89)わが師、最高裁へ!
- 2012年5月8日
- 弁護士・資格
先日、司法修習時代のクラス会(49期6組)が東京で開催され、私も、1泊2日で、久しぶりに東京に赴いた。
今となっては、判事・検事・弁護士と仕事も活動拠点もバラバラなクラスメートなのだが、教官を含めて約50名が出席する盛大な会合となった。
我々の時代は、2年間の司法修習のうち8ヶ月が研修所での座学だったのだが、教室と寮は併設されているので、クラスメートというのは、まさに「同じ釜の飯を食った仲間たち」ということになる。
さすがに、体型と毛量に月日の変化は垣間見られたものの(笑)、基本的には、みんな全く変わっていなかったなあ。
修習を終えて、実に15年ぶりに再会する者もいたワケだが、不思議なもので、アッという間に当時にタイムスリップしてしまった感じだ。
今の修習制度は、この「クラス」という枠組みが希薄になってしまっているので、ホントに可哀そうだ。
さて、この時期に「何で?」クラス会かと言うと、実は、わがクラスの民事弁護教官(=わが師)が、本年2月に「最高裁判事」に就任するという、とっても御目出度いことがあり、この際だから、大々的にクラス会をやっちゃおう!ということになったのだ。
司法修習時代に教わる教科は、民事裁判・刑事裁判・検察・民事弁護・刑事弁護の5科目である。
民事弁護の教官であるわが師は、当然ながら弁護士である。
つまり、弁護士から最高裁判事に就任したということだ。
弁護士が裁判官に?と疑問に思うであろうが、最高裁判所というのは、我が国の法解釈の最終判断を下す重要な機関であるから、多様な立場の法律専門家の見解を反映させるべしということで、裁判官だけでなく、検察官・行政官・弁護士・法学者などの法律専門分野出身者で構成されているワケ。
慣例上は、最高裁長官を含む15名の裁判官の構成は、裁判官出身6名、弁護士出身4名、検察官出身2名、行政官出身2名、法学者出身1名という構成らしい。
最高裁判事の定年は70歳であり、事実上は、一旦就任すれば定年までは最高裁判事の職が解かれることはない。
そして、ある最高裁判事が定年退官すれば、同じ出身分野から後任の最高裁判事が選任される、ということがずっと繰り返されるのである。
わが師の在任期間は「約5年」のようなので、わが師の後任が選任されるは、約5年後ということになる。
つまり、弁護士出身の最高裁判事というのは、3万人もいる弁護士の中で、年に1人も誕生しないという、まさに「トップ・オブ・ザ・弁護士」なのである。
弁護士が最高裁判事に就任するということの凄さと、思わず、クラス会を盛大に開いちゃおう!というテンションに至る心情とが、ご理解頂けるであろうか。
クラス会にて、刑事裁判の教官(現役の判事)が、「今まで、同じ教官ということで同僚という意識を勝手に抱いていましたが、もはや雲の上の人になっちゃいましたね~。」とシミジミ語っていたのが印象的であった。
官僚組織というのは、それはそれは厳格なピラミッド構造である。
典型的な例が「踊る大捜査線」に出てきた警察の階級制度であろう。
警察の階級は、
警視総監・警視監・警視長・警視正・警視
警部・警部補・巡査部長・巡査
の9つに分かれているが、上の5つと下の4つとは「別格」のようだ。
警視以上の階級は、事実上、キャリア組が独占しているらしい。
さて、最高裁判事というのは、三権の一翼を担う司法ピラミッドの頂点に位置するわけで、現役の判事が抱く思いは、我々の想像を超えるものなのかも知れない。
そして、当然ながら、その待遇も別格である。
あまりに広すぎる個室が各自に割り当てられ、秘書官などの専属職員数名が各自に配置される。
弁護士は自由業なので、組織における上下関係を意識することが圧倒的に少ない職種であるから、弁護士出身の者には、このピラミッド構造は、やや堅苦しく感じられるようだ。
わが師も、そんな感想を述べていた。
例えば、裁判所内を自由に歩きたいと思っても、「どこに行くか」を秘書官に逐一告げていかねばならないし、残業したくても、残業すると秘書官などが全員帰宅できないので、気を遣って残業もしない慣例とのこと。
また、調査官にちょっとした調べものをお願いするにも、自ら調査官の所へ行って、気軽に聞こうとすると、「そんなことはおやめ下さい。」と言われるのだそうだ。
何故かと言えば、調査官に用があるなら、その者を裁判官室に「呼びつけて下さい。」ということらしい…。まさしく「ピラミッド」である。
もちろん、給与も特別で、国務大臣や検事総長と同額である。
まあ、最高裁判事に就任する際には、弁護士登録も抹消して、全ての顧問契約も解消することになるので、いわゆる「売れっ子弁護士」であれば、むしろ収入は減るのかも知れないが、70歳までの高額給与が保障されるというのは、やはり破格の待遇には違いない。
だが、一方で、職務は相応にタイトなようだ。
現在、年間に6000件くらいの事件が最高裁に上がってくるらしいが、最高裁長官を除く14名の裁判官で「主任」を担当するので、年間で1人430件以上の事件を「主任」として精査せねばならないのだ。
意外なことに、最高裁に上がってくる事件で最も多いのは、「離婚事件」なんだそうだ。
もともと感情的な対立が背景にあるので、法理論よりも感情論優先で最後まで闘い抜きたいという人が多く、弁護士を付けずに闘っているケースも多いため、法的なアドバイスを十分に受けていないことも理由なのであろう。
そして、感情論優先であるため、提出される書面も枚数がやたらと多く、理論的でないことが多いようなのだが、それでも、全ての書面には「シッカリと目を通す」そうだ。
正直、このことを聞いて、本当に「ホッ」とした。
最高裁に上がる事件というのは、調査官が事前に内容をチェックし、関連する法令や過去の判例を全て調べ上げて、事件を「スクリーニング」しているのであるが、調査官の「お膳立て」に身を任せて、裁判官が内容を十分チェックせずに最終判断しているのではないか、と疑っていたからだ。
そうではなく、裁判官自らが、「シッカリ」と読み込んでくれているならば、内容の濃い「読み応えのある書面」さえ提出できれば、道が開かれる可能性もあるということだ。うん、そうと強く信じよう!!
ちなみに、最高裁判所調査官というのは、裁判所職員をイメージさせるネーミングであるが、実は現役判事が任命される。
しかも、調査官に任命されるのは「エリート判事」なのであり、世代的には、我々世代の判事が任命されるようだ。
わがクラスにも、現役の調査官が1名いるし、最高裁事務総局にも1名在籍している者がいる。
つまり、教官を入れて、わがクラスから3名が最高裁で活躍しているということだ。立場は違えど、仲間の活躍というのは、本当に嬉しいものだ。
仲間の活躍と言えば、某県の今年度弁護士会会長に就任した者もいる。
全国的には、4つの県で同期(49期)の会長が誕生し、2つの県で1期後輩(50期)の会長が誕生したそうだ。
実を言えば、わが三重弁護士会も我々の同期が会長なのである。
そう言えば、我々を教えてくれていた当時の教官は40代が中心であったので、我々が今まさにその年代に達したということなのだ。
実際、クラスメートの中には、司法修習の教官を務めている者やロースクールで教鞭を執っている者もいるようだし。
今回、わが師の最高裁判事就任という栄誉に触れたこともさることながら、クラスメートたちの「大活躍」を聞くに及び、いよいよ、自分の中で「闘志」が漲ってきた感じだ。
我々世代は、任官あるいは弁護士になって16年目となる。
最も脂の乗ってきた世代であり、これからの10~15年は、バリバリと社会の中心で活躍して、ジャンジャン社会貢献していかねばならない世代と言えよう。
あ、そうそう、某市長も、我々の同期だしね。あの発言力と行動力はホントに凄いの一言だ。
さてさて、6月1日の新事務所開業に向け、いよいよカウントダウンとなってきたが、私は私なりに、派手さはなくとも、シッカリと地に足をつけて、地域社会への貢献にガッツリ専念していきたいと思う。
うん、マジでモチベーションが上がってきたぞ!!