224)税金との付き合い方
- 2016年11月12日
- 経済・ビジネス
先日、弁護士国民年金基金の会合があり、出席してきた。
その中で、現在の同基金への「加入状況」が示された。
弁護士国民年金基金は、20~60歳の弁護士が加入できる。
但し、企業や弁護士法人に所属している弁護士は、
厚生年金に加入できるので、国民年金基金には加入できない。
で、国民年金基金に加入可能な弁護士は、本年10月6日現在、
全国では2万2926名、
三重県では128名、なんだそうだ。
うち、同基金への加入者は、
全国では7664名(加入率33.4%)、
三重県では43名(加入率33.6%)、にとどまる。
う~む。
この加入率の低さは、一体なんなんだろうか?
確かに、近時の若手弁護士の増加により、
「今、食べるのに精一杯で、老後の心配なんかしてらんねーよ」
ということなんだろうが、
いやいや、弁護士のような不安定な職業だからこそ、
「老後の備え」はシッカリしとかにゃいかんのではなかろうか?
とは言え、払いたくても払えないのであれば、
まずは、払えるようになるまで、仕事をガンガン頑張るしかない。
だが、十分払える余裕があるのに、加入していない人は、絶対に「損」だ。
国民年金基金は、税法上、圧倒的に優遇されているからね。
何と言っても、自営業者にとっての「最大のコスト」は「税金」だ。
税金を支払わない限り、生活費が捻出できないという仕組みなので。
よって、税金と如何に上手に付き合うか、という視点が肝要である。
ポイントは、3つくらいあるだろうか。
1つ目は、「資金繰り」だ。
会社員ならば、税金は、会社が勝手に「源泉徴収」してくれる。
従って、生活費は、実際に受け取る「手取り収入」の中で遣り繰りすれば足り
る。これは、実に簡単だ。
だが、自営業者の場合、
一旦、手にした「収入」から「経費」を引き、
さらに「税金」が引かれて、残ったものが「生活費」となる。
ところが、このような「優先順」とは違い、実際の「支出順」は、
「経費」、「生活費」、最後に「税金」となる。
そう、税金が課されるのは、生活費を支払った「翌年」なんだね。
これは、相当に注意深く家計を遣り繰りしないと、大失敗する。
自営業者のよくやる失敗例が、無計画に生活費を支出して、
翌年の税金が支払えない!というヤツ。
税金を支払うために借金でもしたら、それこそバカみたいだ。
言ってみれば、今ある預金残高のうち、
「〇〇%は税務署のもの」という感覚がないとダメなんだね。
2つ目は、「ムダな節税をしない」ことだ。
税金は、誰だって、支払いたくはない。
でも、「収入-経費=所得、所得×〇〇%=税金」
という関係である以上、
世の中にある「節税方法」は、「経費組入れ」に過ぎない。
経費組入れというのは、実際に「お金が出ていく」話だ。
収入が同じという前提ならば、
生活費を増やす方法は、「経費カット」しかない。
だから、税金を支払いたくないという理由だけで、
必要でもない経費を支出するのは、愚の骨頂。
経費をカットすれば、納税額は増えるが、生活費も増える。
つまり、生活を豊かにしようと思えば、
税金をドンドン支払うしかない、ということなんだよね。
3つ目は、「特典を活用する」ことだ。
前述のとおり、生活費を増やすには、納税額を増やす、
というのが大原則なのだが、
自営業者には、納税額を減らして、生活費を増やす、
という何とも有り難い「特典」がいくつかある。
せっかく用意されている以上、この特典を活用しない手はない。
パッと思い浮かぶ特典としては、4つくらいあるだろうか。
1)合法的ウラ金
生活費となるのは、基本的に「課税された後の残金」である。
ところが、「課税されない合法的ウラ金」がいくつかある。
確定申告を「青色申告」でやれば、
「青色申告特別控除」として「65万円」が、
「青色事業専従者給与」として配偶者等の「給与全額」が、
ともに「非課税」となる。
もちろん、配偶者等は配偶者等で、給与所得として課税されるが、
「給与所得控除」分と「基礎控除」分が完全に非課税となるし、
所得を分散させた方が、「税率」を相当抑えることができる。
例えば、課税所得が800万円ある人の場合、所得税の税率は23%だ。
ところが、配偶者に300万円の給与を支払って、自分の所得を500万円に
すると、
300万円の給与に対する給与所得控除は108万円、
基礎控除は38万円なので、146万円は、まるまる「ウラ金」となる。
そして、課税所得154万円の税率は5%に過ぎないし、
500万円の税率も20%なので、相当に税金をカットできるというワケ。
2)官製クーポン券
自営業の場合、家計費の一部を「経費化」することが出来る。
言ってみれば、「官製クーポン券」のようなものだ。
自宅兼事業所の場合、この効果は絶大だ。
例えば、2階建ての持ち家のうち、1階を事業所・2階を居宅とした場合、
住居費の半分を経費化できる。
住宅ローンを組んでいれば、利子の半分が経費となるし、
取得費の半分を「減価償却」とすることが出来る。
さらには、水道光熱費の半分も経費化できる。
自動車も同様だ。
仕事に8割使用しているというなら、8割分が経費化できる。
飲食費なんかも、そのメンバーによっては、
「会議費」や「接待交際費」として経費化できる余地がある。
つまり、支払った金額のうち、
「税率分」だけ「ディスカウント」されたのと同じということだ。
3)超高利回り債券
そう、今回の主題は、これ。
国民年金基金は、これに当たるのだ。
国民年金基金の「掛金」は「全額が所得控除」となる。
これは、実に大きい。
つまり、実際の掛金よりも「ディスカウント」した金額しか払う必要がない。
にも関わらず、将来、手に出来るであろう金額は大きい。
例えば、35歳男性の場合で「終身年金」を選択した場合、
1口目の掛金は8880円で、貰える年金額が月額1万5000円、
2口目以降の掛金が2960円で、貰える年金額が月額5000円だ。
所得税と住民税の合計税率が30%の人だと、実質的な掛金は、
1口目の掛金は6216円、
2口目以降の掛金は2072円、に過ぎない。
これほど「超高利回り」な金融商品は、民間では絶対にあり得ない。
自営業者にとっては、老後の不安は絶大だ。
特に、会社員のような厚生年金や退職金が無いのは、圧倒的不利。
国民年金基金で厚生年金に少しでも近づき、
同じく、掛金が全額所得控除となる「小規模企業共済」に加入して、
自らの退職金代わりに活用すべきであろう。
自営業は、いつまで経っても安定なんかしやしない。
生活防衛資金(必要売上高の3~6ヶ月分)を貯蓄したならば、
サッサと国民年金基金と小規模企業共済に加入すべきだね。
4)無料商品券
最後は、何と言っても、「ふるさと納税」だ。
先日、我が家でも、本年分の「納税」を終えたばかり。
何と言っても「無料」だし、家族の「楽しみ」にもなるし、
これを活用しない手はなかろう。
まあ、税収が減ってしまう住居地には申し訳ないっすけど。