沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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220)住宅ローンという重荷

泥沼の離婚騒動が収束したと思ったら、今度は、財産分与の申立。
先日、女優の三船美佳氏が、歌手の高橋ジョージ氏に対し、
2人の共有名義となっている豪邸の財産分与を申し立てた、と報じられた。

離婚したのに、今頃、なぜ?
という論調の報道もあったが、とにかく早く離婚したい!という思いが強い場合、
離婚だけを先に決めてしまって、財産分与や慰謝料は「後回し」
なんていうことは、実務上は、さほど珍しいことでもない。

ちなみに、
財産分与は、離婚してから2年以内、
慰謝料は、離婚してから3年以内、
に裁判所に申立・請求しないと、権利自体が時効消滅してしまうので、要注意。

ところで、三船・高橋両氏の豪邸は、購入時3億円とも言われ、
離婚後は、高橋氏が1人で住み続ける一方、
住宅ローンは、2人で、なんと月額40万円ずつ支払い続けているらしい。

つまり、2人で月額80万円だから、年額は1000万円(!)近い。

三船氏からすれば、自分や子供たちが住んでもいない住居に対し、
月額40万円も支払い続けるバカバカしさといったらないよねえ。
何しろ、自分や子供たちが暮らす住居費は、別にキッチリ負担しているワケだから。

まあ、財産分与を申し立てるのも当然と言えば、当然のこと。

この場合、共有名義なので、現実的には、
売却して住宅ローンを完済し、残金を2人で分ける、という感じの解決だろうか。

住宅ローンというのは、通常、個人が抱える借金では最大のものだ。
金額も大きいし、返済年数も長い。

返済年数が30年の場合、
言ってみれば、
「30年間、変わらない自分」
というものに対して、ドッと投資しているようなものだ。

世帯収入も、家族の生活スタイルも、夫婦関係も、
「大きく変わらない」ことこそが、住宅ローン完済の必要条件。

だが、30年という時間は、あまりにも長過ぎる。
収入も大きく減れば、生活スタイルも劇的に変わり得る。
そして、ついに夫婦関係が破綻すれば、
「ローン付き住宅」をどうするか?
という難題が、大きなハードルとなってくる。

住宅の時価が、ローン残額よりも大きければ、
売却して清算してしまえばよい。

だが、多くの場合、
ローン残額が、住宅の時価よりも大きい。
いわゆる「オーバー・ローン」という状態だ。

こうなると、住宅自体は「無価値」ということ。
加えて、住宅ローンという債務の「後始末」をどうするか?
という点で、どうしても揉めてしまうのだ。

通常は、夫が住宅ローンを1人で抱えているパターンが多い。
そうすると、夫は、
「2人で建てようと言って借りたんだから、半分負担してよ。」
とも言いたくなる。

だが、妻は、
「住宅ローンは、私は関係ないわ。」
と聞く耳を持たない。

まあ、実務上は、妻の言い分が正当なんだよね。

財産分与というのは、あくまでも、
「財産を私に分けてちょうだい」
という申立なので、
「負債をあなたに押し付けたい」
という申立は出来ないからだ。

住宅ローンについては、
借入元金=手取り年収額の「5倍」まで、
返済月額=手取り月収額の「4分の1」まで、
というのが「安全圏」と言われる。

だが、多くの人は、この安全圏を無視して、
審査が通る「限界額ギリギリ」まで借りてしまう。

結果、安全圏を大きくオーバーしている状態で、
「30年間、変わらない自分」
というものに、無謀な「賭け」をしているんだよね。

住宅ローンを組む世代は、30代が多かろう。
つまり、30代~60代の30年間、変わらない自分でいなければならない。
人生の3大資金と言われる住宅資金・教育資金・老後資金。
40代になれば、教育資金に悩まされる。
50代になれば、老後資金に悩まされる。
だが、住宅資金の悩みは、その間も、ずっと続く。

住宅ローンは、やっぱり、人生最大の重荷なんだろうね。

我が家は、先日、17年間に及ぶ住宅ローンの完済日を迎えた。
加えて、同時期に、自動車ローンの完済日も迎えたので、
「夢の無借金生活」(笑)かと思ったら、
今月から、新たな自動車ローンが始まってしまい、、
夢の無借金生活は、しばらく、お預けとなった。

だが、子供への仕送りが始まる前にローン完済を迎えたのは、感謝に尽きる。

まずは、高望みせず、「安全圏」の借入を貫いたことが完済の要因だろう。

そして、結果的に、
「17年間、変わらない自分」
でいられたことが、何よりも大きかった。
これは、ホントに、ホントに、有り難いことだ。

さてさて、
残り20年の「弁護士人生」と、
残り40年の「夫婦人生」、
ずっとずっと、「変わらない自分」でいられたら、最高だね!