192)ザイアンスの法則
- 2015年8月30日
- 経済・ビジネス
先日の火曜日(8月25日)、ナゴヤドームにて野球観戦をした。
観戦したのは、中日・巨人戦ではなく、何と「早慶戦」。
ナゴヤドームで早慶戦?って、私も不思議に思ったが、毎年、日本各地を巡回して開催している恒例行事なんだそうだ。
ちょっと調べてみたら、早慶戦は、通常のリーグ戦の他に、現役・OB混成チームによる「オール早慶野球戦」が毎年行われており、今年は、名古屋と福井が開催地とのこと。
名古屋は、4年に1回、開催のローテーションが回ってくるようで、今回は14回目。
ちなみに、2003年度には、早慶戦100周年を記念して、プロ野球選手のOBも出場したとのことだ。
私は、この「オール早慶野球戦」の存在すら全く知らなかったが、今回は、三重県で開業する早稲田出身の後輩弁護士に誘われるがままに参加したという次第。
三重弁護士会には、早稲田出身の弁護士は多くいるが、今回は、数名が参加した。
まあ、プロ野球でもないし、名古屋で早慶戦って言われても、両校のOB・OGくらいしか来ないだろうから、パラパラっとしか観客もいないんだろうねえ、なんて思っていたら、
えっ?こんなに人多いの?
という感じで、ホントにビックリした。
ナゴヤドームの3分の1くらいは、ビッシリと詰まっているような印象だったので、ざっと、1万人以上はいたのではなかろうか。
プレイボールは、午後6時半だったのだが、開場の4時半前には、すでに長蛇の列ができていたほどだ。
もちろん、早稲田・慶應に無関係の人は、まず来ないはずのイベント。
しかも、バリバリに忙しい平日のど真ん中(火曜日)。
平日に、仕事を早めに切り上げて、東海3県各地から、ナゴヤドームに集まる。
このパワーたるや、ホントに凄いの一言だ。
私も、後輩弁護士からの誘いが無ければ、まず行くことは無かったが、多くの人も、野球観戦に名を借りた「同窓会」を楽しみに来たのであろう。
ほんの一時だが、青春時代がフラッシュ・バックされるのは、気持ちのよいものだ。
まあ、ゲーム自体は、早稲田が0-2で負けてしまったのだが、野球部や応援部には大変申し訳ないが、結果なんて、どうでもいい感じだったよね(笑)。
早稲田にしろ、慶應にしろ、全国各地に同窓生が必ずいる。
しかも、各業界で大いに活躍している者も多い。
早慶戦に、これだけの人数が集まることからしても、同窓生たちの母校愛は、他大学とは異質で「特別」なものを感じる。
おそらく、各業界に入った際、早慶出身というだけで、同窓の先輩との人間関係は築きやすいはずだ。
社会人にとって、最も大切なことは人脈形成である。
早慶出身者は、そのネットワークの「広さ」と「強さ」の両面で、ホントに恵まれているんだなあと実感した。ありがたいことだ。
さて、早慶出身のごとく、人間というものは、同窓とか同郷とか、自身との「共通項」を見つけた途端に強い「好意」を感じるものだ。
共通項があるということは、お互いに共有している情報も多いはずであり、その共通情報を介して、その人のことをググッと「知った」ような気になるからだ。
人間は、何も知らない人には「警戒心」を抱くが、ちょっと知り始めた途端に「親近感」を抱くようになる。
このような人間の心理傾向を「ザイアンスの法則」という。
ザイアンスというのは、アメリカの心理学者の名で、心理学用語としては「単純接触効果」と呼ばれるものだ。
単純接触効果とは、「接する回数が増えるほど好意度や印象が高まる効果」のこと。
ザイアンスの法則は、下記のとおり。
1)人は、知らない人には攻撃的で、冷淡な対応をする。
2)人は、相手を知れば知るほど、好意をもつようになる。
3)人は、相手の人間的な側面を知ったとき、より強く好意をもつようになる。
この法則は、社会人としての人脈形成に大いに活用できよう。
人脈形成のためには、とにかく、ドンドン「会う」こと。
そして、できれば「私的」にも会ってみることだ。
欧米で「ホーム・パーティ」が盛んなのも、こんな理由からだろう。
もちろん、士業にとっては、ザイアンスの法則は「鉄則」ともいってよい。
士業の「営業」はホントに難しい。
訪問営業なんてしようものなら、「あの弁護士は、仕事が無いんだねえ。そんな人に頼むのは不安だから、止めとこう。」なんてことになるのがオチだ。
チラシ配布だって、似たようなものだろう。
とにかく「プッシュ営業」はダメってことだね。
我々の場合は、「プル営業」しかあり得ないってこと。
そもそも、法律事務所の広告を出したところで、「あっ!じゃあ、この弁護士に依頼してみよう!」なんていうことにはならない。
問題を抱えている人は、既に弁護士を「探している」のであり、広告を見たことで需要が喚起されるという因果関係自体が、ほぼ存在し得ない。
まあ、今でも大手事務所が出している過払金の広告だけは、「あれっ?私も、ひょっとして過払金を請求できるのかな?」という「気づき」を喚起する効果はあるのかも知れないけど。
では、なぜ、士業事務所が広告を出すのかと言えば、知ってか知らずか、この「ザイアンスの法則」を利用せんが為である。
人が、何らかの問題を抱え、専門家としての士業を探そうと思ったとき、自身に思いあたる人がいなければ、通常、とり得る手段は、下記の3つくらいだ。
a)知人に「紹介」してもらう。
b)士業団体や自治体が主催する「相談会」に参加してみる。
c)ネット等で「検索」してみる。
事務所広告が奏功するのは、このc)の場面だ。
多くの事務所名が掲載されている中から、まず目を引くのは、何と言っても、過去に見たことがある事務所名だ。
新聞等に頻繁に広告を出している事務所は、「あっ、この事務所名、聞いたことあるな。」ということで、それだけで、他の事務所よりも「既知感」があり、より「好意」を抱きやすいのである。
そうすると、その事務所のホーム・ページが検索されやすくなる。
そして、そのホーム・ページにも大量の情報が掲載されていれば、その事務所をよりたくさん「知った」ことになるので、その事務所に「より強い好意」を抱くというワケだ。
もちろん、ホーム・ページが薄っぺらいものであれば、逆効果となる。
だから、広告を出すことと、ホーム・ページを充実させることはワン・セットなのである。
キチンとしたホーム・ページは、「マーケティング・ツール」となるのだ。
ところで、当事務所は、BtoB主体の事務所なので、BtoCを狙った上記b)c)の受任ルートは想定していない。
従って、広告も一切出していない。
当事務所におけるホーム・ページの位置づけは、上記a)により「紹介」を受けた人が、「紹介を受けたけど、どんな事務所なのか、ちょっと不安だから調べておこう。」という時のための「プロフィール・ツール」である。
そして、このプロフィール・ツールとしてのホーム・ページが、実際にお会いした際に、また活きてくるのである。
特に、本ブログなどは、専門家としての知見だけでなく、私生活における些末な事も書くようにしている。
それが、私の「人間的側面」をちょこっとでも露出することになるというワケ。
士業の場合は、何といっても「紹介」による受任が王道である。
従って、紹介してもらうための人脈形成が肝要なのであり、そのための「種蒔き」こそが、士業の営業活動そのものということになる。
今回の早慶戦参加だって、立派な営業活動なんだよね。
そして、士業のような専門家選びは、結婚と同じで「相性」が大切である。
だから、どんなに若手で経験が浅くても、その若々しさや誠実さ、フットワークの軽さこそがいいんだ!という依頼者はたくさんいる。
ということで、「仕事がない」なんて悩んでいる暇があったら、今すぐ、人に会いに行くべし!