288)フリーランスのFP術②
- 2020年4月11日
- 経済・ビジネス
今回のテーマは、
「生活防衛資金」と「保険」。
フリーランスの特徴は、
とにかく「収入が不安定」ということ。
従って、今回のような事態がなくても、
いつ収入が途絶えるかは、全く分からない。
そこで、突然の減収に備えて、
「生活防衛資金」は、万全に準備したい。
では、いくらぐらい貯めればいいのか?
この目安は、論者によってバラバラ。
まあ、何が起こるか分からないので、
ハッキリ言って正解は無いのだろうが、
私自身は、以下の3つの基準を設定し、
いずれの基準もクリアーできる金額を、
「生活防衛資金」として備えている。
・必要とする売上高の3ヶ月分
・必要とする事業所得の半年分
・必要とする手取り収入の1年分
フリーランスの場合、
税金は「後追い」でのしかかってくるので、
そもそも「手取り収入」が分かりづらい。
私は、初めての確定申告以来、
ずっと20数年に渡り、確定申告ごとに、
自身の手取り収入を記録している。
手取り収入の計算は簡単で、
課税所得に「非支出経費」を加算して、
「所得税・住民税」を減算するだけ。
この手取り収入をチェックすれば、
自身の家計にどの程度の金額が必要か、
ということが「見える化」できてくる。
で、フリーランスの道を選択したならば、
まずは、死にもの狂いで、
「生活防衛資金」を貯めることである。
そして、この金額だけは、平時は死守する。
昨年の私の場合は、
大幅に「手取り収入」が減少したため、
当然のごとく、家計は赤字となった。
結果、生活防衛資金も基準額を下回り、
私も、本気で「ピンチ」と感じたワケ。
今年に入り、何とか基準額は回復したが、
フリーランスの危うさを実感した次第だ。
さて、フリーランスは自由である代わりに、
「全ては自己責任」ということになる。
そこで、特に気を付けるべきは、
「賠償リスク」と「死病リスク」である。
会社員であれば、顧客への賠償責任は、
基本的には会社が全て負ってくれるが、
フリーランスでは、そうはいかない。
従って、フリーランスを選択すると同時に、
事業者用の賠償責任保険には加入すべし。
賠償額は、相手方の事情に左右されるので、
どこまで賠償額が膨らむかは予想できない。
まさに、賠償額が「青天井」なワケだから、
賠償責任保険は、決してケチることなく、
十分な保険金額を設定すべきが当然である。
保険というのは、要するに、
「負の宝くじ」と表現してもよい。
いざ、そのような事態が発生したら、
「家計が破綻する!!」
と想定されるのであれば、
シッカリと加入すべきものである。
そして、保険事故が発生しなければ、
「やれやれ、ラッキーだった」
と安堵するだけのことである。
どうなれば「家計が破綻する」かは、
各人によって事情が全く違うので、
これをシッカリと見極めるべきである。
当事務所は、保険会社の顧問をしており、
多数の交通事故案件を扱っている。
その中で、痛烈に実感することは、
「なんと無保険の人が多いことか!」
ということである。
青天井に背負うかも知れない賠償金なのに、
何らの備えもせずに、
のうのうと自動車を運転している人々。
その神経自体、全く理解できないのだが、
それが世の中の実態なのである。
あるデータによれば、登録車両の
「7台に1台は無保険」
という恐ろしい(!)現状である。
無保険車両がこれだけ多いということは、
加害者が無保険車両である確率も高い。
当然、相手方が無保険なので、
賠償金が回収できないリスクは多分にある。
となると、そのリスクにも備えるべきだ。
ところが、高級車に乗っているのに、
車両保険にも加入してしない人が多い。
これもビックリである。
高額になりがちな修理費等を、
自腹で補填するのが苦しいと感じるなら、
車両保険にはキチンと加入すべきだね。
当事務所にも、車両保険に加入せず、
無保険の相手方から賠償金を回収してくれ!
と泣きついてくる方がいらっしゃるが、
無保険の人というのは、要するに、
「家計が苦しい」か
「モラルが低い」か
のいずれかなのであり、回収は極めて困難。
そして、我々がそのように説明すると、
「何て弱腰なんだ!もういい!」
などと激怒して、事務所を出て行く人もいる。
だが、激怒する前に、
修理費等を自腹で払うのが大変なら、
何故、車両保険に入らなかったのか?
という基本的なことを自問すべきなんだよね。
また、生命保険も、考え方は全く同様だ。
自分が死病に至ったときに、
本当に「家計が破綻する」のか?
ということを徹底的に自問すべきである。
まず、扶養すべき者が全くいないなら、
死亡保険は全く不要である。
医療保険や休業保険についても、
どの程度の「困り具合」になるのかを想像して、
慎重に加入すべきであろう。
そして、基本的かつ重要なことは、
保険は「破滅的なリスクに備える」もので、
保険で貯蓄も兼ねようと思ってはいけない!
ということである。
保険(負の宝くじ)と貯蓄(元金保証)とは、
絶対に両立しないということだ。
保険商品は、民間会社が運営する以上、
必ず、保険会社の「利益」が搾取されている。
それでも、家計破綻を招きかねない一大事には、
保険を利用して備えるべき価値は十分にある。
しかしながら、保険商品で貯蓄するというのは、
理論的にも、あり得ない不合理な行動である。
保険料のうち、保険会社の利益や経費になるのが、
「付加保険料」という部分で、
残りの保険金に充当される部分が、
「純保険料」というもの。
この付加保険料がどのくらいの割合かは、
全く以て「ブラックボックス」である。
このあたりは、業界のタブーを打ち破る形で、
ライフネット生命が内訳を公表しているが、
同社は、人件費が安いネット保険なので、
そもそも、この付加保険料が安い!のである。
それでも、その付加保険料は20~40%程度。
大手の保険会社に至っては、
もっともっと付加保険料が高いはずで、
噂によれば、70%(!)の商品もあるらしい。
如何に、保険商品を利用した貯蓄というものが、
「理論的に成り立つはずがない!」
ことが、この数字を見ただけでも分かるはず。
ということで、
保険は保険、貯蓄は貯蓄として、
両者を峻別して、保険は、
家計破綻に備えて「掛け捨てる」
ということをシッカリ肝に銘じて加入すべし!
ではでは、本稿はここまで。