沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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5)本物の「芸」に感動!

 今回のGWは、長期休暇を頂戴し、家族で横浜・東京方面へ旅行した。
 さすがに、「高速道路1000円効果」は凄いもので、例年の2倍の渋滞だったそうだ。行きは夜中にサービス・エリアで仮眠をしたのだが、同じ事を考えている人ばかりで、ずっと朝まで満車状態が続いていた。この政策も、当初は選挙狙いの思いつきだったと想像するが、結果的には、全国に波及する経済効果は相当なものかも知れない。

 今回の旅行の目玉は、子どもたちにとってはキッザニア東京と東京ディズニーランドだったのだが、親にとっては、何と言っても、シルク・ドゥ・ソレイユの「ZED」鑑賞だった。

 シルク・ドゥ・ソレイユというのは、フランス語で「太陽のサーカス」という意味らしいのだが、単なる「サーカス」(動物を使った曲芸)とは全く別物だ。
 そもそも動物は一切使わないし、作品全体での一貫した「ストーリー」と突出した「芸術性」は素晴らしいの一言に尽きる。終始、感動しっぱなしであった。
 しかも、今回はラッキーなことに最前列での鑑賞であったので、アクターの息づかいや筋肉の躍動感なども間近に感じ取れて、本当に得した気分であった。

 シルク・ドゥ・ソレイユを鑑賞して、これこそが、本物の「芸」であると強く感じた。演じているアクターは全て、かつての一流アスリート達である。オリンピック選手をはじめ、世界タイトルを獲得した者など世界トップクラスの連中ばかりである。シルク・ドゥ・ソレイユでは、世界中にスカウトを派遣して、一流のアスリートを一流のアーティストに育てていくのだそうだ。
 今回、唯一の日本人アクターである稲垣正司氏は、バトントワリングの第一人者であり、1995年~2005年まで世界選手権・男子個人シニア部門で前人未到の11年連続優勝を成し遂げた人物である。彼は、PL学園の後輩であるが、OBである我々にも彼の活躍は随時伝えられていた。
 長年に渡って培われた世界一の技術を世界一の舞台で表現している彼の姿を見て、真の「自己表現」の素晴らしさに触れたようで、感慨深い心境になった。

 我々が、一流の「芸」を見て感動するのは、彼らの突出した「才能」をさらに磨き上げるのに要した「膨大な修練の時間」にひれ伏すからではなかろうか。
 凡人が彼らと同じ努力をしても永遠に彼らに追いつくことは出来ないし、いくら才能に秀でていても、修練を積まなければ、人に感動を与える域には到達出来ないであろう。
 かつて、ピカソが、あるレストランに食事に行った時、ウェイターから、「このナプキンに、何か絵を描いてください。ちゃんとお礼はいたしますから。」と言われ、30秒ほどで絵を描いてこう言ったそうだ。「代金は、100万円です。」と。
 「何で、たった30秒で描いた絵が100万円もするのですか?」と驚くウェイターに対し、ピカソは、「いいえ、これを描くのに40年かかっています。」と答えたそうな。

 一流の「芸」というのは、つまりは「才能×時間」の賜物なのだ。
 才能に秀でた人が途方もない時間を掛けて修練を積み重ねるからこそ、凡人には想像も出来ない領域に彼らは到達し、凡人はただただその圧倒的な「時間」にひれ伏し、感動するしかないのである。

 最近、お笑い芸人をテレビで見かけない日は無いが、彼らのパフォーマンスは確かに面白いが、話芸として感動の域にまで達しないのは、その領域に至る「膨大な修練の時間」を我々が感じ取れないからではなかろうか。彼らのパフォーマンスは、単純に才能に任せた「出し物」に過ぎないように思えてならない。

 我々弁護士は「芸」を見せるわけではないものの、「修練を積み重ねなければ、依頼者に納得して頂けない」ということでは全く同じだ。
 いつの日にか、一流の芸人と同等の境地に達することが出来るよう、修練を積み重ねていかねば、と強く感じたことだった。