268)危機管理
- 2018年5月26日
- 社会・雑学
ひどすぎる!の一言だ。
日大の「悪質タックル」問題への対応。
今、日本全国で、いや、世界中で、
日大の主張を「真実」と信じる者がいるのか?
まあ、こういう仕事をしていると、
ビックリする判断や意見に出くわすので、
そういう人がゼロとは言わないが、
日大の主張を信じ切る人がいるならば、
そのロジックを聞いてみたいものだ。
ちょっと脱線したが、それはそれとして、
とにかく、日大の対応は、
危機管理への対応としては、最悪である。
最悪の対応をし続けていることで、
今や、日大のブランド価値は、急降下中。
広報担当者の意には反してね(笑)。
このままでは、学生や親が可哀想すぎる。
危機管理で大切なのは、
「不始末よりも後始末」と言われている。
もちろん、予防も大切なのだが、
一旦発生した危機を如何に早期に鎮火するか、
ということこそが組織の命運を左右するのだ。
そして、危機管理は、その手順とスピードが命。
これは、どの組織でも同様で、
社会問題化するような重大不祥事から、
細々としたクレーム対応まで、すべて共通だ。
危機管理の手順は、次の4つ。
(1)迅速かつ真摯な謝罪
(2)情報の提供と事実の整理
(3)責任の明確化と解決策の提示
(4)再発防止策の提示
この順番を間違うと問題は紛糾する。
日大は、そもそも(1)すら実践していない。
特に、前監督の姿勢自体がなっていない。
最初の会見時のネクタイの色はひどいし、
謝罪相手の名称すら間違えるしね(笑)。
企業に対するクレームについても、まずは、
その「心情」に「共感」するのがスタート。
(1)の段階でのポイントは、
・事実論や責任論に踏み込まない。
・相手の心情に共感することに努める。
・かかる心情に至らせたことの謝罪に徹する。
といったことだ。
クレームを言う人にしてみれば、
「私が困っていること自体を分かって欲しい」
というのが出発点なのである。
そこをすっ飛ばして、
「それは、あなたの勘違いです」
「いやいや、ウチには非がありません」
「代わりの品を送れば、それでいいでしょ?」
なんていうように、
いきなり事実論や責任論に突入してしまうと、
そのことだけで、
「私のことを軽んじている」
「反省の色が見られない」
などとなって、
さらなる「二次クレーム」に発展するのだ。
これは、同種案件を大量処理している者ほど、
ついつい、やってしまうミスなんだよね。
「また、このパターンね」
という定型思考が染みついているので、
すぐに「結論」を提示したくなるワケだ。
でも、相手にしてみれば、
一生に一度あるかないかのクレーム案件。
まずは、自分の「気持ち」を分かってほしい。
ここをすっ飛ばされると、
自分自身を「軽視」されていると感じるよね。
そして、日大は、(2)でも大失態。
(2)の段階でのポイントは、
・事実を隠さず、嘘をつかない。
・不明確なことは、絶対に断定しない。
・争いがある点は、根拠を提示する。
といったことなんだけど、全部ダメ。
そもそも、
「信じてもらえないかも知れませんが」
なんて、自分から切り出しちゃってるからね。
我々のフィールドである司法の場でも、
大半の争いは「事実の食い違い」である。
日頃から「予防法務」の重要性を強調するのも、
「事実は変えられない」
「証拠は後から作れない」
という当然の現実があるからに他ならない。
日大の前監督は、
「悪質タックルの指示はしてない」と言い切る。
周囲の者も、それが嘘だと知っていても、
その主張に沿って行動し、
現役の部員たちには箝口令を敷く。
日大の前監督は、日大ではナンバー2の実力者。
人事全般を担当する常務理事だそうで、
そうすると、人事絡みの報復を恐れる職員は、
何一つ、彼を批判することは口にできない。
そして、名門アメフト部の監督ということで、
多くの一流企業と太いパイプがあるらしい。
彼に気に入られれば、
スンナリと一流企業に就職できる一方で、
彼に嫌われてしまえば、
ブラックリスト入りして、将来を失うことに。
これでは、現役学生が反旗を翻すのは容易ではない。
この期に及んでも、日大の前監督は、
常務理事の職だけは辞していないことからして、
この強大な権力は、さぞかし魅力的なのだろう。
この「権力者の発言に同調する部下」という構造は、
「モリカケ問題」とも完全に相通じる。
官僚の人事権は内閣人事局に牛耳られているからね。
だからこそ、「安倍首相の発言」に合わせて、
ドンドン、無茶な「辻褄合わせ」を繰り返して、
問題が紛糾し続けているワケなんだよね。
加計学園にしても、
理事長は一度も顔すら出さないし、
相変わらず、安倍首相の嘘に付き合ってるし。
それにしても、
日大という組織は、どうなってるんだろう?
あの記者会見での広報担当者も酷かったしねえ。
何やら、ネット上では、
「3大炎上会見レジェンド」なんて言われ、
「ささやき女将、号泣議員」と並び、
「ぶちギレ司会者」
として見事にランクインしたそうだ。
う~む、日大のブランド価値を上げていくのが、
広報の最大の使命なのにね。
それに、何よりも、
日大には「危機管理学部」だってあるのにね(笑)。
ちなみに、ネットで危機管理学部を検索すると、
「日大、千葉科学大、倉敷芸術科学大」
の3つがヒットする。
で、千葉科学大、倉敷芸術科学大の運営母体は?
というと、なんと、
「学校法人加計学園」
ではないか!
これは、ブラックジョークなのか?
と突っ込みたくもなるが、
いやいや、両校とも、
自らの組織の危険を顧みず、身を挺してまでも、
危機管理学における「最高のケーススタディ」を
学生に提供しているだけなんだろうね。
そして、我々国民に対し、教材の無償提供(笑)。
これはこれで、立派な社会貢献なのかな?
とにもかくにも、
せっかくなんで、この機会にシッカリ学ぶべし!