沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

  • 最近の投稿

  • カテゴリー

  • 2024年11月
    « 10月    
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    252627282930  
  • アーカイブ

  • 法律相談
  • 顧問契約

150)弁護士の受任ルート

近時の弁護士急増により、若手弁護士を中心にして、業務激減・低所得化と
いった深刻な状況が当業界を直撃している。

まあ、一般の事業者からは、「どこの業界も熾烈な競争なんだよ!弁護士
は、今までが「超ぬるま湯」に浸っていただけなんだから、特権階級ぶって、
何をギャーギャー騒いでいるんだ!」というお叱りを受けるに違いない。

だが、やはり、弁護士や医師といった特殊な専門職は、国策として「定員を
制限」すべきなのである。
現に、医学部の「定員」が国策によって調整されてるように。

なぜなら、我々が扱う事案は、すべからく「病理現象」なのであって、平た
く言えば、「人の不幸が飯のタネ」という特殊な職種だからだ。

依頼者は、弁護士を全面的に信頼して、自らの不幸を洗いざらい開示し、事
案によっては、多額の財産も寄託する。

弁護士を信じ切り、全てを弁護士に委ね切っている依頼者を「カモ」にする
ことは、いとも簡単なのである。

そんな「危うい関係」にありながら、弁護士が清廉潔白として「人権擁護」
や「社会正義実現」のために全身全霊を打ち込めるのは、まさしく、弁護士自
身に「懐の余裕」があるからに他ならない。

生活に困窮した弁護士の目の前に大金が積まれていたら、「ちょっとだけ借
りちゃおうかな。来月にでも返せば問題ないし。」なんていう「悪魔のささや
き」が聞こえ始めるに違いない。

そもそも、弁護士を増やそう!なんていうのは、アメリカを中心とした外
圧によるものであって、国内の司法情勢を精査してのものではない。

あまり知られてはいないが、欧米には、弁護士・弁理士・公認会計士の3つ
くらいしか国家資格としての士業は存在しない。
税務申告業務ですら、弁護士の仕事なのである。

ところが、日本には、弁護士・弁理士・公認会計士の他に、法律職だけで
も、税理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士・海事代理士などがあり、
省庁の縦割りと同じく、業務が実に細分化されている。
欧米では、これらの業務は全て弁護士が一手に引き受けており、だからこ
そ、弁護士がたくさんいても業界が成り立つのだ。

と、愚痴をこぼしたところで弁護士急増という現実が改善されるワケでもな
いので、いかにして、この現状を乗り切るかを真剣に考えねばならぬ。

とりわけ、若手弁護士を如何に支援していくかが重要課題だ。

弁護士同士は、確かに「ライバル」ではあるが、弁護士業界全体が「そこそ
こ食べられる」状況になければ、弁護士の不祥事が多発し、結局は、弁護士業
界全体に対する信頼を失墜させてしまう。

そして、弁護士自身が「ちゃんと食べていける」状況になければ、弁護士個
々人としては、いわゆる「プロボノ活動」などの公益活動なんて「やってられ
るか!」という事態に陥ってしまう。

つまり、弁護士業界あるいは弁護士会にとっても、若手弁護士の支援という
のは重要課題なのだ。

で、如何なる支援が可能かと言えば、とにかく仕事を増やすことだ。

弁護士が仕事を取る「受任ルート」は、主に下記の5つ。

1)直受ルート
顧問先や知人から直接に依頼を頂戴するパターン。
依頼者と弁護士は「互いに知っている」関係。

2)紹介ルート
顧問先や知人からの紹介で依頼を頂戴するパターン。
紹介者と弁護士は「互いに知っている」関係。

3)来訪ルート
広告閲覧者やセミナー受講者が来訪して依頼を頂戴するパターン。
依頼者だけが弁護士を「一方的に知る」関係。

4)出会ルート
法律相談会で偶然出会った人から依頼を頂戴するパターン。
依頼者と弁護士は「互いに知らない」関係。

5)公職ルート
裁判所から公職の依頼を頂戴するパターン。
依頼者と弁護士は「互いに知らない」関係。

若手弁護士の場合、経験年数が浅いほど、自分自身の人脈は乏しく、セミナ
ー講師を担当するチャンスにも恵まれにくいだろう。
また、広告に多額の投資をするだけの経済的余裕も無いはずだ。

従って、どうしても、4)出会ルートや5)公職ルートが中心的な受任ルー
トとならざるを得ない。

ちなみに、5)公職ルートというのは、国選弁護人や破産管財人・相続財産
管理人・成年後見人といった裁判所が「選任」する公職の受任であり、相応の
報酬を受領することができる。
これなら、候補者名簿にさえ登載されれば、若手弁護士であっても十分に受
任可能なのだ。

だが、公職の依頼は不定期だし、頻度もそう多くはないので、公職だけを務
めていても、そうそう食べていけるものではない。
特に、若手のうちに任される案件というのは、小規模(=報酬低額)のもの
ばかりだし。

そこで、4)出会ルートが重要になってくるワケだ。

ところが、現在、弁護士会が主催する「有料法律相談」は閑古鳥が鳴いてい
るような状況…。各機関が実施する無料相談が盛況だからだ。
これは、三重に限らず、全国共通の問題である。

私が弁護士になりたての頃は、弁護士会の法律相談を担当すれば、1~2件
の事案は受任できたものだ。

だが、今では、相談件数自体が激減しており、何とも寂しい限り…。

まあ、弁護士会が抱える重要課題なので、これ以上の深掘りはやめておく
が、何とかして弁護士会の法律相談事業を活性化させることこそが、若手弁護
士支援につながるということは間違いない。
どうにかして、知恵を絞っていきたいところだ。

もちろん、弁護士経験を重ねていけば、自然に人脈は拡大する。

弁護士としての能力や社会人としての人間性に特段の問題が指摘されない限
り、人脈は強固な1)直受ルートや2)紹介ルートに発展する。

お陰様で、当事務所は、1)と2)だけで事務所経営が十分成り立つほどの
有り難~い人脈を頂戴している。
従って、広告に関しては、当ホームページ以外には一切出していない(電話
帳ですら)。セミナー講師は、たまに担当する程度。
それでも、ホームページやセミナー経由の3)来訪者も、意外に多い。
本当に有り難い話である。

若手弁護士も、3~5年ほど誠実かつ積極的に弁護士活動に従事すれば、そ
の「働きぶり」や「誠実さ」を評価してくれる人がチャンと現れるはず。
そうなれば、1)2)のルートは、ドンドン発展していくに違いない。

1)2)が順調に回り始めるまでの4)出会ルート。
やっぱり大切なんだよねえ。