247)現代版「踏み絵」
- 2017年7月16日
- 法律・政治
民進党の蓮舫代表が、近々、
自身の戸籍関連情報を公開するそうだ。
例の「二重国籍」批判を受けてのことだが、
公開すること自体への批判も、また大きい。
戸籍は、自身のルーツを示すものであるため、
部落差別や人種差別を助長してきた暗い歴史がある。
そのような、極めてセンシティブな情報を、
マスコミに公開してしまうというのは、やはりNG。
社会全体に与える影響が大き過ぎるからね。
今回の二重国籍問題、とにかく違和感がある。
総理大臣になるかも知れない政党党首が、
二重国籍ではけしからん!
というのならば、今すぐ法改正をすればよいだけだ。
現行法では、官僚だろうが、国会議員だろうが、
総理大臣だろうが、防衛大臣だろうが、
二重国籍ではダメ(欠格)との規定は存在しない。
唯一、外交官だけが二重国籍ダメとされているのみ。
従って、蓮舫氏は何ら違法行為をしていないし、
国会議員・政党党首としての資格要件も欠いていない。
蓮舫氏は、2004年に参院選で初当選して現在3期目。
公職選挙法では、候補者には戸籍情報の提出を義務づけており、
蓮舫氏も立候補した時点において、
被選挙権の要件である「日本国籍」の確認を受けている。
今回の騒動の背景には、日本人特有の、
「異質性排除」の国民性があるのだと思えてならない。
蓮舫氏は、1967年、
台湾国籍の父と日本国籍の母との間に、
日本国内で出生している。
もはや、この事実だけで、蓮舫氏は「日本人」だ。
1967年当時の日本の国籍法は、
「父系優先血統主義」を採用していた。
つまり、父親が日本国籍を有していないと、
日本国籍を取得できないというワケだ。
従って、蓮舫氏は、日本国籍を取得できなかった。
ところが、父系優先血統主義は女性差別だと指摘を受け、
1984年、国籍法が改正されて、日本でも、
「父母両系血統主義」が採用されるに至った。
結果、蓮舫氏は、日本国籍を取得できたのだ。
もう、これだけで十分ではないか。
本来、現行国籍法なら、蓮舫氏は、
「生まれた時から日本人」なのだ。
そして、日本は、
「台湾」(中華民国)を国家として認めていない。
ならば、蓮舫氏は、
旧国籍法によって、出生時は「無国籍」だった、
というのが、法律的な解釈となるはず。
現に、日本人が「台湾」に「帰化」しようとして、
日本国に「国籍離脱」を申請すると、どうなるか?
答えは、「国籍離脱は認めません」という通知が来る。
何故か?「無国籍」となってしまうからだ。
つまり、そもそも、蓮舫氏は、
日本国の立場として、本当に「二重国籍なのか?」
ということから問い直す必要がありそうだ。
日本国の政治的建前からすれば、台湾というのは、
「中華人民共和国台湾省」ということになる。
そうならば、同国の国籍法を参照してもよかろう。
で、中華人民共和国の国籍法では、
「外国に定住した中国公民が、自らの意思によって、
外国国籍に加入あるいは取得した場合、
中国国籍を自動的に喪失する」とされている。
ならば、この点からしても、
蓮舫氏は、「二重国籍ではない」という結論に至る。
そもそも、二重国籍ですら無く、
しかも、違法でも何でもないことで、
異質なものを徹底的に排除しようという日本社会。
戸籍情報の公開まで求めるというのは、
完全に、かつての「踏み絵」と同じだ。
サイレント・マジョリティー(静かな多数派)、
ノイジー・マイノリティー(うるさい少数派)、
という言葉があるように、
マスコミやネットでの表立った批判というのは、
多くの場合、少数派によって展開されがちだ。
ただでさえ、異質性を排除したがる国民性だ。
センシティブな情報は慎重に扱ってもらいたいもの。
そうそう、国籍といえば、
私なんぞは、完全に二重国籍のはず。
何故なら、私の出生国であるブラジルは、
出生地主義を採用しているので、出生時、
私は、日本とブラジルの二重国籍状態。
ブラジルは二重国籍を容認しており、
しかも、原則として国籍離脱を認めていない。
結果、私は、今でもブラジル国籍を喪失していない。
つまり、私は、日本では外交官にはなれない。
ん?ん?
いやいや、私は、大学に入るまでは外交官志望だった。
なれないなら、目指すだけ無駄だったのか?
……ということもなく、面倒な手続きを踏めば、
ブラジルの国籍を離脱することも出来るらしい。
実際に、日本の外交官試験に合格したことを理由に、
ブラジルの国籍離脱が認められた例があるそうだ。
まあ、話は横道に逸れたが、
日本人の「ルーツ」に対する異常な偏見こそが、
あらゆる差別を助長してきたことは間違いない。
ネットで騒がれるのはコントロールできないにしても、
せめて、マスコミは、もっと理性的に報道して欲しいよね。