沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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214)規制しない規正法

舛添都知事の件、ようやく「第三者」の調査結果が公表された。

その結論は、
「不適切だが、違法性なし。」

まあ、知事自らの費用で、自ら選任した人達なので、
端っから、その「中立性」は怪しい限りだったが、
想定どおりの、ガッカリな内容だ。

結局、「違法性なし」という結論に絶大な力を得た知事は、
恥ずかしげも無く、続投宣言をした。

そもそも、この「第三者」による調査自体が、
「違法性なし」との「お墨付き」
を得るためだけの「出来レース」だったことは明らかだけどね。

安倍総理が、憲法の理念を知らない「無知」の人なら、
舛添知事は、都民の怒りを感じない「無恥」の人だね。

政治資金規正法というのは、
昔から「ザル法」と言われ続けている。

政治家が、自らの首を絞める法律を作るはずもないので、
この先、何年かかっても、実効性のある法律にはならないだろうが、
それにしても、ヒドイ法律なのだ。

要するに、政治資金規正法では、
政治資金の「使途」を何ら「規制」していない。
政治活動は自由!というのが大原則とされているからだ。

法律の名称を、わざわざ、
「規制法」とせずに「規正法」としたのには、
それなりの腹黒~い理由がありそうだね。

辞書によれば、
規正=規則に従って、物事を正すこと
規制=規則に従って、物事を制限すること
ということらしいのだが、
結局、規則に従って、正しく申告していれば全てOKというワケ。

今回、唯一、違法性の可能性が指摘されていたのが、
例の「正月の家族旅行中の会議」の件だ。

ところが、この点も、
「厳しい」はずの「第三者の目」は、
舛添知事の自己申告だけに依拠して、
「会議は実施されたので、不適切だが、違法性なし」
と言い切ったのだ。

イヤイヤ、それはダメでしょう!
と多くの国民が突っ込んだに違いない。

舛添知事は、従前は、
「事務所関係者と会議した」と言っていたのに、
今度の調査では、
「出版社社長と会議した」と変遷してるんだぞい。

元検事の弁護士に託された調査内容は、
あくまでも「違法性の有無」が主眼のはず。

ならば、会議の相手方とされる出版社社長に言質をとり、
供述内容が怪しければ、客観的証拠を提出させるのが、
最低限の務めだ。

なのに、この「第三者」は、
出版社社長へのヒヤリングすらしていないと言い放った。
検事なら、被告人の主張のウラをとるのは、至極当然なんだが?

う~む。
どう考えても、あまりにヒドイ調査だ。

そもそも、この程度の調査なら、何故、受任したのだろうか?
よほど、緻密で厳しい調査結果を示さないと、
かえって、弁護士自身が国民から批判を受けるであろうことは、
容易に想像できたはずなんだけどね。
そして、弁護士としての「価値低下」を招くであろうことも。

案の定、この弁護士の所属事務所には苦情が殺到したらしく、
対応し切れなくなった事務所がとった行動は、なんと、
「電話線をコードごと抜いてしまう」
という荒技だった……。

でも、他のクライアントとの連絡はどうしてるんだろう?

いずれにせよ、今回の調査を受任したことによる代償はデカイ。
今後の弁護士活動に多大な支障が出ることは間違いないね。

ところで、舛添知事が、会議を全くしていないのに、
「会議費」として計上していたならば、
これは、明らかに「虚偽記載罪」という犯罪に該当する。
つまり、「違法性あり」という結論に至る。

もっとも、政治資金規正法は、虚偽記載については、
「会計責任者」の犯罪になるという構成をとっているので、
直ちには、舛添知事の犯罪にはならない。

だが、家族旅行の領収証は、舛添知事しか入手できない。
舛添知事が会計責任者に領収証を交付し、さらに、
「家族旅行の最中に会議をしたから会議費にしておいて」
と具体的な指示をしない限り、
会計責任者が、家族旅行の領収証を見て、
「はは~ん。これは、会議費だなあ。」
なんて、想像するはずもない。

従って、この件は、万が一「虚偽記載」ならば、
会計責任者と舛添知事は、
刑法60条・65条1項により、
「共同正犯」
として処罰され得るのだ。

まあ、今、都知事に辞められると、
2020年の東京オリンピック直前に任期満了になるから、
何とか、辞めるにしても8月以降にしてくれ、
なんていう声が都議会には多いらしいが、
それならそれで、
サッサと辞めさせずに、徹底的に、
「違法性の有無」
を追及してもらいたいものだ。

やはり、偽証罪が適用される
「100条委員会」
の設置しかなかろうね。

当の舛添知事自身も、
どうしても、8月までは居座りたいはず。
リオ五輪の最終日の閉会式セレモニー。
開催都市のリオ市長から東京都知事への五輪旗の引き継ぎだ。
全世界に向けて、
「したり顔」の舛添知事のアップが中継されるかと思うと、
いや~~な気持ちになるけどね。

いずれにしても、
単なる形だけの政治資金「規正法」を、
実効性のある政治資金「規制法」に改正しない限り、
政治家の「公私混同」は永久に無くならないね。

そう言えば、
話題になった「パナマ文書」には、日本の政治家の名が少ない、
との指摘があったそうだ。

そりゃ、そうだろうよ。
日本の政治家は、面倒な「租税回避」なんかしなくても、
堂々と「公私混同」できるんだからね。