沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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259)散髪屋に学ぶ

今年も、もう残り数日。
当事務所は、今年、開設5周年を迎え、
事務所体制も、弁護士3名・事務員3名へと移行し、
お陰様で、極めて順調に経営を維持することができた。

ホントに、ありがたい1年であった。
そして、来年以降も、引き続き、今の「感じ」を維持したいところ。

ところで、多くの方から、
「事務所をドンドン大きくしていくのですか?」
「そろそろ、今の場所では狭いでしょう?」
などと聞かれることがあるのだが、
私自身は、これ以上、事務所を大きくすることも、
事務所を移転することも、全く念頭には無い。

とにかく、今がベスト!という心境である。

以前にも述べたが、経営者の使命は、
「企業を潰さない」
この1点に尽きる。

事務所を大きくするということは、
ズバリ、「損益分岐点」が高くなることであり、
これが一番「危ない!」のである。

我々のような「労働集約型」ビジネスは、
まずは、「スモールビジネス」を貫徹することが肝要だ。

経営学の教科書でよく挙げられる事例として、
「散髪屋が潰れないワケ」
というものがある。

皆さんは、どう思われるだろうか。
実は、散髪屋というのは、
最も成功しているスモールビジネスの1つなのだ。

散髪屋が潰れない一方で、
美容室は、激烈な競争で、ドンドン廃業に追い込まれている。

この違いは、何なんだろうか?

散髪屋が潰れない理由は3つある。
1)1つ目は、「固定客が多い」こと。
2)2つ目は、「損益分岐点が低い」こと。
3)3つ目は、「現金商売である」こと。

企業が潰れる理由は、
1)そもそもの「売上が無い」
2)売上があっても「利益が無い」
3)利益があっても「現金が無い」
という3つのパターンしかない。

散髪屋は、上記3つの理由によって、
企業が潰れる3つのパターンを全てクリアーしているのだ。

まずは、「固定客が多い」ということ。
ここが、美容室との決定的違いである。

美容師法で規定される「美容」とは、
「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、
容姿を<美しくする>こと」とされる。

一方、理容師法で規定される「理容」とは、
「頭髪の刈込み、顔そり等の方法により、
容姿を<整える>こと」とされる。

つまり、美容室の顧客というのは、
何となく「自分の感性に合わない」と思えば、
あるいは、もっと腕のいい美容室が見つかれば、
次々と、行きつけの店をチェンジしていく傾向にある。
つまり、たとえ遠くの店でも、わざわざ足を運ぶのだ。
だからこそ、激烈な競争が生まれるというワケ。

一方、散髪屋の顧客というのは、
容姿にそこまでの関心が無い顧客が多いので、
メチャメチャ悪くない限り、まず「近場の店」で済ます。
従って、一旦、行きつけの店を見つければ、
よほどの重大事が発生しない限り、店をチェンジしない。
かく言う私自身も、そうだしね。
結局、他店のテリトリーを荒らさないので、競争が無い。

で、固定客をガッチリ掴まえている散髪屋は、
売上高自体は低くても、極めて「安定経営」なのだ。

次に、「損益分岐点が低い」ということ。

損益分岐点=固定費÷粗利率なので、
「固定費」を低く抑え、
「粗利率」を高めていけば、
損益分岐点を低く抑えることができるというワケ。

散髪屋の固定費といえば、人件費と家賃くらい。
自宅兼店舗で、夫婦で経営しているパターンも多く、
そうなれば、人件費と家賃も実質ゼロに近づいていく。

また、変動費もほとんど無いので、
粗利率も100%に近い状態を維持できるはずだ。

結果、損益分岐点は相当に低くなり、
わずかな固定客による売上だけで、十分回っていくのだ。

最後に、「現金商売である」ということ。
世の中に「黒字倒産」という言葉があるとおり、
たとえ、利益が十分に出ていても、
手元に現金が無ければ、企業はアッと言う間に潰れる。

その点、散髪屋で「掛け」払いする人はいない。
仕入れもそんなに頻繁には発生しないので、
散髪屋のキャッシュフローは、極めて良好である。

結局、夫婦2人だけで経営する散髪屋の場合、
わずかばかりの地元の固定客さえ確保すれば、
十分にやっていけるというワケだ。

ということで、我々のような士業も、
こういうスモールビジネスの手本を見倣う必要がある。

損益分岐点を低く抑えるのは絶対条件だし、
できれば「固定客」を確保したいところ。

弁護士にとっての固定客と言えば、
顧問先や仕事を紹介してくれる関係機関ということだろう。
こういった「パイプ」をいかに作り上げていくか。

そして、「キャッシュフロー」の観点も大事。
弁護士の報酬は、「最初」と「最後」にしか発生しない。
最初に「着手金」を頂戴し、
最後に「成功報酬」(成功した場合のみ)を頂戴する。

つまり、「中間」では一切お金を貰えないし、
最後にだって、1円も貰えない場合もあり得るので、
コンスタントに新規案件を受任し続けていかないと、
途端に「金欠」になるという仕組みなのである。

だからこそ、顧問契約による顧問料収入も大切なのだし、
着手金・報酬制をやめて、いっそのこと、
「タイムチャージ制」にしよう!という動きも出てくるワケ。

いずれにせよ、散髪屋のビジネスモデルは、学ぶことが多い。

当事務所も、上記のごとく、いろんなことを考えながら、
今の「感じ」を大切にして、来年以降も邁進したいところ。

とにもかくにも、1年間、ありがとうございました!!