94)転ばぬ先の…顧問弁護士
- 2012年7月2日
- 弁護士・資格
ソレイユ経営法律事務所のオープンから1ヶ月が経過した。
ドタバタの日々も何とか収束し、ようやく「平穏な日常」を取り戻した感がある。
そして、何と言っても、とっても気分よく仕事をさせて頂いている。
本当に有り難い限りだ。
さて、オープンから1ヶ月が経過したということで、今一度、初心に戻るべく、私がソレイユ経営法律事務所を開設したワケについて述べておきたい。
細かいことを言えばイロイロあるが、何と言っても、中小企業に対する「予防法務」を充実させたい!!ということが第一の目的である。
そう、転ばぬ先の「杖」として、是非とも、顧問弁護士をフル活用して頂きたい!ということだ。
経営者の抱く弁護士像というのは、あくまでも「裁判の専門家」であるから、
法的トラブルが発生してから弁護士を探し始める
というのが、ごくごく普通の経営者の思考である。
つまり、「弁護士に相談することなんて滅多にないんだから、毎月毎月、顧問料を払い続けるなんて馬鹿らしい。問題が起こってから弁護士を探したって遅くはないし、それで十分だろう。」という感覚に他ならない。
結果、「顧問弁護士なんていらない。」という結論に至るというワケだ。
だが、実は、問題が起こってからでは「遅すぎる」のだ!!
この点、下記動画でも説明している(つもりな)ので、是非ご参照を。
http://www.soleil-mlo.jp/lecture/
要するに、医学と一緒で、臨床法務から予防法務へ!!という流れを何としてでも構築していきたい、というのが私の思いなのだが、その思いを見事に代弁してくれている文章があるので、そのまま引用させて頂く。
引用させて頂くのは、「バリュープロポジション戦略50の作法」(永井孝尚著、オルタナティブ出版)の40頁以下である。
(以下、引用はじめ)
第16章 「予防歯科」で、10倍に広がった歯科医の潜在顧客
<今まで誰も解決しなかった顧客の課題へ新しい解決策を提供できると、まったく新しい市場が広がる>
かつて、歯科医は虫歯になってから行くところでした。
今では、歯科医による定期的な虫歯チェックがすっかり日常的になりました。
誰でも、虫歯を治療するよりも、虫歯を予防し健康な歯を維持する方にお金を払いたいのではないでしょうか?
歯科医は、「虫歯を治療する」という製品視点から、「健康な歯を維持する」という顧客視点に発想を広げた結果、新市場を創造しました。
従来は、実際に虫歯になって歯科医に行くのは、日本国民全体の1割程度でした。
虫歯以外の人も顧客に取り込むことで、日本国民全体が潜在顧客になり、潜在顧客規模を10倍に増やすことができました。
顧客中心に考え、顧客が本当に困っているニーズに対して新しい解決策を提供することで、新しい市場を創造することができたのです。
予防歯科が生まれるきっかけとなったのは、実は他業界からの働きかけでした。
キシリトールというフィンランド生まれの虫歯になりにくい甘味料を日本に普及させようと考えたマーケティング責任者は、歯科医の賛同がキシリトール普及のカギと考えました。しかし当時、ほとんどの歯科医は「虫歯になりにくい甘味料」を紹介されると、「それではもうからなくなる」と拒否反応を示しました。
そんな時、このマーケティング責任者は、「予防歯科こそ歯科医の仕事」と考える歯科専門の商社マンと出会い、「虫歯にならないために歯科医に行く」というビジネスモデルを作ったのです。
今まで見過ごしてきた顧客の課題が、新市場創造の大きなヒントになったのです。
(以上、引用おわり)
歯科医を弁護士に置き換えれば、そのまま、我々の業界にもピタリと当てはまるロジックではないか!
現在、顧問弁護士を抱えている中小企業は、ざっと1割程度であろう。
そして、予防法務の重要性自体を認識している経営者は圧倒的少数派である。
そう考えると、予防法務という市場は、中小企業経営者の意識改革を促すことによって、いくらでも成長し得る「有望市場」なのだ。
従来、弁護士の極端なまでの供給不足もあって、弁護士は、引っ切りなしに舞い込む「裁判」の依頼で手一杯であったから、予防法務には全く手が回らなかった。
と言うより、臨床法務(紛争解決)の方が予防法務よりも「儲かる」ので、わざわざ積極的に予防法務に力を入れる理由すら無かったというだ。
考えてみれば、弁護士費用が「高い」のは、問題がトコトン大きくなってから弁護士に依頼するからに他ならない。
問題が起こる前、あるいは、問題が小さいうちにササッと相談して頂ければ、弁護士費用なんてホントは安く済むのだ。
要するに、「虫歯になりにくい甘味料」が普及されると「儲からなくなる」と言って抵抗した歯科医と同じ感覚で、弁護士自身が、儲からない(=依頼者にとっては安上がりな)予防法務を積極的にアピールしてこなかったということだ。
だが、時は流れ、弁護士急増時代に突入した。
幸か不幸か、裁判の依頼を待つだけでは「食えない」弁護士も増えてきた。
つまり、弁護士が予防法務に力を入れていく環境が出来上がったのだ(苦笑)。
予防法務が充実していけば、中小企業の紛争コストも大幅にカットできるし、弁護士も新市場を開拓できる。実にウィン・ウィンの関係が築けるというものだ。
そう。弁護士も、「紛争を解決する」という製品視点から、「中小企業の健康を維持する」という顧客視点に発想を広げ、新市場を創造せねばならない。
今こそ、弁護士自身が自らも意識改革を遂げ、予防法務を積極的にアピールして、中小企業経営者の意識改革を促していく時である。
弁護士が増え過ぎて「食えない」なんて嘆いているヒマないっす!