253)法の支配
- 2017年10月1日
- 法律・政治
今日、10月1日は「法の日」。
最高検察庁のHPによれば、次のような説明がある。
(引用はじめ)
昭和3年10月1日に陪審法が施行されたことによって,翌年から10月1日は「司法記念日」と定められました。
その後,昭和34年10月に開催された裁判所,検察庁及び弁護士会の三者協議会において,次のような決議がなされ,「法の日」の制定が提唱されました。
「国民主権のもとに,自由と正義を守り,世界の平和を維持し,人類の福祉に貢献することはわれわれ日本国民のひとしく理想とし,念願とするところである。これがために,われわれは,法によって社会秩序を確立しなければならない。さらにまた,国際紛争もこの法の支配の原則によって解決されなければならない。よって,ここに,国を挙げて法を尊重し,右の理想と念願を高揚するため10月1日を『法の日』と定めることを提唱する。」
これを受けて,翌昭和35年6月,政府は,今後10月1日を「法の日」と定め,国を挙げて法の尊重,基本的人権の擁護,社会秩序の確立の精神を高めるための日としました。
これに基づいて,裁判所,法務省及び日本弁護士連合会では,昭和35年以来,毎年10月1日からの1週間を「法の日」週間として,全国各地でこの週間の趣旨の徹底を図るため,講演会や座談会など各種の行事を実施しています。
(引用おわり)
そう、「法の支配」「法の尊重」ということについて、
国民全体が今一度、シッカリと意識すべき日なんだよね。
ここでいう「法の支配」というのは、
「専断的な国家権力の支配」を排し、
「権力を法で拘束する」という英米法系の基本的原理
のことを指す。
しかし、どうだろうか。
今の安倍政権は、
「国家権力を縛る最後の砦」であるはずの憲法さえも、
徹底した軽視・無視のスタンス。
まさに、法の支配の理念に真っ向から抗っている感じ。
完全に違憲と思われる安保法制は言うに及ばず、
今回の7条解散だって、憲法の趣旨からは大きく逸れる。
日本国憲法7条3号と69条の規定は次のとおり。
第7条
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
3 衆議院を解散すること。
第69条
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
衆議院議員は、国民によって選出される。
首相は国会で指名されるが、衆議院の優越により、
結局は、衆議院の指名によって首相が誕生する。
つまり、衆議院での多数派が政権与党となる。
その与党指名の首相が国務大臣を任命して内閣を作る。
従って、内閣と衆議院とは、基本的には対立しない。
これが議院内閣制の基本構造で、大統領制との違い。
ところが、首相が暴走するのか、与党が変貌するのか、
いずれかはともかく、内閣と与党が対立してしまえば、
政治はそこで完全にストップしてしまう。
そして、首相の信任の基盤であった衆議院が、
首相に「不信任」と突きつけた以上、
首相と衆議院のいずれが民意から離れてしまったのか、
まさに、国民に「信を問う」必要に差し迫られる。
このような政治的危機状態を打破する最終方策が、
衆議院の解散なのである。
憲法の条文構造を素直に読めば、もともとは、
衆議院の解散は69条の場合のみが想定されており、
その69条解散を実施するために、
天皇が政治的権能を有しないことから、
内閣の助言と承認を要するとしたに過ぎないはずだ。
現に、日本国憲法を草案したGHQも、
そのような解釈をしていたようだ。
ところが、1952年8月に吉田茂首相が、
はじめて、「7条解散」に踏み切って以来、
実に、24回の解散中、7条解散が20回!という有様。
もちろん、吉田茂が踏み込んだ7条解散については、
違憲訴訟が提起されたが、最高裁は、
「高度に政治的な問題に司法が介入しない」
という「統治行為論」を持ち出して、判断を回避した。
「憲法の番人」であるはずの最高裁が、
司法判断を回避すること自体は、極めて不当な話だ。
「政治権力を縛る」という憲法の本質上、
判断の対象が政治的問題になるのは不可避だからね。
だが、そのことを置いておいても、
7条解散というのは、
自らの信任基盤であり、現に信任し続けている議会を、
首相の独断で解散に追い込むという無茶苦茶な話。
この解散で落選するかも知れない与党議員からすれば、
こんな暴挙はないと感じるはずだ。
かつて、1970年代に衆院議長だった保利茂氏は、
「立法、司法、行政の三権は抑制と均衡によって、
それぞれの機能を果たしている。
内閣の都合や判断で一方的に衆院を解散できる
と考えるのは憲法の精神を理解していない」
と内閣の解散権乱用を戒めたという。
良識ある見解だ。
また、少しでも法律を勉強したことのある人なら、
誰もが知っている憲法学の権威、芦部信喜氏も、
「7条により内閣に自由な解散権が認められるとしても、
ふさわしい理由が存在しなければならない」
と的確かつ当然の指摘をしている。
今回の7条解散は、多くの人が指摘するとおり、
「何ら大義のない好き勝手解散」
と言わざるを得ない。
安倍内閣の支持率が若干回復し、
民進党のゴタゴタがあり、
小池新党の船出がもたついている今ならば、
与党が勝利できる、という計算しか見えてこない。
そして、何よりも、国会が始まって、
「学園ものシリーズ」の放送が再開されれば、
安倍政権の支持率が見る見る落ち込んでいくのは必至。
そうなれば、最悪、政権交代という事態も見えてくる。
まあ、与党・野党を問わず、
国会議員は自分のことしか頭にない。
国会議員になって「何をしたいのか」ではなく、
国会議員に「なること自体」が目標の人があまりに多い。
今回の選挙は、圧倒的に「希望の党」が有利だ。
何故なら、実績が全く無いからね。
実績が無いということは、汚点も無いということ。
よく分からない「希望」だけで投票する人が続出するはず。
ただ、「法の支配」ということで言うならば、
希望の党は、ひょっとすると、
自民党よりも、ずっとずっと「右」の可能性が強い。
希望の党が躍進することは確実だろうが、
そうなれば、今の国会は、「保守勢力だらけ」となる。
今の安倍政権よりも、さらに右傾化した政権が誕生したら……。
ゾッ、とするねえ……。
今後、憲法改正問題も含めて、
とんでもない「改悪」政策だけは招かないよう、
我々国民は、シッカリと「法の支配」を肝に銘じるべし、だね。