248)ドイツに倣え!
- 2017年7月22日
- 社会・雑学
先日、私が所属する三重県労働委員会において、
「働き方改革」の研修を受けた。
働き方改革の三本柱は、次のとおり。
1)処遇の改善
2)制約の克服
3)キャリアの構築
1)は、「同一労働同一賃金」などの話。
2)は、「長時間労働の是正」などの話。
3)は、「労働市場の活性化」などの話。
まあ、日本の場合、根本的には、
今の「メンバーシップ型雇用」をやめないと、
実現困難な課題ばかりだ。
メンバーシップ型雇用というのは、
日本特有の年功序列・終身雇用を前提にした、
職務や勤務地を限定しない「正社員」の雇用形態のこと。
基本的には、新卒一括採用で大量に人材を獲得し、
OJTや社内研修で教育を行い、
その会社にマッチした能力を徹底的に磨いていく。
職務や勤務地の範囲を限定していないことから、
基本的には会社の都合により、自由に配置転換も行えるし
ありとあらゆる仕事がドンドン割り当てられる。
このメンバーシップ型雇用こそが、
長時間労働による過労死や、
正規労働者(正社員)と非正規労働者(契約社員・派遣社員)
の待遇格差の原因とされているのである。
メンバーシップ型雇用に対する雇用形態は、
ジョブ型雇用と呼ばれるもの。
要するに、ジョブ型雇用は、
仕事ありきで、「仕事に値段」が付き、
その仕事に、適当な人材を割り当てる。
一方、メンバーシップ型雇用は、
人ありきで、「人に値段」が付き、
その人に、適当な仕事を割り当てる。
だから、正規(人によって値段が違う)と
非正規(仕事によって値段が違う)とでは、
値段の付け方が違うから、どうしたって、
「同一労働同一賃金」が実現しないというワケだ。
同一労働同一賃金の実現は、
日本が、メンバーシップ型雇用から脱却し、
ジョブ型雇用に移行しない限り、実現は厳しい。
だが、長時間労働の是正は、
国が本気で「規制」をしていけば実現可能なもの。
今回、2年後の2019年4月施行を目指して、
「罰則付きの残業規制」が法制化されることになった。
その内容は、次のとおり。
1)原則として、「月45時間」かつ「年360時間」が上限。
2)例外として、労使協定で「年720時間」までOK。
但し、2~6ヶ月の平均で、いずれも「月80時間以内」が上限。
単月では、「月100時間未満」でなければならない。
3)上記の例外措置は、「年6回」(1年の半分まで)が上限。
結局、「過労死ラインぎりぎり」までの時間外労働が許容され、
その点は、「甘い!」と断じざるを得ないが、
票田である産業界の意見も無視できない政治家の立場からすると、
このあたりが、限界だったのかも。
とは言え、残業規制違反に罰則が付されたことは大きな前進だ。
ほぼ残業が無いドイツでは、
残業規制は厳しく、「1日10時間」が労働時間の上限だ。
しかも、6ヶ月平均では「1日8時間」を厳守せねばならず、
ちょっとでも残業をした日があれば、
別の日に、その分だけ早退すべきことになるワケ。
結果、ドイツの労働時間は、年間1371時間。
しかも、労働安全局が、抜き打ち検査を実施しているので、
この数値は、実態をほぼ正確に反映したものだ。
一方、日本の労働時間は、年間1724時間。
だが、これは、パート等も含めた平均値であり、
正社員に限れば、年間2030時間ほどとなる。
ところが、これだって、会社申告の数値なので、
サービス残業は含まれていない。
従って、現実には、正社員の労働時間は、
年間2400時間近いのではないかとも言われている。
つまり、ドイツの労働者に比べて、日本の正社員は、
実に、年間1000時間も多く働いているのだ。
1日8時間労働で、年間で125日も多く働いている計算。
ドイツは、言わずと知れた経済大国。
彼らは、短時間労働で、たくさんの収益を上げている。
ドイツの労働生産性は、1時間あたり65ドル。
一方、日本の労働生産性は、1時間あたり41ドル。
う~む。
この差は、何なんだろうか?
私見では、「残業OK」という企業文化こそが、
効率性を台無しにしているのだろうと思う。
自分自身に割り当てられた仕事のタイムリミットが、
厳格に決められていれば、その中で、
人は、いやでも「創意工夫」をして、
徹底的にムダを省くはずだ。
現に、ドイツの人たちは、一刻も早く帰宅したいが為に、
仕事中は、高い集中力で、ムダなことは一切しないそうだ。
私自身も、そのような仕事スタイルには大いに共感。
当事務所でも、残業は推奨していないし、
所長である私は、誰よりも先に帰宅するよう配慮している。
残業というのは、仕事にムダが多いか、
仕事量と人員のバランスがとれていないか、
のいずれかが原因である。
まずは、経営者が、残業を徹底的に規制し、
仕事の効率を上げていく気運を作るべきであろう。
そして、それでも、仕事が捌けないならば、
思い切って、人員を増やすべきなのである。
当事務所も、人員を増やしたお蔭で、
昨年と今年とでは、まるで「違う事務所」と思うくらい、
1人当たりの仕事の負担が軽減し、雰囲気も良くなった。
当然ながら、労働生産性も向上した。
仕事のために心身を害し、
プライベートも台無しにするなんて、バカげている。
仕事は、幸せになるための「手段」でしかないからね。