沈思雑考Blog

ソレイユ経営法律事務所の代表である弁護士・中小企業診断士
板垣謙太郎が日々いろいろと綴ってゆく雑記ブログです。

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47)BSのススメ

 BSと言っても、衛星放送の話ではなく、バランスシート(貸借対照表)のことである。

 企業経営をチェックするには、決算期末の資産・負債の現状を把握できる「貸借対照表」、1年間の収益・費用の実績を把握できる「損益計算書」、1年間の現金収支の実態を把握できる「キャッシュフロー計算書」の3つが重要であるが、家計をチェックするにおいても、貸借対照表(=BS)は非常に重要である。

 今、ご自身の資産や負債を十分把握できているであろうか。
 項目を挙げることは出来ても、その概算額まで即答できる人は多くないはず。

 家計をチェックしようとすれば、通常は「家計簿」をつけるということになろうが、家計簿は、現金収支しか記録しないので、資産や負債をチェックする習慣がなくなってしまう危険があるのだ。
 これが、家計簿の弱点である。

 例えば、クレジットカードを使って高価品を分割払いで購入した場合、毎月の引落額だけをチェックしたのでは、ついつい高価品を買ったという意識が薄れてしまう。リボルビング払いなどにしていたのでは、より一層そうである。
 また、購入した月にドーンと購入額を記録したのでは、実際の現金収支と大幅なズレが生じてしまい、家計簿本来の収支計算ができなくなる。
 つまり、単純な家計簿では、クレジットカードの使用を適切に管理することが難しいのだ。

 クレジットカードでの支払を「借金」だと思っていない人も多いらしいが、これは本当に危険なことである。
 クレジットカードの賢い使い方は、クレジットカード専用の口座を作って、その口座残高の範囲内でのみ、常に「1回払い」で買い物をすることに尽きる。
 分割払いでムダな金利を払うのはバカバカしい話だ。

 このようなことが出来ない内は、買いたい物をグッとこらえて、まずは、セッセと貯蓄に励むことである。

 BSは、家計簿のように毎日記録する必要がない。
 月1回でも記録するようになれば、クレジットカードの未払残高と預金残高を常に見比べる習慣がつき、預金残高の範囲内でしかクレジットカードは使わない、という健全な家計の遣り繰りも容易に実現するであろう。
 
 つまり、クレジットカードをデビットカードのように使う、これが正しいクレジットカードの使い方である。
 クレジットカードなら、デビットカードと違い、お得なポイントも付くし。

 ちなみに、BSの右側は「貸方」と呼ばれ、負債を記録するのだが、英語では「クレジット」と言う。
 また、BSの左側は「借方」と呼ばれ、資産を記録するのだが、英語では「デビット」と言う。
 そう、クレジットカードというのは「貸方(=負債)」カード」であり、デビットカードというのは「借方(=資産)カード」ということなのだ。

 クレジットカードを使うと、貸方に購入金額がプラスされ、それは、その金額だけ「負債が増加」したことを意味する。
 一方、デビットカードを使うと、借方の預金残高が購入金額だけマイナスとなり、それは、その金額だけ「資産が減少」したことを意味する。

 BSを理解し、BSを作成することで、クレジットカードでの支払は「借金」だということが「目に見えて実感」できるようになるはずだ。

 なお、初めて簿記を勉強すると、貸借対照表という表現自体がピンとこないものだ。
 なぜ、負債を書く欄が「貸方」で、資産を書く欄が「借方」なのか、このことを説明した教科書もほとんど無いので、用語の使い方から混乱してしまうからだ。

 この点は、諸説あるようだが、私が最も納得できた説明は、次のとおり。
 昔は、主として、債権と債務だけを管理していたところ、負債欄には「債権者」の名がズラリと並び(債権者一覧表)、資産欄には「債務者」の名がズラリと並ぶ(債務者一覧表)状態となる。
 つまり、債権者=自分にお金を貸している人=貸方、債務者=自分からお金を借りている人=借方、ということなんだそうだ。

 まあ、それはそれとして、仕事が安定してきたら、資産形成にも気を配っていかねばならない。

 一般的には、人生の3大資金と言われる「住宅資金」「教育資金」「老後資金」について、自分なりのライフプランを構築していく必要がある。

 しっかりとBSをチェックする習慣が付けば、どのタイミングでどういった資金を準備していくべきか、はっきりとビジョンを描くことができるし、計画的に貯蓄していくことも可能になる。

 パーキンソンの第二法則というのがある。「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する。」というものだ。「ふむ、ふむ…」と心当たりのある方も多いだろう。

 よく言われることだが、「収入~支出=貯蓄」という考え方では、永久に貯蓄はできない。
 貯蓄は、必ず「自動積立」にすべきである。
 つまり、「収入~貯蓄=支出」ということでないと貯蓄は実現しない。

 貯蓄をした残りの金額だけで生活するということが出来ていれば、むしろ、家計簿なんて付ける必要もない。
 毎日、生活できているという事実そのものが、着実に貯蓄が実現できていることを証明しているのだから。

 我が家でも、毎月の収入が見事にバラバラなので、1ヶ月単位で家計をチェックする意味に乏しく、家計簿は全く付けていない。
 その代わり、BSはチェックしているので、クレジットカードの「使える枠」や納税準備金のチェックなどはできている。

 クレジットカードの「限度額」を「使ってもいい額」だと思っている人は、本当に要注意である。
 限度額は、単に「借金できる額」ということに過ぎないので、本当の使える枠は、ご自身のクレジットカード専用口座の残高そのものなのである。

 この点をハッキリ認識しておかないと、知らぬ間に「多重債務者」への道をドンドン歩んでしまうことになる。

 家計簿を付けることに挫折してしまった人こそ、手間のかからないBS作成がおススメである。