283)老後資金問題
- 2019年6月16日
- 社会・雑学
今、大いに世間を賑わしている
「老後資金2000万円」問題。
私も、ちょっと気になったので、
金融審議会市場ワーキング・グループ報告書
「高齢社会における資産形成・管理」
というものを全て読んでみた。
読後の感想は?と言えば、
「至極まともなことが書かれている」
という印象に終始一貫しただけ。
従って、この内容を批判するのは、
完全に「的外れ」だろう。
まあ、要するに、国に対して、
「国民に自助を押し付けるな!」
「最後の最後まで政治的努力をしろ!」
「開き直るなんて言語道断!」
という意味での批判なんだろうが、
そもそも、
「公的年金だけで将来安泰!」
なんて考えていた国民がいるのか?
2004年に発表された
「年金100年安心プラン」
にしたって、
「年金だけで生活できる」
なんて誰も言ってないしね。
ここで言っていた
「100年安心」
というのは、あくまでも、
「年金制度自体の存続」だ。
年金制度は100年は続くから、
まあ、安心してね、というだけ。
当然、年金制度は続いても、
1)受給開始年齢の引上げ
2)受給額の引下げ
3)保険料の引上げ
4)増税
等の手法が繰り返されながら、
「先細り」となることは必至。
との指摘が当時からされていた。
国民だってバカではない。
そんなことは誰もが想定したこと。
だから、今さら、
「年金100年安心は嘘だったのか!」
と騒いだところで、
これもやはり「的外れ」だね。
もちろん、政治家には、
これを「政争の具」になどせず、
「公的年金制度の充実」
について、党派を超えて、
真剣な議論をしてもらいたいが、
我々国民としては、
政治家に過剰な期待はせずに、
自身の老後問題は、自身で対策すべし、
ということだね。
人生の3大資金とされるのが、
1)住宅資金
2)教育資金
3)老後資金
の3つ。
このうち、老後資金だけは、
如何なるライフスタイルだろうが、
誰にとっても等しく課される問題。
巨額の遺産を相続したとか、
あり余る不労所得があるとか、
一部の恵まれた人以外は、
「働けなくなるリスク」
を真剣に考えねばならない。
どんなに声高に、
「生涯現役」
を標榜したところで、
健康を失うリスクは誰にでもある。
働けなくなったとき、
フローとしては年金収入だけとなる。
当然、年金収入だけでは不足なので、
あとは「ストック」頼みとなる。
その代表格が「金融資産」だ。
今回の報告書でも、
金融資産の構築方法として、
1)長期
2)積立
3)分散
による投資が推奨されている。
これはこれで全面的に正しい。
人生の3大資金は、いずれも多額。
資金を準備するためには、
何と言っても、「時間」が必要だ。
60代を老後の突入期とするならば、
それまでに、何とかして、
1)住宅ローンの返済を完了し、
2)子供の高等教育も全て完了し、
3)十分な老後資金準備を完了する。
ということが必要不可欠。
逆算すれば、人生の3大資金は、
「30代から全ての準備を始める」
ことが必要ということだね。
ところが、なかなかそうもいかない。
30代は、仕事人生の始まりだから、
そもそも、生活に余裕がない。
それでも、住宅資金や教育資金は、
30代で「現実問題」に直面するので、
まあ、何とか対処はするはずだ。
だが、老後資金は、
「はるか将来に訪れる仮想問題」
に過ぎないので、
これに真剣に向き合う30代は少ない。
今、30代・40代の人達は、
とにかく「早いスタート」が大切。
投資の唯一の味方は「時間」なので。
真面目にコツコツと、
「長期・積立・分散」
の投資を継続すれば、必ず報われる。
何故なら、世界から、
「資本主義経済が無くなる日」
は来ないであろうから。
資本主義経済が続く限り、
世界全体で見れば、
「長期的には必ず成長する」
ということだけは断言できる。
もちろん、短期的には、
経済はアップ・ダウンを繰り返すので、
まかり間違っても、
「短期・一括・集中」
の投資に手を出してはいけない。
「短期・一括・集中」
の投資は、「ゼロ・サム」投資であり、
「誰かの損によって、誰かが得をする」
というだけの「ゲーム」だからだ。
そして、このゲームで、
「勝者」になるのは至難の業。
人間というものは、
「意思決定による投資は苦手」
と言われる。
行動経済学の成果である
「プロスペクト理論」
によれば、人間心理には、
「損失回避性」
という特性がある。
人間は、
「絶対に損をしたくない!」
「損は必ず取り戻したい!」
という強い欲求があるのだ。
次のような実験がある。
AとB、いずれを選択するか?
(実験1)
お金をもらえるとして、
A 確実に100万円
B 50%の確率で200万円
50%の確率で0
(実験2)
お金を負担するとして、
A 確実に100万円
B 50%の確率で200万円
50%の確率で0
この実験は、
AIでは「選択不能」に陥る。
何故なら、AもBも、
「期待値=100万円」
で全く同じだから。
ところが、人間が判断すると、
ほとんどの人が、
(実験1)では「A」
(実験2)では「B]
を選択するそうだ。
何故なら、人間心理では、
「絶対に損をしたくない!」から。
(実験1)では、
Bを選択すると、確実にもらえた
100万円を損するリスクが生じ、
(実験2)では、
Aを選択すると、確実に、
100万円を損してしまうから。
投資の極意は、
「利食いは遅く、損切りは早く」
ということである。
利益が出たなら、
できるだけ保有し続けて、
利益の最大化を目指す。
要するに、
利益追求は、ギャンブルに挑む。
一方、損失が出たなら、
サッサと確定させて、
損失を最小限にとどめる。
要するに、
損失回避は、ギャンブルしない。
つまり、上記の実験で、
(実験1)で「B」を選択し、
(実験2)で「A」を選択する、
これが出来る人が、
ゲームの「勝者」になれるのだ。
ところが、普通はこれが出来ない。
「損失回避性」の人間心理が働き、
「絶対に損はしたくない!」ので、
「利食いは早く」なってしまうし、
「損は必ず取り戻したい!」ので、
「損切りは遅く」なってしまうのだ。
つまり、投資の極意の真逆である
「利食いは早く、損切りは遅く」
となってしまうので、
結果、ゲームでは「敗者」に陥る。
まあ、とにかく、
ゲームには絶対に参加しないこと。
これに尽きる!
ところで、
「長期・積立・分散」
の投資ならどうかと言えば、これは、
「市場全体の成長」
に乗っかれるので、
皆が「得」をすることが可能なのだ。
本来、30代が実践すべき投資だが、
現実には、資金が潤沢な高齢者が、
金融機関の「カモ」になることが多い。
高齢者は、自ら学ぶことが少なく、
行きつけの金融機関の「窓口」で、
いろいろと相談してしまい、
窓口担当者の勧めるがままに、
高い手数料の金融商品を買わされる。
売り手としては、当たり前だが、
より手数料が高い商品を売りたい。
手数料が高いということは、
それだけで「利回りが悪い」
ことと同義である。
ちょっとした金融知識があれば、
「売り手が勧めない商品」
こそが優良商品なのだと分かるが、
そういう「学ぶ」の姿勢がないと、
「売り手が勧める商品」
を優良商品と勘違いしてしまう。
結果、高齢者の「虎の子」は、
金融機関の「人件費」へと消える。
そもそも、窓口担当者が、
「時間をかけて相談に乗る」
ということ自体、
その者の「人件費」が嵩むということ。
当然、高い手数料を徴収しないと、
「人件費がペイできない」
という仕組みだ。
投資は、「長期・積立・分散」に加え、
「低コスト」
であることが絶対的な大前提である。
そのためには、
キッチリと「学んだ」上で、
「低コストのネットで購入」
というのが投資の王道である。
ネットには強いが、
経済的余裕の無い若者世代。
結果、投資に参加すら出来ない。
一方、経済的余裕はあるが、
ネットには弱いシニア世代。
結果、投資の「カモ」となる。
う~む。
これでは、なかなか、
日本では投資が根付かないよねえ。
欧米のごとく、
子供の頃からの「金融教育」!!
これこそが大切なのかもね。
そこの30代の方、
そして40代・50代の方々も、
まだまだ遅くはない!
とにもかくにも、
今すぐ、ネット証券口座を開設!