203)スリムが一番!
- 2016年1月17日
- 経済・ビジネス
健康のためには、スリムな体が一番。
私も、昨年の夏以来、「ロカボ」を実践しており、糖質摂取を「控え目」(ゼロではない)にするよう心掛けている。
お陰様で、体重にして、ピーク時の10%オフとなった。
今年は、さらなる10%オフを目指して、ゆっくり・ゆっくりダイエットしてみたいね。
さて、体のことなら、誰もが、メタボよりもスリムがいい!と言う。
ところが、いざ会社や組織のことになると、多くの経営者が、
「少しでも会社を大きくしたい!」
「大きければ大きいほど、素晴らしい!」
って言うんだよね。
でも、この「思い込み」こそが実に危ないのだ。
まあ、上場企業の場合なら、どうしても、企業としての「絶え間なき成長」が義務付けられるから、売上高を年々アップさせねばなるまい。
売上高を年々アップさせようと思えば、全国各地に新店舗を次々と出店していくのが最も手っ取り早い方法だし、資金が潤沢な大企業なら、それも可能だろう。
だが、経営資源に乏しい中小企業の場合、これを真似ると、途端に破綻してしまう。
中小企業の場合、十分な利益が出ているなら、売上高は「現状維持」で十分。
投資家に「成長」を期待されているワケではないんだからね。
勿論、現状維持というのは「無策」を意味しない。
経営に対して無策を貫けば、アッと言う間に「衰退」の一途をたどるのみ。
売上高を現状維持しようと思えば、常に「次の一手」を打ち続ける必要がある。
競合他社がドンドン「進化」する中、次の一手を打たなければ、
相対評価としては、その企業は「退化」したことになってしまうからね。
まさに、すいすい泳ぐ水鳥の「水面下の水かき」こそ、経営者の仕事なのだ。
経営とは、「5年先・10年先を見据えて、今、準備すること」と言われる。
この準備をシッカリすることで、初めて、5年先・10年先の「現状維持」が実現するんだよね。
ところが、多くの経営者が「現状維持」で満足せず、変な色気を出して、会社や組織の拡大を企図してしまい、結局、挫折してしまうのだ。
勿論、将来の「上場」を狙っているなら、話は別だけど。
この理は、我々のような士業の場合も同様。
近時では、全国展開するような大手法律事務所も登場しているが、
99.9%の法律事務所は、中小企業どころか、零細企業である。
従って、資金が潤沢な大手法律事務所の真似ごとは出来ないし、すべきでない。
もっと言えば、弁護士や事務員を1人増やすことにだって慎重になるべきなのだ。
では、何故、組織は大きくすべきではないのか?
理由は簡単、「損益分岐点」がドンドン高くなってしまうからだ。
損益分岐点というのは、「利益がゼロ」となる売上高のこと。
つまり、売上高が損益分岐点に届かなければ、「赤字」というワケ。
損益分岐点は、次の式で算出される。
固定費 ÷{1-(変動費÷売上高)}
固定費というのは、文字どおり、年間通じて変わらない経費。
変動費というのは、売上高の多寡に応じて変動する経費。
売上高-変動費=粗利とも言えるので、
1-(変動費÷売上高)=粗利率となる。
即ち、損益分岐点を低く抑えようと思えば、
1)固定費を低くすること
2)粗利率を高くすること
の2つしか選択肢は無い。
我々のような士業の場合、粗利率は、ほぼ100%なので、
固定費を低く抑える以外に、損益分岐点を低く抑える術はないということ。
士業は、労働集約型のビジネスである。
つまり、売上高の多寡と人的規模の大小とは、ほぼ「比例」する。
売上高をアップさせようと思えば、人を増やすしかない。
ところが、人を増やせば、固定費がアップする。
固定費がアップすれば、さらに売上高をアップさせる必要が生じる。
そうすると、また人を増やす必要に迫られる。
ついには、このサイクルから抜け出せなくなり、気付いた頃には、
とんでもない売上高を達成しなければ、組織の維持すらままならない!
という状況に追い込まれてしまうのだ。
今、当事務所は弁護士2名、事務員2名という体制である。
大変ありがたいことだが、たくさんの仕事を頂戴している。
正直申し上げて、弁護士1名、事務員1名を追加雇用すべきくらいの状態。
だが、私としては、今が踏ん張りどころで、
むしろ、少しずつ仕事量自体をスリム化したいと考えている。
普通であれば、
大きな需要があるんだったら、それに見合う供給体制を確立すればよいのでは?
と思われるかも知れないが、組織拡大ということに対しては、それくらい慎重になって丁度良いくらいなのだ。
今後は、今の組織規模で対応できる仕事量にセーブしつつ、
当事務所で対応できない仕事は、他の信頼できる弁護士にお願いする方針だ。
何故かと言えば、今の状態では、私自身がバリバリのプレイヤーに徹するしかなく、
経営者として、「5年先・10年先を見据えた準備活動」が出来ないから。
この準備活動をしない限り、現状維持すら実現しない。
だからと言って、組織を拡大してしまえば、売上高=現状維持ではダメなワケ。
中小企業の評価は、売上高の多寡ではない。
大切なのは、「労働生産性」である。
労働生産性というのは、「一人当たりの付加価値(粗利)」である。
法律事務所のような零細企業の場合、
たった一人の弁護士や事務員が増えるだけで、労働生産性は急激に落ち込む。
そうすると、増やす前の労働生産性にまで回復しようと思えば、
増加した固定費よりも更に多くの売上高を実現しなくてはならなくなる。
事務所全体の目標売上高が、2000万円なのと1億円なのとでは、
根本的に経営戦略は異なってくるだろう。
できる限り、組織は小さく保ち、「分相応」な経営を心掛けるべきなのだ。
今年は、体も仕事量もスリム化して、
心身も経営も、ともに「健康」を全うしたいものだねえ。