220)住宅ローンという重荷
- 2016年9月18日
- 法律・政治
泥沼の離婚騒動が収束したと思ったら、今度は、財産分与の申立。
先日、女優の三船美佳氏が、歌手の高橋ジョージ氏に対し、
2人の共有名義となっている豪邸の財産分与を申し立てた、と報じられた。
離婚したのに、今頃、なぜ?
という論調の報道もあったが、とにかく早く離婚したい!という思いが強い場合、
離婚だけを先に決めてしまって、財産分与や慰謝料は「後回し」
なんていうことは、実務上は、さほど珍しいことでもない。
ちなみに、
財産分与は、離婚してから2年以内、
慰謝料は、離婚してから3年以内、
に裁判所に申立・請求しないと、権利自体が時効消滅してしまうので、要注意。
ところで、三船・高橋両氏の豪邸は、購入時3億円とも言われ、
離婚後は、高橋氏が1人で住み続ける一方、
住宅ローンは、2人で、なんと月額40万円ずつ支払い続けているらしい。
つまり、2人で月額80万円だから、年額は1000万円(!)近い。
三船氏からすれば、自分や子供たちが住んでもいない住居に対し、
月額40万円も支払い続けるバカバカしさといったらないよねえ。
何しろ、自分や子供たちが暮らす住居費は、別にキッチリ負担しているワケだから。
まあ、財産分与を申し立てるのも当然と言えば、当然のこと。
この場合、共有名義なので、現実的には、
売却して住宅ローンを完済し、残金を2人で分ける、という感じの解決だろうか。
住宅ローンというのは、通常、個人が抱える借金では最大のものだ。
金額も大きいし、返済年数も長い。
返済年数が30年の場合、
言ってみれば、
「30年間、変わらない自分」
というものに対して、ドッと投資しているようなものだ。
世帯収入も、家族の生活スタイルも、夫婦関係も、
「大きく変わらない」ことこそが、住宅ローン完済の必要条件。
だが、30年という時間は、あまりにも長過ぎる。
収入も大きく減れば、生活スタイルも劇的に変わり得る。
そして、ついに夫婦関係が破綻すれば、
「ローン付き住宅」をどうするか?
という難題が、大きなハードルとなってくる。
住宅の時価が、ローン残額よりも大きければ、
売却して清算してしまえばよい。
だが、多くの場合、
ローン残額が、住宅の時価よりも大きい。
いわゆる「オーバー・ローン」という状態だ。
こうなると、住宅自体は「無価値」ということ。
加えて、住宅ローンという債務の「後始末」をどうするか?
という点で、どうしても揉めてしまうのだ。
通常は、夫が住宅ローンを1人で抱えているパターンが多い。
そうすると、夫は、
「2人で建てようと言って借りたんだから、半分負担してよ。」
とも言いたくなる。
だが、妻は、
「住宅ローンは、私は関係ないわ。」
と聞く耳を持たない。
まあ、実務上は、妻の言い分が正当なんだよね。
財産分与というのは、あくまでも、
「財産を私に分けてちょうだい」
という申立なので、
「負債をあなたに押し付けたい」
という申立は出来ないからだ。
住宅ローンについては、
借入元金=手取り年収額の「5倍」まで、
返済月額=手取り月収額の「4分の1」まで、
というのが「安全圏」と言われる。
だが、多くの人は、この安全圏を無視して、
審査が通る「限界額ギリギリ」まで借りてしまう。
結果、安全圏を大きくオーバーしている状態で、
「30年間、変わらない自分」
というものに、無謀な「賭け」をしているんだよね。
住宅ローンを組む世代は、30代が多かろう。
つまり、30代~60代の30年間、変わらない自分でいなければならない。
人生の3大資金と言われる住宅資金・教育資金・老後資金。
40代になれば、教育資金に悩まされる。
50代になれば、老後資金に悩まされる。
だが、住宅資金の悩みは、その間も、ずっと続く。
住宅ローンは、やっぱり、人生最大の重荷なんだろうね。
我が家は、先日、17年間に及ぶ住宅ローンの完済日を迎えた。
加えて、同時期に、自動車ローンの完済日も迎えたので、
「夢の無借金生活」(笑)かと思ったら、
今月から、新たな自動車ローンが始まってしまい、、
夢の無借金生活は、しばらく、お預けとなった。
だが、子供への仕送りが始まる前にローン完済を迎えたのは、感謝に尽きる。
まずは、高望みせず、「安全圏」の借入を貫いたことが完済の要因だろう。
そして、結果的に、
「17年間、変わらない自分」
でいられたことが、何よりも大きかった。
これは、ホントに、ホントに、有り難いことだ。
さてさて、
残り20年の「弁護士人生」と、
残り40年の「夫婦人生」、
ずっとずっと、「変わらない自分」でいられたら、最高だね!