249)不倫報道、いる?
- 2017年7月29日
- 社会・雑学
元SPEEDの今井絵理子参院議員と
妻子ある橋本健神戸市議との不倫問題が報道された。
まあ、個人的には、全く興味のない報道だが、
ちょいと誤った発言があったので、コメントしておく。
橋本市議は、
「妻とは別居しており、婚姻関係が破綻している場合は、
不貞行為にはならないと考えていた」と釈明した。
今井議員は、
「略奪不倫ではありません」と強調した。
う~む、言葉の使い方が、おかしい……。
まず、【不貞行為】とは、法律用語であり、
「配偶者としての貞操義務の不履行」を指し、
要するに、「性交渉」そのものを意味する。
つまり、性交渉を伴わない密会は、不貞行為ではない。
橋本市議も、今井議員も、ともに、
「一線は越えていない」と強調していた。
普通に考えれば、「一線=性交渉」のはずだから、
橋本市議が、あくまでも、
「一線を越えていない」と言い張るなら、
「そういう行為自体がありません!」と強調すべきだ。
次に、【不倫】とは、法律用語ではなく、
「倫理から外れたこと、人の道から外れたこと」
という程度の意味である。
となると、性交渉を伴わない密会も、不倫には該当する。
今回の場合、ホテルに2人きりで宿泊しており、
まあ、どう弁解しても、「不倫関係」は否定できまい。
とすると、
今井議員の「不倫ではない」という弁解はナンセンス。
とは言え、二人とも、
橋本市議の「婚姻関係破綻」を強調しており、
今井議員は、
「不倫だけど、略奪不倫ではない」と言いたいのかもね。
ただ、【破綻】とは、文字通り、
「関係が破れ、綻びて(ほころびて)、立て直せない」
ということだ。
つまり、【婚姻関係破綻】とは、
(1)夫婦が互いに共同生活を維持する意思を失い、
(2)回復の見込みがないと
(3)客観的に判断できる状態
を指すというのが、裁判実務の考え方である。
従って、単に、橋本市議が、
一方的・主観的に「もうダメだ!」と思っていてもダメなのだ。
橋本市議の妻が、
まだ「結婚を継続したい!やり直したい!」と願っていれば、
やはり、そう簡単には婚姻関係破綻とは認定できまい。
そもそも、夫婦は、互いに、
「平穏な夫婦生活を営む権利・利益」を有している。
この権利・利益を、不貞行為という不法行為によって、
侵害してしまうので、不貞行為者は、不法行為責任を負うのだ。
従って、既に、婚姻関係が破綻していれば、
守るべき権利・利益が失われているので、
その後に、不貞行為(=不法行為)があっても、それによって、
配偶者の権利・利益を侵害するという因果関係が成立しないワケ。
もっと言えば、
配偶者の守るべき権利・利益が失われていれば、
配偶者としての「貞操義務」そのものが消失しているとも解釈できる。
最高裁(平成8年3月26日)でも、
「Aの配偶者Bと、第三者Cが肉体関係を持った場合において、
AとBとの婚姻関係が既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、
Cは、Aに対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。
けだし、CがBと肉体関係を持つことがAに対する不法行為となるのは、
それがAの婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を
侵害する行為ということができるからであって、AとBとの婚姻関係が
既に破綻していた場合には、原則として、Aにこのような権利又は法的保護に
値する利益があるとはいえないからである。」
と判示している。
だが、言うまでもなく、
不法行為責任を免れしめ、貞操義務も消失させてしまうほど強力な
「婚姻関係破綻」という認定は、相当に厳格であり、ハードルが高い。
もちろん、橋本市議の一方的な「思い込み」ではダメだし、
「離婚調停中=婚姻関係破綻」という単純な話ではない。
やはり、不貞行為や不倫行為は、配偶者に強度の精神的苦痛を与える。
橋本市議と今井議員の行動は、あまりに軽率であったことは否めない。
そして、二人とも、
共同不法行為者として、橋本市議の妻に対する法的責任を負う可能性がある。
まあ、とは言え、
やはり、より「悪い」のは、橋本市議である。
離婚調停をしている最中に、自ら、今井議員に交際を申し込むなんてね。
裁判例においても、
配偶者の責任は、不貞相手の責任より「重い」とされる傾向にある。
東京高裁(昭和60年11月20日)でも、
「合意による貞操侵害の類型においては、自己の地位や相手方の弱点を
利用するなど、悪質な手段を用いて相手方の意思決定を拘束したような場合
でない限り、不貞あるいは婚姻破綻についての主たる責任は不貞を働いた
配偶者にあり、不貞の相手方の責任は副次的なものとみるべきである。
けだし、婚姻関係の平穏は第一次的には配偶者相互間の守操義務、協力義務
によって維持されるべきものであり、この義務は配偶者以外の者の負う
婚姻秩序尊重義務とでもいうべき一般義務とは質的に異なるからである。」
と判示している。
ま、橋本市議がキッチリと妻への法的責任を果たすのは当然の話。
でもねえ、こういう不倫報道っていうのは、
ホントに国民に大々的に報道する価値があるのかねえ。
不倫は、夫婦の間で解決すべき至極プライベートな問題だ。
それを、わざわざ公共の電波で報道すべきなのだろうか。
「人の不幸は蜜の味」という言葉があるように、
社会的に成功している人達が、落ちぶれていく様は、
庶民にとっては、それはもう「痛快!」なのかも知れない。
ネット住民は、「嫉妬の塊」と言われるように、
嫉妬の対象になっている人達が、叩かれる様が心地よいのだろう。
だからこそ、ゴシップ記事は、飛ぶように売れるんだよね。
でもなあ、「知らぬが仏」という言葉もある。
一方配偶者が、他方配偶者の不貞行為を知りさえしなければ、
夫婦関係は、ずっと円満だった可能性もある。
そうだとすると、
「国民の知る権利」という大義名分のもと、
マスコミが、わざわざ、
「円満な夫婦関係を破綻に追いやった」という事例も出てくる。
「人の不幸を見てみたい」というゲスな欲求と、
「夫婦生活を平穏に過ごしたい」という真っ当な欲求と、
いずれの欲求を優先的に充足すべきだろうか?
もう、いいかげん、マスコミの不倫報道合戦を止めさせたいもんだねえ。
ま、そういうネタが売れてしまう以上、どうしようもないのか……。