沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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142)自転車教育を!

 今月1日(平成25年12月1日)、改正道路交通法が施行された。

 特筆すべき点は、ニュースでも報道されているとおり、自転車が「路側帯」
を通行する場合にも「左側通行」を徹底した上で、違反者には罰則も適用する
とした点だ。

 道路交通法では、自転車は「軽車両」に該当するので、当然ながら、車道を
走る際には「左側通行」となる。
 ところが、これまでの道路交通法17条の2第1項では、「軽車両は、路側
帯を通行することができる。」と定めるのみで、車道の右側だろうが左側だろ
うが、とにかく「路側帯なら通行OK」だったのだ。

 でも、この規定のままだと、右側の路側帯を通行する自転車が駐車車両や歩
行者などを避けようとすると、路側帯からはみ出してしまい、対向する自動車
と正面衝突するリスクが高まる。
 自動車を運転する人なら、一度や二度は、自転車の危険な走行態様にヒヤッ
としたことがあるはずだ。

 そこで、今回の改正道路交通法17条の2第1項では、「軽車両は、道路の
左側部分に設けられた路側帯を通行することができる。」とし、違反者には、
「3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金」を科すこととしたのである。

 おそらく、大多数の国民は、ニュースを聞いて初めて「へえ~」と思ったに
違いない。
 そのくらい、自転車を乗る人達の「交通ルールへの関心」は低いし、街中で
見かける自転車の走行態様は、まあ、ムチャクチャである。

 ちなみに、道路交通法に規定されている自転車の走行ルールとしては、ざっ
と次のようなものがある。

1)歩車道の区別のある道路では、車道を通行「しなければならない」(17条
1項)。

2)車道の中央から左側部分の左側端に寄って通行「しなければならない」(1
7条4項)。

3)車道の左側の路側帯を通行することが「できる」(17条の2第1項)。

4)他の軽車両と並進「してはならない」(19条)。

5)自転車道が設けられている道路では、その自転車道を通行「しなければなら
ない」(63条の3)。

6)次の場合には、歩道を通行することが「できる」(63条の4第1項)。
・道路標識や道路標示によって歩道通行可となっているとき
・運転者が児童、幼児、70歳以上の者、身体障害者であるとき
・通行の安全を確保するため、やむを得ないと認められるとき

7)歩道を通行するときは、次の事項を守ら「ねばならない」(63条の4第
2項)。
・自転車通行指定部分があるときは、その部分を徐行して進行
・指定部分がないときは、歩道の中央から車道寄りの部分を徐行して進行
・歩行者の通行を妨げる場合は、一時停止

 う~む、どうだろう……。
 自転車に関しては、街中いたる所で、違法走行だらけでは?

 最近、車道を堂々と右側走行して逆走して来る自転車とよく遭遇する。
 本当に、ヒヤッとすることが多い。
 自転車も相当の速度が出ているから、正面衝突でもしたら、自転車運転者の
命はアッという間に消え失せてしまうだろう。

 交通事故は、被害者にとっても、加害者にとっても、ホントに悲劇以外の何
物でもない。
 特に、自転車は、加害者にも被害者にもなり得る極めて危険な乗り物である
のに、老若男女が「何の知識も技能もなく」手軽に乗れてしまうという恐ろし
さがある。

 自転車を運転する人は、歩行者との関係では、自らが「凶器となり得る」と
いう自覚が必要だし、自動車との関係では、自らの運転が「自殺行為となり得
る」という自覚が必要だ。

 
 先日、ある会合で、「自転車も歩行者と同じように『右側走行』にした方が
いいんじゃないの?その方が自動車の動きが見やすいし。」という意見を言う
人がいた。

 いやいや。
 自転車と歩行者では、そもそもスピードが違い過ぎるでしょ。
 自転車が右側走行なんてしたら、あらゆる所で自動車との正面衝突・出合い
頭衝突の危険性が飛躍的に高まってしまうよねえ。

 それこそ、自転車を運転すること自体に「命がけ」の決断が必要になるとい
うもの。

 ちなみに、歩行者は、車道を歩く際には、右側通行となっている。
 理由は、歩行者から自動車の動きが見えた方が安全だからだ。

 この点、歩道でも右側通行が原則だと勘違いしている人もいるが、歩道はど
のように歩いても自由だ。
 いつだったか、歩行者同士がぶつかって、「歩行者は右側通行だろ!だか
ら、今の学校教育はダメなんだ!」なんて怒鳴っている老人を見かけたことが
あるが、その老人こそ「何を勘違いしているの?」という話だ。

 歩行者の通行区分を規定しているのは次の条項。

(道路交通法10条1項)
 歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次
条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、道路の
右側端に寄って通行しなければならない。
 ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ない
ときは、道路の左側端に寄って通行することができる。

 読み方によっては「あれ?歩道は右側通行なんじゃねえの?」とも思ってし
まうが、歩道や十分な幅の路側帯がない道路(車道)では、歩行者は右側通行
しなさいという意味だ。
 逆に言うと、歩道や十分な幅の路側帯があるときは、歩道や路側帯を通りな
さいということ。

 なお、歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯というのは、1メートル以
上の幅員と解釈されている。

 まあ、だけど、小学生から老人まで、みんなが乗る自転車の交通ルールを教
える場が何もないっていうのは大問題だよねえ。
 しかも、ホントに危険な乗り物なのに。

 勘違いで怒鳴っていた老人の「今の学校教育はダメ」だという点だけは、本
気で考えていかなきゃいけないことかもね。