沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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51)IからTへ、TからΠへ

 何のこっちゃ?と思われる方も多いだろうが、専門職としての人材像に関して、近時、「I(アイ)型人材」とか「T(ティー)型人材」とか「Π(パイ)型人材」などという表現が使われるようになった。

 I型人材というのは、1つの専門領域を深掘りしている人材のことで、縦棒の長さは専門的知見の「深さ」を示す。

 T型人材というのは、1つの専門領域を深掘りしていることに加え、専門外の幅広い知見を有している人材のことで、横棒の長さは専門外知見の「広さ」を示す。

 Π型人材というのは、専門外の幅広い知見に加え、専門領域を2つ(複数)深掘りしている人材のことである。

 当然ながら、I型人材よりはT型人材、T型人材よりはΠ型人材の方が、より労働市場における人材価値は高いということになる。

 例えば、異なる専門分野の2人のI型人材同士では、意思疎通すら十分には出来ないはずだ。
 ところが、そこに、T型人材が1人加わるだけで、意思疎通が途端に円滑になり、組織の活力は飛躍的に向上する。

 そして、Π型人材ともなれば、自分自身の異なる専門分野同士を融合させて、単独で、全く新たな価値を創造できる可能性すら多分にある。

 また、現代は、めまぐるしいスピードで外部環境が変化し続ける時代であるが、外部環境への適応力においても、その差は歴然である。

 比喩的に言えば、I型人材は、身体のバランスが非常に悪く、少し地面が揺れただけでもすぐに倒れてしまう。
 つまり、外部環境がわずかでも変化すれば、全く適応できずに労働市場から脱落してしまう可能性がある。

 それに比べて、T型人材であれば、横棒(バランス棒)を持っている分だけバランス感覚に優れ、少々地面が揺れたくらいでは容易に倒れない。
 つまり、外部環境が少々変化したくらいではビクともせず、労働市場にしがみついていられるのだ。

 そして、Π型人材ともなれば、2本の足でシッカリと地面に立っているので、バランス感覚は抜群で、相当に地面が揺れても、そう容易には倒れない。
 つまり、外部環境が激変しても、労働市場に生き残って十分に活躍できるということなのだ。

 言うまでもなく、弁護士は専門職である。
 よく「法律の専門家」という言い方をされるが、法律のことなら何でも知っているという訳ではないので、私としては、「法的紛争解決の専門家」という表現の方が適切であると思っている。

 いずれにせよ、「法的紛争解決」というものを1つの専門分野とするならば、弁護士でΠ型人材というのは稀有である。
 多くの弁護士は、未だにI型人材にとどまっている気がする。

 だが、法曹人口激増という外部環境の激変もあり、I型人材にとどまる弁護士は、おそらく、他者との差別化ができず、激増する競合他者の中に埋没してしまうだろう。

 もちろん、縦棒がやたらと細長~く、地面の中にまで縦棒が埋まってしまうくらいならば、それはそれで、ニッチ市場におけるリーダーとして、確かな存在感を示しつつ十分に生き残っていけるかも知れない。

 ところが、ニッチ市場すら存在しない「地方」の弁護士の場合、やはり、T型そしてΠ型人材へと成長していくことでしか、他者との差別化を図る術はないような気がする。

 といったことも感じつつ、私なりの「成長戦略」として、2年ほど前からコツコツと法律以外の勉強を始めたという次第である。
 
 勉強を続ければ続けるほど、世の中、知らないことだらけだということに改めて気付かされるが、大人になってからの勉強は実に楽しいものだ。それに、勉強時間は朝以外に取れないので、生活リズムも随分と健康的になった。但し、メタボ体質なのは、相変わらずだが…。

 私は、現在42歳であるが、少なくとも40歳代前半は、大いに「自己投資」に勤しもうと思っている。
 あと2年ちょい……。無理せず、一歩一歩、確実に階段を上っていきたい。

 そして、40歳代後半から50歳代という、仕事人としては最も世の中に貢献すべき「円熟期」において、この自己投資が少しでも「開花」してくれれば、これ以上の喜びはないはず。