37)がんばれニッポン!!
- 2010年4月27日
- 経済・ビジネス
事業仕分けの「第2弾」が話題になっている。
国民に「バカバカしい血税の使われ方」を明示し、ある程度「国民を覚醒させた」という点では、一連の事業仕分けの意義は極めて大きいだろう。
だが、事業仕分けがな~んとも虚しくなるような「ビックリ仰天」の数字が発表されているのをご存知だろうか。
財務省の発表によれば、2010年度末(2011年3月)、日本の累積赤字は973兆円に達する見込みとのこと。
つまり、国債などの「国の借金」が、間もなく「1000兆円」(!!)に達するということなのだ。
どういう訳だか、あまりマスコミで大々的には報じられていない気がするが、これは大変なことだ。
2010年度の一般会計予算はというと、次のとおり。
歳 入 税 収 37兆円
その他 11兆円
公債金 44兆円 合 計 92兆円
歳 出 国 債 21兆円
地 方 17兆円
一 般 54兆円 合 計 92兆円
ビックリするのは、税収が「借金返済と地方交付税」でキレイに吹っ飛んでしまうという点。
家計に当てはめれば、毎月の給料が「借金返済と子供への仕送り」で見事に消えてしまうということであり、毎月毎月、新規の借金を「永久に」重ね続けなければ生きていくことさえ出来ない、という異常な事態だ。
この数字が極めて深刻なのは、生活費(一般歳出)をどれほど節約しても、給料(税収)だけでは全く生活が成り立たないということ。
事業仕分けはモチロン大切だが、この税収の落ち込みをどうにかしないと、本当に日本は破綻してしまう。
1000兆円の借金というのは、例えるならば、「年収370万円の家庭が1億円の借金をしている」ということであり、どの弁護士の所に相談に行っても、答えは「自己破産」以外にはあり得ない。
どんな優秀な経営コンサルタントやファイナンシャルプランナーでも、この家計を建て直すことは容易ではない。いや、普通に考えれば不可能だ。
年収1000万円でも1億円の借金ともなるとビビってしまうはず。
日本が「破綻」するということについては、極端な楽観論もあれば、極端な悲観論もある。
まず、楽観論としては、「日本の場合、国債を買っているのは国内法人ばかりだから、国の中でお金が回っているだけに過ぎない。だから、どれだけ借金が膨らんでも何ら問題ない。」というもの。
だが、これは、とんでもない話。
例えば、銀行は大量に国債を買っているが、その原資は当然ながら銀行預金だ。銀行預金が「国有財産」だというなら確かに何ら問題はないが、預金はあくまでも「国民の私有財産」に決まっている。
次に、悲観論としては、国が破綻すれば、「国民全員が借金を返済せねばならなくなる。」とか「銀行預金が封鎖(凍結した上で超高率の課税)されたり、没収されたりしてしまう。」というもの。
だが、これもあり得ない話。
日本は対外債務は少ないので、外国に対して借金を返済する必要はないから、国民全員が借金を返済する必要などない。
また、国民の人気取りにしか関心のない政治家が、国民の財産を実質的に没収するなどという決断をするはずもないし、そもそも、憲法が保障した「財産権」の明白な侵害だから、現代の裁判所なら、当然に「違憲判断」を示すはずだ。
では、国が破綻するとはどういうことか。
藤巻健史氏の「日本破綻」(講談社刊)という本によれば、近い将来、日本の信用力が失墜して国債が「未達」(発行した国債が全て売り切れないこと)になった場合、やむなく日本銀行が新たに紙幣を刷って「国債を引き受け」ざるを得なくなるそうだ。
そうなると、国内に大量の紙幣がばらまかれて、「ハイパーインフレ」が発生してしまうのだ。
つまり、「国の破綻」=「ハイパーインフレ」ということらしい。
要は、想像できないくらいの超インフレとなり、日本の国債は「紙くず」となり、円建ての預金は実質的に「無価値」になってしまう。
汗水流して、何年もかけて貯めた100万円が、ある日突然「ゴミ」同然になってしまうとしたら…。想像しただけでもゾッとするであろう。
ハイパーインフレになってもダメージが少ない人というのは、不動産や金(ゴールド)などの現物資産を持っている人、外貨建て資産を持っている人、借金がある人などだ。借金もゴミ同然になるからだ。
そう、借金があると言えば、日本という国がまさに最大の借金王であり、ハイパーインフレによって日本の借金はキレイに無くなってしまうということ。
そして、ハイパーインフレによって、日本は極端な「円安」に転じるので、借金も無くなった日本は、ここから凄まじい勢いで経済復興する、というのが経済理論的な筋書きらしい。
いい例が、最近の韓国である。
言ってみれば、これが市場原理を利用した合法的(合憲的)な「借金棒引き」政策ということにもなる。
これなら、裁判所も「違憲」とは判断できまい。
それにしても、何で、日本はこうなってしまったのだろう。
1990年からの20年間で、GDPが成長していない先進国は日本だけだ。
ドイツもフランスも2倍になっているし、アメリカやイギリスは2.5倍にもなっている。
今のままだと、日本は2016年には韓国に、2017年には台湾に「1人当たりGDP」で追い抜かれてしまうのだそうだ。
藤巻氏をはじめ、多くのエコノミストが言うには、日本が立ち直るには「経済成長」しかあり得ない。
そして、経済成長するための必要不可欠の条件は、何と言っても「円安」である。中国が、世界中から「人民元の切り上げ」を要請されても、頑なに切り上げに応じないのは、もうしばらく経済成長を続けたいからに他ならない。
藤巻氏によれば、現在の「円」は、日本の国力以上に「高すぎる」そうで、まずは、円を国力相応のレベルまで「下げる」必要があるとのこと。
自国の通貨が安くなるということは、外国に対して商品をより安く売れるということであり、世界市場での「価格競争力」が生まれる。
日本は、経済政策といえば、「財政政策」(公共事業などに国がお金を出すこと)か「金融政策」(日銀がお金の流通量を調整すること)しか選択してこなかったが、ことごとく失敗に終わってきた。
今、最も有効な経済政策は、「為替政策」だというのが藤巻氏の主張だ。
私は素人なので、それが経済理論上、本当に正しいことなのかは分析できないが、実に説得力のある見解だった。興味のある方は、是非ご一読を。
ところで、日本だけが経済成長できない理由として、「消費よりも貯蓄を好む国民性」というものも指摘できる。
日本の「消費性向」(可処分所得のうち消費に向かう割合)は70%程度だが、アメリカはリーマン・ショックを経験した今でも90%を超えている。
不況になれば、日本人は、より一層消費を控え、将来のためにどんどん貯蓄する。だが、経済理論的に言えば、これは完全に「逆効果」なのだ。
消費をせずに貯蓄を続けていくことで経済がどんどん悪化し、ついには日本の財政が破綻し、せっかくコツコツ貯めた預金が、ある日突然「ゴミ」になってしまうのだ。
汗水たらして貯蓄し続けたことで、貯蓄が「ゴミ」になる可能性を増大させているという、何ともやりきれない話だ。
不況の時にこそ、どんどん消費や投資にお金を回さねばならない。
つまり、心理的に抵抗のあることを敢えてしなければならないのだ。ここが経済の本当に難しいところである。
どんなに不況でも、日本人から見れば「脳天気」過ぎるほど消費を続けるアメリカ人は、資本主義経済の原理からすれば、極めて「優等生」ということになる。
アメリカは、あれだけ世界を騒がせておきながら、2010年中に経済復興するとの見方が強いそうで、アメリカの「したたかさ」には本当に感心する。
アメリカ人は、アメリカという国が大好きで、アメリカが常にトップを走り続けるべきであるという訳の分からない信念と自信から、国民全員が一丸となってアメリカという国そのものを盛り上げている気がする。
言ってみれば、国民全員が「株式会社アメリカ」の株主になりきっており、「会社が儲かることこそが株主にとっての最大の利益である」というコンセンサスがあるのだろう。この点は、日本人も大いに見習うべきである。
アメリカは「ず~っと世界一であり続ける」という根拠なき自信があるからこそ、「未来は永遠に明るい」ということにもなり、どんどん消費しまくるのかも知れない。
どれほど「不況の時こそ消費を」と言ったところで、日本人の「貯蓄好き」はそう簡単には変わらないだろう。
前にも取り上げたとおり、最近の若者は「嫌消費(賢消費)世代」とまで言われているし…。
でも、彼らだって、経済成長がずっと続いて、「明るい未来」が確信できれば、少しは消費をし始めるかも知れないのだ。
まあ、とにかく今は、外国人にどんどん消費してもらうしかない。
そのためには、前提条件として、どうしても「円安」にする必要がある。
円安になれば、トヨタなどの輸出産業は一気に回復するし、外資が日本に投資するようにもなる。さらには、外国からの観光客も来やすくなり、日本国内でどんどん消費してくれるというわけだ。それに、日本人だって、海外旅行が大変になるから国内旅行にシフトしていくだろう。
どれだけ支出を切り詰めても生活が成り立たないというのが今の日本である。
税収をどれだけ上げていくか、つまり、日本という国自体をどれだけ豊かにしていくかを国民全体で考えねばならない。
日本には、たくさんの優秀なエコノミストがいるのだろうから、何とか早期に実現可能な「円安政策」を実践して欲しいものだ。
ちなみに、国民1人1人が出来る「円安誘導行動」としては、「貯蓄や投資をする際、積極的に、外貨預金や外貨建て資産に投じること。」なんだそうだ。
円建て資産を持ちすぎないことは、ハイパーインフレ対策にもなるし。
長引く不況のせいで、資本主義自体が崩壊したという議論もあるが、日本だけが不況から脱出できていないという異常な事態を考えると、むしろ、日本だけが本当の資本主義が根付いていないという見方が正しいようだ。
エコノミストの飯田泰之氏が「経済成長って何で必要なんだろう?」(光文社刊)という本の中で面白いことを言っている。
資本主義社会においては、何もしなくても、勝手に「年2%ずつ効率化」されてしまうのだそうだ。
すご~く大雑把に言えば、「去年は100個作れていたのなら、今年は102個作れるようになる。」とか「去年は100時間を要した作業は、今年は98時間で出来るようになる。」ということ。
大いに個人差がある話だが、社会全体で考えるとおよそ2%らしい。
もちろん、IT革命のような「もの凄い技術革新」があれば、2%どころではなく、もっともっと効率化されるのは当然なのだが、「同じ仕事を同じ方法で」やるだけでも、「学習効果」などによって自然に効率化されてしまうということだ。これは、我々の経験則とも合致するところだろう。
このことは、何を意味するかというと、消費が毎年同じ水準で、経済成長がゼロならば、毎年2%ずつの労働力が不要になるということなのだ。
つまり、毎年2%ずつの失業者が出るという計算になる。
当然、失業者が出れば、その手当にさらなる公的コストを要する。
即ち、資本主義社会においては、「年2%の経済成長をして、ようやく現状維持」ということらしいのだ。
そして、経済理論上は、
GDPの成長率 > 国債の利率
という式が成り立たないと、国債は永久に減らないのだそうだ。
現在の国債の利率は1%台なので、この点からも、経済成長率2%は必達の数字ということらしい。
日本が資本主義を選択した以上、経済成長は続けねばならない。
もちろん、人口はどんどん減少するので、経済成長=1人当たりGDPの向上ということではあるが。
アメリカを批判するのは簡単だが、それでもアメリカが世界経済を引っ張っていることは厳然たる事実であり、「株式会社アメリカ」の経営戦略は大いに見習う点があるはずだ。
我々日本人も、「株式会社ニッポン」を何としてでも盛り立てねばならない。
オリンピックやワールドカップのときだけの「にわか愛国心」ではなく、常日頃から
<がんばれニッポン!!>
という気持ちを持つ必要がどうもありそうだ。