今、「生活するだけで精一杯で、弁護士会費の負担もツライのに、税金なんて払ってられるか!」という若手弁護士の声も聞こえてきそうだ。

だが、以前にも述べたとおり、税金を払った残りが生活費という構造にあるので、「税金を払えるくらい稼ぐ」ことこそが生きるためには必要不可欠なのである。

とは言え、税金は、誰でも「できれば払いたくない」と思うもの。

日本の所得税制は「累進課税」なので、稼げば稼ぐほど税率が高くなるワケだから、稼げば稼ぐほど、税率の上昇とともに「自分の時給」がドンドン下がるという悲しい関係にある。
だから、十分な生活ができているなら、一定量以上の仕事はセーブしようという心の働きが生まれかねないのだ。

巷でよく聞かれる「103万円の壁」とか「130万円の壁」というのも、税金を払いたくないという心理によるものだ。

所得というのは、収入から経費を引いて算定する。
給与所得の場合、経費がはっきりしないので、収入から「給与所得控除」という収入に応じた「みなし経費」を引いて所得を計算することになっている。

給与所得控除の最低額は「65万円」なので、年収65万円までは所得が「ゼロ」という計算になるのだ。

また、具体的な税額を計算するには、所得から「所得控除」を引いて「課税所得」を算定し、それに税率をかけるのだが、所得控除の中には「基礎控除」という誰にでも適用される所得控除があり、これが「38万円」なのだ。

つまり、65万円+38万円=103万円ということで、年収103万円までは課税所得がゼロとなるので、非課税ということ。
で、アルバイトなんかは、年間103万円までに抑えようとする人が多いというワケ。

ただ、年収103万円を超えても、超えた部分にのみ課税されるだけだから、別に稼いだから損をするという話ではない。

だが、「130万円の壁」はちょいと切実である。

年収が130万円を超えてしまうと、日本の社会保険制度においては、配偶者等の「扶養」から外れてしまうのだ。

となると、自分自身で国民年金や国民健康保険に加入せねばならず、新たに発生する保険料負担によって、年収130万円をちょっと超えた程度では、年収120万円よりも手取りが少ないという「逆転現象」が生じてしまうのである。
こうなると、「働いた分だけ損」という笑っていられない事態に陥る。

だから、パートで家計を助けている主婦の方々は、130万円の壁には相当神経質になっているはずだ。

と言うことで、以上は、給与を貰っている人の話だったが、自営業者の場合でも、税金の壁はいろいろとある。

まずは、予定納税。

前年の所得税額等を基準に算定した「予定納税基準額」が15万円以上である場合、予定納税基準額を3分割して、翌年の確定申告に先立って、当年中に想定される納税額の3分の2を「予め納税してしまおう」という訳の分からない制度だ。

先に納税したからと言って、特に割引等の恩典があるワケでもないし、経営におけるキャッシュフローの大切さからすると、自営業者にはツライ制度である。
もちろん、予定納税ラインのギリギリにいる場合は、そのラインを超えないようにするであろう。

次に、個人事業税。

前年の「事業所得」が290万円を超える場合、個人事業税という県税が課される。
我々のような業種の場合は、税率が5%とされている。

これは、所得税や住民税とは別に課税されるものなので、確かにキツイ。
当然、事業所得を290万円以内に抑えようとする自営業者も多かろう。

最後に、消費税。

消費税は、あくまでも顧客から「預かっている」という建前だが、一度入ったキャッシュが外に出ていくという点では、経営サイドから見ればとっても痛い出費である。

消費税には2つの壁がある。

1つ目の壁は、年収1000万円である。

消費税は、課税売上が1000万円までは「免税」とされており、消費税を納付する必要がないのだ。
昔は、この免税基準が3000万円だったので、先輩弁護士から、「10月頃になって、年間売上が3000万円を超えそうになったら、もう新たな仕事は受けない。」なんて言う話をよく聞いたものだ。

何しろ、消費税の場合は、1000万円(昔は3000万円)を超えた途端に、超えた額だけではなく、全ての収入に課税されてしまうワケだから、ギリギリのところでセーブしようというのはごくごく自然な発想だ。
これも、130万円の壁といっしょで、1000万円を超えるか否かのわずかな違いで、手取りの「逆転現象」が生じてしまうのだ。

もっとも、昔のように3000万円のラインならセーブしようとも思うだろうが、事務所経営を考えると1000万円でセーブしてしまうのは、ちょいと厳しい話だ。

で、2つ目の壁が、年収5000万円である。

消費税は、顧客から預かった消費税(売上)から取引先に支払った消費税(仕入)を引いた差額を納税するのが基本だが、課税売上が1000万円~5000万円の間は、「簡易課税」といって、業種に応じた「みなし仕入率」が適用される。
我々のような業種の場合は、50%の仕入率が適用されるので、結局、売上高の「2.5%」が納付する消費税となるワケだ。

年収5000万円を超えると、本来の計算方法で消費税を算定しないといけないのだが、計算が面倒なのと、多くの場合、消費税額がアップしてしまうので、このラインを超えるのも嫌う人が多いはずだ。

まあ、いずれにしても、せっかく「もっと稼げそうなんだけど、税負担がイヤだから、この辺でセーブしとこう。」なんていうのは、日本経済のためにはマイナスだよねえ。

何とか、みんなが気持ちよくバリバリ働ける税制っていうのを考えて欲しいっす!